キングオブコメディ高橋健一はなぜ「女子高生の制服」に走ったのか? 背景にある洗脳願望とコンプレックス

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プロダクション人力舎公式サイトより


 2010年には『キングオブコント』(TBS系)で優勝するなど、実力あるコンビとして人気を集めていた、キングオブコメディの高橋健一が26日、都内の高校に忍び込んで女子生徒の制服などを盗んだとして、窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕された。

 高橋は容疑を認め、「20年くらい前からやっていた。性的欲求を満たすためだった」と供述しているという。家宅捜索では、都内や近県の学校の制服が600点近くも押収され、常習犯であったようだと報道されている。

 年の瀬に突然飛び込んできた実力派芸人の逮捕に、お笑いファンの間からは驚きの声があがった。

 とくに、多くの人が驚いたのは、学校に忍び込んで窃盗を働いてまで制服を欲しがったという、その異常な制服への執着だ。中には、ツイッターに〈言えばファンがくれたでしょ(なんならパンツもくれたと思うのに…)〉といった投稿をする人もいた。

 確かに、一般的には「モテ」の部類に入る「お笑い芸人」。声をかければ制服をプレゼントしてくれるファンや、「交際」に応じてくれるファンだっていただろう。

 だが、これはそもそもそういう単純な話ではない。高橋が学校に忍び込んでまで「制服」に執着した背景には、制服フェチの人々が抱える、深い「業」のようなものが存在しているのではないか。

 その心理構造を分析しているのは大阪府立大学総合科学部教授(現・早稲田大学人間科学部教授)・森岡正博氏。森岡氏は『無痛文明論』(トランスビュー)などで高い評価を受けている哲学者だが、著書『感じない男』(筑摩書房)では、自らの性的嗜好を掘り下げるかたちで、ロリコンに走ったり、制服やミニスカに執着する男のセクシュアリティに迫り、大きな話題になった。

 森岡氏は同書の中で、女子中学生や女子高生の制服に執着する背景についてまず、〈中学校・高校がその着用を義務づけているという点にある。私は、制服少女の向こうに、「学校」を透かし見ているのだ。〉という。

 つまり、この「学校」という場所にこそフェティシズムを喚起する理由があるというのだ。どういうことか。

〈中学校や高校の教育は、生徒の頭の中に知識や価値観を流し込むこと、すなわち「洗脳」にかぎりなく近くなるということである。中学校や高校においては、「学校」が基本的に「洗脳」の場になっているということ、ここに何かの秘密があるのではないだろうか。
 そういう目で見てみると、中学校や高校は、柔軟性に富んだ少年少女たちを、経験を積んだ大人たちが、よってたかって公然と「洗脳」することが許されている、きわめて危ない場のように思えてくる〉

 そして、「学校」が洗脳の場所だという妄想を膨らましていくと、その「学校」が着用を義務づけている「制服」を着ている少女たちは、次のような存在になる。

〈彼女たちは、まるで、「私のことを洗脳して!」「私のことを、あなたの好きなように洗脳してもいいのよ!」と言っているように私には見えるのである〉
〈制服少女を見たときに、私が抱いてしまうところの、「ああ、私はこの少女を洗脳してもいいのだ。この少女の脳の中身を書き換え、私のことを本気で好きになるようにマインド・コントロールし、メイドのように従わせることが許されているのだ。そういう危ないことをしても、誰からも非難されないし、この少女本人がそれを望んでいるのだ」という自分勝手な妄想こそが、制服少女の清涼感とゾクゾク感の秘密だったのである〉

 たしかに制服が、支配=服従という関係を想起させるという説明はわかりやすい。そういう意味ではメイド萌えにも共通する部分があるかもしれない。

 しかし、森岡氏の分析はこれで終わりではない。「制服」に対しフェティシズムをもつ男たちの心をさらに紐解いていくと、その男自身がもつ深い「コンプレックス」に行き着くという。

 どういうことか。森岡氏は相手を「洗脳」するという行為の先にある、男たちの究極の願望について書いている。それは、少女の脳と自分の脳をそっくり入れ替えて、自分自身が少女の脳のなかに入り込むというものだ。

〈もし少女の脳を、私の脳によって置き換えたら、何がおきるのだろうか。私は、少女の体の中に幽霊のように入り込んで、少女の体を内側から生きることができるようになるだろう。私の体は、少女の体となり、私が胸を触ればそこにはまだ小さい乳房があり、鏡を見ればそこにはかわいい少女の顔が映っているということになるはずだ。私は少女の体を内側から生きることができるのだから、その少女を自分の思い通りに完全に支配し、操作することができる。これが「洗脳」のもっとも完璧な形である〉
〈「少女を洗脳したい」という欲望とは、私のこの体を捨て、少女の体の中に入り込んで、そのかわいい体を、その内側から自由自在に操りたいという欲望ではないかと思うのだ〉

 全然理解できないと感じる読者もいるかもしれないが、これ、まったく突拍子もないことを言っているわけでもない。

 例えば、モーニング娘。やAKB48などのファンの「男」が「自分があのグループに入ったら」と妄想することは決して珍しいことではないし、アニメファンが自分の好きな作品に出てくる美少女キャラに同化して夢想するというのも、広く流通している楽しみ方である。

 しかし、このような感情の根本には、成熟した「男の体」という自分自身の身体性に対する強い「自己否定」がある、と森岡はいう。これが中学や高校の「制服」に対して妄執を抱くことに関係しているのだ、と。

 人間は、第二次性徴を迎えるまで、生殖器などに違いはあるものの、男と女の身体にそこまでの違いはない。身長もだいたい同じくらいだし、身体のフォルムも似通っている。男も女も「ユニセックス」な状態と言える。しかし、第二次性徴を迎えると、身体は激変。男であれば、〈体が大人になるにつれて、男性ホルモンがどんどん作られるようになり、筋肉が付き、体がゴツゴツしはじめ、毛がたくさんはえ、精液で汚れ、体の中から変な臭いがたちのぼってくる〉ようになる。そのことを〈どうしても受け入れられな〉かった人々がいる。そうした男たちの思春期に感じたその思いが、年を重ねるにつれ、こんな発想へと結実していく。

〈あの少年のころの体へと戻りたいという思いがある。そしてできることならば、あの思春期の分岐点を、男性ホルモンも、筋肉も、体毛も、精液も存在しない「女の体」のほうへと向かって、大きくカーブしてみたかったという思いが存在する〉
〈私は、「ああ、私もあの少女のように、できることならば向こう側へと舵を取ってみたかった」と思い、その少女の体の内部へと自分の意識をすべり込ませ、少女の思春期を内側から追体験して生きてみたいと思うのである。ロリコンの心理は、こうやって誕生する〉

 第二次性徴を迎え、「男」の体に変わっていってしまった分岐点まで戻ってやり直したい。この汚い「男」の体を捨ててキレイな女の体に生まれ変わってみたい。そんな「自己否定」の考えを抱くことで、「制服」に強いフェティシズムをもつ男が生まれるというのが、森岡氏の分析である。

 しかし、その結果、高橋のように犯罪に走ってしまう者も少なくない。森岡氏は、「制服」にフェティシズムをもつ男たちがそれを克服するための方法も提示している。

〈「自分の体は汚い」という意識を、ゆっくりと溶かしていくことが必要だ〉という。そのためには〈「自分の体は汚い」という意識が、どこから出てきているのかを、それぞれが分析してみることが必要〉だ、と。

 森岡氏は、〈夢精の体験を肯定できなかったこと〉が「自分の体は汚い」と認識してしまったきっかけだと語っているが、人それぞれ色々な理由があるだろう。体毛が濃いことだったり、体臭がきついということだったり、その「自己否定」のきっかけは個人個人で違うはずだ。

 自己分析を重ねることで、第二次性徴を経て自分の体に備わってしまった「コンプレックス」を解明させ、そして、自分自身の体を、ありのままに「肯定」してあげること。遠回りなようだが、ねじまがってしまった性的嗜好を変えるには、それしか方法はないのである。

 もちろん、こうした森岡氏の分析がそのままキンコメ高橋にあてはまるかどうかはわからない。しかし、その犯行の内容を考えると、少なくとも、彼の心理の中に〈学校〉への憧憬や〈コンプレックス〉が潜んでいる可能性は高い。

 再犯を防ぐためにも、高橋はしっかり自分と向き合う必要があるだろう。
(本田コッペ)

最終更新:2016.08.05 06:42

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