長渕剛のマスコミ批判に坂上忍が言い訳! “ワイドショーは悪くない”“視聴者の問題”と責任を丸投げ

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左『長渕剛 民衆の怒りと祈りの歌』(河出書房新社)/右・フジテレビ『バイキング』番組ページより


 12月7日に放送された『2016 FNS歌謡祭 第1夜』(フジテレビ)で大トリとして登場し、披露したスペシャルバージョンの『乾杯』のなかでメディア批判を繰り広げた長渕剛。当然、大きな反響を呼んだが、一方、翌日のフジのワイドショー『とくダネ!』がこの長渕によるマスコミ批判を取り上げなかったことは、本サイトの既報の通りだ。

 いつもなら“音楽に一家言ある”アピールが激しい司会の小倉智昭が、長渕の歌詞に深くは言及しない……。やっぱり都合の悪いことには蓋をするのか、と呆れていたのだが、しかし、なぜかきょうになって同局の『バイキング』が、この長渕のパフォーマンスを取り上げたのだ。

 だが、その取り上げ方は、長渕の問題提起を無下にするばかりか、ねじ曲げるものだった。

 まず、番組では、『乾杯』に入る前に長渕が新たに加えた3分15秒にわたるパフォーマンス部分を放送。それを受けて司会の坂上忍は、「『乾杯』を歌いたかったというより、いまのところを伝えたかったという」「ほんとにいま、ご自身が思われていることをバーって詰め込んだんでしょうね」と述べ、「テレビ局もざわついた」とリアルタイムでの反応をこのように紹介した。

「『長渕さんがすごいことになったぞ、すごいこと歌ったぞ』ってなってて、僕、又聞きだけど聞いてて、『え?』って思ったわけ。そんななんか批判したの?って思って。ただ、ちゃんと観ないと何も言えないのでちゃんと観たら、意外なほど僕はそこまで思わなくて。どっちかと言うと(自分と)近いものは感じたんだけど」

 長渕の歌詞に少なからずシンパシーを感じた──。坂上はそう言いながらも、続けて「多少やっぱりね、これは……これ言っちゃうんだ、って驚きはありました」と言及したのは、肝心要のマスコミ批判の部分だった。

 ここで、坂上が引っかかったという、長渕の歌詞を紹介しよう。

《今日もマスメディアの誰かが無責任な話ばかりしている
 正義のツラして知ったかぶりしてるやつの言うことに耳を傾けてる俺
 これ以上答えのねぇ話なんか聞きたかねぇ
 騙されねぇぜマスコミ
 騙されねぇぜヒットチャートランキング
 騙されねぇぜワイドショー》

 この歌詞を番組が取り上げると、坂上は「《正義のツラして》っていうのもね、ここまで言われるとちょっとしんどいですね。誰も正義のツラして言ってるわけじゃなくて、その仕事のなかでみなさんが持論を闘わせているだけなんで。逆に言ったら、これを言う長渕さんが、『これ長渕さんの正義なんでしょ?』って思っちゃう。逆にね」と反論。

 しかし、坂上がとくにわだかまりを感じたのは、どうやら《騙されねぇぜワイドショー》と名指しされたことだったらしい。坂上は「《ワイドショー》って特定されちゃってるからね」「ジャンルを特定しちゃってるのよ」と言い、このように語気を強めた。

「僕だったら、役者だったらバラエティの番組があって、なんだよみんなヘラヘラヘラヘラしてさ、ってことは絶対言わないわ。音楽番組だって、音楽番組としてひとつのジャンルとして成立してるんで。バラエティ、音楽番組、ニュース、いろんなのひっくるめてテレビっていうエンタテインメントだから。この(長渕がワイドショーと)特定しちゃったことが、ちょっとね」

 みんな真剣に持ち場でがんばっているし、すべてはエンタテインメントなんだから、余所から文句を言うのはどうなの? ……坂上が言いたかったことはこういうことなのかもしれないが、そうやってエンタメだからと逃げ、都合の悪い話をしないマスコミに「お前ら情けないだろ」と詰め寄ったのが長渕の歌詞だったのではないか。

 だが、今度は長渕のファンであるらしいブラックマヨネーズの吉田敬が、こんなことを言い出した。

「加藤紗里(注:この日の番組ゲスト)とか流す時間があるんやったら、もっと現実的に危ない状況、たとえば外国から日本の領海に、みたいなところとかも、そこはもっとわかりやすくみんなで放送する努力をせんと」

 いやいや、中国の領海侵犯なんかの話は、『ひるおび!』(TBS)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などワイドショーの大好物で、いまでもがんがん放送されている。何より長渕は、こう歌っていた。

《俺達の東北、仙台、俺達の九州、熊本 そして福島も頑張ってんだ
 オリンピックもいいけどよぉ 若者の貧困 地域の過疎化どうする?》

 被災地や原発、貧困などを棚に上げて、ワイドショーはオリンピックにかまけている。そうした姿勢を長渕は批判していたのだ。長渕は昨年、『ワイドナショー』(フジテレビ)に出演した際、安保法制に対してこう言っていた。

「僕らが議論すべきなのは、どの時代でも、いま10代になろうとしている、未来と称される、僕たちの自国の子どもたちが銃を持って撃っていくんです。そして、その犠牲がどんどんどんどん出ていくんですよ」

 さらに、長渕は果敢に安倍首相に強烈なダメ出しまでした。

「戦後復興後、高らかに我々は生きてきましたけど、そのなかに負の遺産はありました。負の遺産を残しておきながら、そのことにきちっとケリもつけないくせに、次のことをやっていこうとする俺らの大将、ちょっと違うんじゃない?」

 このまま戦争をできる国にしていいのか。安倍首相のやっていることは間違っているんじゃないのか──。まさに長渕がワイドショーに出演して言明したこと、こうした話を、視聴者を騙すようにマスコミは覆い隠していないか。それこそが、長渕が歌詞に込めたメッセージだったはずだ。

 にもかかわらず、本日の『バイキング』では、東国原英夫が「長渕さんが言いたかったのは、おそらく情報が錯綜していると。いっぱい情報が溢れているなかで、自分が正しいという情報をきちっと見誤らない、その能力をつけましょうねっていうメッセージじゃないですか?」とリテラシーの問題にすり替え、坂上も「そうだと思います」と同調。「《騙されねぇぜ》って言葉がメディア批判みたいにとられても仕方がないんだけども、お前ら騙されんなよ、ってことでしょ? ちゃんと精査しろよ自分のなかで、っていう」と、坂上は問題を視聴者に丸投げしてしまったのだ。

 たしかに、坂上は長渕と同様に、昨年9月の同番組で「(安保法案は)僕、大反対なんですね」と言い切り、スタジオが凍り付くなかで「いまだからこそ、武器持たないで憲法9条持ってりゃいいんじゃないの? だって、被爆国なんだから。被爆国にしかできないことあるわけで」と語っている。他のワイドショーが安倍政権のスピーカーと化していた状況で、はっきりと反対すべきものは反対だと口にする。あのときの坂上の態度は、今回の長渕のパフォーマンスにも通じるものがあった。だが、今回の長渕から発せられた「ワイドショーはちゃんとしろよ」という批判が、坂上にはどうやら届かなかったらしい。

 繰り返すが、長渕の主張は「かしこい視聴者になれ」なんてことではない。オリンピックで浮かれる前にマスコミは報じるべきことがあるだろう、ということだ。あそこまで言われて何を批判されているのかもわからないようでは、この国のワイドショーに期待するほうがバカなのかもしれない。
(編集部)

最終更新:2017.11.12 01:50

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