風俗嬢の収入が激減、月収10万円以下で過激サービス強いられ…性風俗の仕事はもう貧困女性のセイフティネットにならない

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
seihuzoku_160514.jpg
左『風俗嬢という生き方』(光文社)/右『熟年売春 アラフォー女子の貧困の現実』(中村淳彦/ミリオン出版)


 2020年、東京オリンピックを機に大規模な浄化作戦が行われ、日本の風俗産業は壊滅するのではと噂されている。

 いささか突飛な話のようにも聞こえるが、これは事実無根の憶測でも、から生まれた都市伝説でもない。事実、過去には国際的なイベントが国内で開催されるのにともない、大規模な浄化作戦が行われたことがある。その一例が、90年に大阪市と守口市にまたがる鶴見緑地で開催された「国際花と緑の博覧会」(花博)の際の浄化作戦だ。これにより、キタとミナミ両地域に存在していたソープランドは一掃されている。

 このように、現在、風俗業界はまさに存続の危機に立たされているわけだが、風俗が消えてしまって困るのは夜の街を歩く男たちだけではない。風俗がなくなってしまえば、そこで働いていた女性たちも路頭に迷ってしまう。

「貧困女性の最後のセイフティネット」

 働く女性の3人に1人が年収114万円以下と言われ、現在「女性の貧困」に関する問題が盛んに指摘されるなか、このような言葉が多く聞かれるようになった。風俗業界は、単なる悪所ではなく、いまやここでしか生きていくことのできない人たちのための最後の砦となっている。

 しかし、その風俗ですら現在ではまともに稼ぐことのできる産業ではなくなり、貧困に対するセイフティネットとしても機能しなくなりつつあるという。15年近く風俗嬢たちにインタビューをし続けてきたライターの中塩智恵子氏は『風俗嬢という生き方』(光文社)のなかで次のように綴っている。

〈この15年では、2005年の風営法の改正が、日本の、特に首都圏での風俗業界にとって大きな転換期だったように思える。街にあった店舗型風俗店が衰退し、無店舗型の派遣風俗が増加した、街からは妖しく光るネオンといかがわしさがかき消され、風俗街へ赴き遊ぶというスタイルから、自宅やホテルへ呼んで遊ぶスタイルが主流になった。
(中略)
 売る側にとっては法改正以降、店舗間の競争が激化した。それによりサービスに付加価値(人によってはそれが本番行為になる)をプラスしなければならなくなった。しかしそれに見合った金銭的なリターンはさほど得られない。そこへ追い打ちをかけるように景気後退がやってきて、以前より格段に儲からない商売となった。やがて景気の冷え込みから、売る人がさらに参入してくるようになり、どんどんうまみのない仕事になっていった。それでも風俗嬢になる人は後を絶たない。1990年代に援助交際という言葉が流行り出してから、裸でお金を稼ぐことが素人に一般化してきた。この性の概念の変化が、売る人が減らない理由にもなり得るし、落ち込み続ける景気後退がその理由にもなり得るし、子供を抱えてシングルマザーとして生活しなければならないのに女性の雇用状況は不安定だったり……と、社会の仕組みがその理由にもなり得る。とにかく、これらさまざまな要因が複雑に絡み合って現在も風俗業界をつくりあげている〉

 現在全国に35万人〜40万人いるといわれている風俗嬢のなかで、月収25万円以下の人は全体の63%、そしてその半分近くは月収10万円以下との調査データもあり(「実話ナックルズ」16年4月号/ミリオン出版)、いまや体を売ってもその収入で食べていくのは至難の業となりつつある。

 その典型例が、『熟年売春 アラフォー女子の貧困の現実』(中村淳彦/ミリオン出版)に登場する53歳の風俗嬢・安西貴子(仮名)さんだ。20歳から風俗業界で生計を立てていた安西さんだったが、48歳のときに働いていた風俗店がなくなってしまった後は、ついに体を売って生計を立てることすらできなくなってしまう。これには安西さん自身の加齢による事情もあるようだが、理由はそれだけではない。やはり、風俗業界そのものがなかなかお金を稼ぎづらい業界になってしまっている。

 安西さんもつい最近まではギリギリではありつつも風俗でなんとか食べていくことはできていた。若い頃は月収40万〜45万円、最近でも20万〜25万円稼げていたからだ。だが、急変したのはここ最近。「苦しくなったのは3、4年前かな。震災の後から、どこの店も雇ってくれなくなって。本当に断られすぎて疲れました」と語る彼女は現在、今でもつながりのある元指名客と直で取引して個人売春を行い、月収9万円ほどで暮らしているという。ここまでくると生活保護など福祉との接続を考えたほうがいい状態だが、申請するための知識を教えてくれる人も周囲にいないので、生活保護を受給するということに思いいたらず、厳しい生活を続けている。

 また、熟女系風俗店のメッカ・鶯谷のデリヘルで働く50歳の渡部美幸(仮名)さんも、同様に稼ぐことができなくなってしまった事例だ。20年前に風俗業界入りし、はじめは月収50万ほど稼げていたが、その状況は99年に風営法が改正されてデリヘルが激増したころから風向きが大きく変わる。10年ほど前からは風俗で稼げる額が月20万を割り、いまでは本番風俗店で働きながらも、出勤して1日中お店にいても1万円稼げればいいほうだという。

 風俗業界がこのように稼げない世界になってしまった理由は複合的だ。長引く不景気も理由の一つとしてあげられるだろうし、男たちの風俗離れというのも大きな要因であろう。出会い喫茶やJK産業など、既存の風俗産業とは違う法的にグレーな場所で体を売り・買う行為が横行しているということも関係しているだろう。

 しかし、そのなかでも最も大きな原因としてあげられるのが、風営法改正とそれにともなうデリヘルの激増。この法改正により店舗型の風俗店に対する規制は厳しくなり、その代わりデリヘルが増えた。そして、風俗嬢の数が増えたことにより客の取り合いとなり、裸のデフレ化が起きる。

 その結果進行したのは、サービスの過激化だ。飲尿やAF(アナルファック)など、これまでは限られた人しかOK項目にしていなかったような過激なオプションまで受け入れざるを得なくなる。しかし、それだけトラウマなりかねないようなサービスをしても、かつてであれば三桁台の月収を稼げていたであろう人が、いまでは一般的なOL並みの給料、もしくはそれ以下の稼ぎしか得ることができなくなっている。

 先日当サイトでも取り上げたが、最近では、応募者全員を採用する30分3900円の激安店が、在籍女性を生活保護などの福祉と接続するべく、NPO法人と協力して弁護士や社会福祉士との無料相談会を行っている例もある。根本的には日本社会全体の問題でもあり、まだ始まったばかりの取り組みがどれほど効果をあげていくのかは未知数だが、もはやセイフティネットとして機能しなくなりつつある風俗産業の状況をみると、このような救済策が急務になっていることは間違いない。
(田中 教)

最終更新:2016.05.14 05:09

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

熟年売春 アラフォー女子の貧困の現実 (ナックルズ選書)

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

風俗嬢の収入が激減、月収10万円以下で過激サービス強いられ…性風俗の仕事はもう貧困女性のセイフティネットにならないのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。田中 教貧困の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍晋三が植村隆と櫻井よしこの裁判めぐりデマ投稿!
2 菅首相が8000万円パーティ、安倍前首相と同じ政治資金報告書不記載、補填疑惑
3 「桜を見る会」安倍前首相の大嘘答弁・醜態総まくり
4 吉村洋文知事「命の選別」発言は事実! “治療を高齢者から若者に”
5 小田嶋隆・武田砂鉄対談 後編 糸井重里と松本人志をあらためて語る
6 中居がすべらない話でJのタブーに!
7 『スシローと不愉快な仲間たち』12 安倍首相の寒すぎるポエム
8 検察がつかんだ「桜」前夜祭の公選法違反証拠!費用補填800万円の明細
9 安倍が宇野教授を任命拒否したのは宇野教授の父から批判された逆恨みか
10 葵つかさが「松潤とは終わった」と
11 菅首相に飛ばされた元総務官僚が語った恐怖支配!「あそこまでひどい人は…」
12 小田嶋隆・武田砂鉄対談 前編 ツイッターで安倍政権とどう向き合うか?
13 『あさが来た』は籾井の機嫌取り企画
14 昭和の名作裏ビデオ史
15 大統領選不正デマを拡散した日本のトランプ応援団の妄言総まくり!
16 学術会議任命拒否 宇野重規教授が書評「暴君」論で菅首相批判か
17 植村隆の名誉毀損裁判で不当判決!櫻井よしこの捏造を無視
18 AKBから「名誉毀損」の恫喝メール
19 植村隆裁判の不当判決で調子に乗る櫻井よしことネトウヨ
20 菅首相が生出演『ニュースウオッチ9』めぐり内閣広報官がNHKに圧力
1 菅首相の遅すぎる「GoTo見直し」はキャンセル料補填しないためか!
2 大阪のコロナおざなり対策が酷すぎる!重症病床使用率もごまかし
3 吉村洋文知事「命の選別」発言は事実! “治療を高齢者から若者に”
4 菅、安倍、森がバッハ来日で…コロナ隠しにGoTo続行、NHKに圧力
5 コロナ再拡大の最大の戦犯は菅首相!専門家の指摘無視「静かなマスク会食」
6 検察がつかんだ「桜」前夜祭の公選法違反証拠!費用補填800万円の明細
7 大統領選不正デマを拡散した日本のトランプ応援団の妄言総まくり!
8 安倍が宇野教授を任命拒否したのは宇野教授の父から批判された逆恨みか
9 菅首相が8000万円パーティ、安倍前首相と同じ政治資金報告書不記載、補填疑惑
10 学術会議任命拒否 宇野重規教授が書評「暴君」論で菅首相批判か
11 安倍晋三が植村隆と櫻井よしこの裁判めぐりデマ投稿!
12 「桜を見る会」安倍前首相の大嘘答弁・醜態総まくり
13 『スシローと不愉快な仲間たち』12 安倍首相の寒すぎるポエム
14 小田嶋隆・武田砂鉄対談 後編 糸井重里と松本人志をあらためて語る
15 小田嶋隆・武田砂鉄対談 前編 ツイッターで安倍政権とどう向き合うか?
マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄