AKB「僕たちは戦わない」は反戦歌か? ぱるるの「イスラム国問題がテーマ」発言に疑問

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自衛隊オフィシャルマガジンの表紙を飾るぱるること島崎遥香……ん?(扶桑社「MAMOR」2014年11月号)

 今週20日(水)に、AKB48がメジャー40枚目のシングルとなる「僕たちは戦わない」を発売する。このシングル盤には6月6日に行われる選抜総選挙の投票シリアルナンバーカードが同封されているため、セールスのミリオン突破はすでに確実。そのため、ファンのあいだでは「まゆゆの連覇なるか」「運営は卒業が決まっている高橋みなみに1位を獲らせる気では」「ごり押しの松井珠理奈や宮脇咲良は何位になるか」といった選挙結果の予測に話題が集中している。

 だが、いまあえて注目したいのは、「僕たちは戦わない」という楽曲そのものについて。というのも、あの「しんぶん赤旗」が、この楽曲を“反戦歌”として高く評価しているのだ。

〈激しいダンスの中から平和へのメッセージが伝わってきます。歌い出しは「僕たちは戦わない/愛を信じてる」。「憎しみは連鎖する/だから今 断ち切るんだ」というフレーズも。(中略)サザンオールスターズもそうですが、いま平和の願いをこめた歌が共感とともにひろがっています。それは戦争への道を声高に進む安倍政治と無関係ではないでしょう〉(4月12日付「きょうの潮流」欄)

 たしかに、赤旗が引用している部分以外にも、歌詞にはそれっぽいフレーズが並ぶ。《ただ殴りあっていたって 時は解決しないさ》とか《たったひとつのボタンが 掛け違えていがみ合った 今日までの苦悩 許し合おうよ》とか、訴えているのは武力による争いをやめようというメッセージであるような気もしてくる。

 実際、今回の楽曲でセンターを務めている島崎遥香は「月刊AKB48グループ新聞」(日刊スポーツ新聞社)4月号のインタビューで「最近のニュースで気になったものは」と問われ、「やっぱり『イスラム国』の問題です。日本は、どうなっちゃうんだろう…って」と述べた後、こんなことを話している。

「『僕たちは戦わない』の歌詞って、そういう問題に対して…ってだけではないと思うんですけど、とにかく世界中の人に聴いてほしい歌詞になっていると 思うんですよ」

 ぱるるがこんな話をしたのは、もしかすると作詞を担当した秋元康センセイから、歌詞の元に「イスラム国」による事件があったことを教えられたからなのかもしれない。となると、なおさら《憎しみは連鎖する》という言葉の意味は重く響いてくる。

 しかし、気になってしょうがないのは、秋元氏はほんとうに反戦歌としてこの詞を書いたのか? ということ。だって、秋元センセイといえば、「イスラム国」を刺激しまくった張本人で、いまや歌詞の真逆をいく“他国にどんどん武力行使できる国”づくりにまっしぐら中の安倍晋三首相と大の仲良しだからだ。

 そもそも、2013年にはASEAN特別首脳会議の晩餐会でAKB48が「恋するフォーチュンクッキー」を披露するなど、安倍首相はAKB48を重用してきた。しかも、秋元氏は安倍首相と下村博文文部科学相、小泉進次郎を自宅での昼食会に招いたこともあるほど。

 そんなふたりの親密ぶりが伺えるのは、昨年の元旦に産経新聞紙上で行われた安倍首相と秋元氏の新春対談だ。

 たとえば、安倍首相が「ウキウキ、ワクワクするような年、来年はもっとよくなるんじゃないか、という年にしたいですね」と言えば、秋元氏はすかさず「明るくなりましたよね、日本全体が」「首相の指針は分かりやすい。『アベノミクス』。子供でも使いたくなるような言葉です」とヨイショ。クールジャパン政策についても「だんだん元気がなくなってきたところで、『もう一度がんばろうよ』と首相の掛け声があったと認識しています」と持ち上げている。

 当然、安倍首相のほうもゴキゲンで、世界的に認知度の低い東京国際映画祭に話題が及ぶと「秋元さんにプロデュースをお願いします」と依頼を行いはじめ、ほんとうにこの年の同映画祭は秋元氏が総合プロデューサーに就任。《ニッポンは、世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく》というとんでもなく恥ずかしいコピーを打ち出し、案の定、批判が殺到したことも記憶に新しい。

 このように、安倍首相と秋元氏の関係はたんなる“お友だち”の枠に留まらない。政府広報にAKB48が登場したり、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事に秋元氏が選ばれたりと、秋元氏はすかさず安倍首相との関係を自身のステップアップやビジネスに繋げてきたからだ。なかでも、もっとも露骨だったのは、集団的自衛権の行使容認が閣議決定された直後にはじまった陸海空自衛官募集のCMである。このCMで「自衛官という仕事、そこには大地や海や空のように果てしない夢が広がっています」「ここでしかできない仕事があります」とアピールしていたのは、こともあろうに「僕たちは戦わない」を真ん中で歌うぱるるだったりするから笑えない。しかも、そのぱるるは防衛省が編集協力している自衛隊のオフィシャルマガジン「MAMOR」(扶桑社)14年11月号でカバーガールまで務めている。

 ぱるるは平和・非戦のアイコンなのか、それとも戦える自衛隊のアイコンなのか……こうなってくるともうワケがわからないが、もしかするとこれも秋元センセイらしい戦略のひとつなのかもしれない。

 思い起こせば、例のAKB握手会襲撃事件が起こった際、総合プロデューサーであるにもかかわらず事件について発言を行わなかった秋元氏。事件について触れたのは約1カ月半というスピードで握手会を再開させると運営側が公表する直前のことだったが、そのとき、秋元氏はこう綴った。

〈「夢をあきらめるわけにはいかない」。その信念から傷ついた彼女たちは立ち上がり、前に進んだ〉

 事件が発生してしまったことの運営側の不備や説明責任などは完全に無視。“握手会=彼女たちの夢、信念”と勝手に論理のすり替えを行い、握手会再開を見事に正当化したのだ。この厚顔無恥っぷりには呆れ果ててしまうが、これとよく似た手口をわたしたちはよく知っているはずである。そう、これって安倍首相の言う「積極的平和主義」とそっくりなのだ。

 ほんとうのところの話をすると物騒だから、“平和”だの“夢”だのというキレイで前向きなワードでごまかしてしまおう。……仲良しの安倍首相と秋元氏だが、やり口まで一緒だとは。でも、そう考えると今回のシングル「僕たちは戦わない」は、秋元流に「積極的平和主義」を歌詞にしているような気がしてくる。事実、安倍首相は、武力行使ができるように変更しようとしているくせに、むやみやたらと「武力の行使は決して行わない」「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にない」と強調。戦える準備をしているのに、なぜか“僕たちは戦わない”と逆の話を主張しているからだ。ちなみに、「僕たちは戦わない」のPVでも「戦わない」と歌いつつ、黒づくめの敵っぽい人たちをメンバーが血を流しながらガンガン叩きつぶすというアクションシーンを織り込んでいる。おいおい、戦わないんじゃないのかよ!

 まあ、とはいえ実際のところ秋元センセイは「総選挙でメンバーを競わせるのに、あえて“戦わない”と歌わせるって面白いだろ?」くらいにしか考えてない可能性も高い。でも、もしほんとうに歌詞に描いたように「戦わない」ことの重要性を訴えたいのなら、安倍首相に推薦文でも頂戴してみたらいいのに、と思う。“反戦歌”の感想を、このタイミングで安倍首相にぶつける……こんなにプロモーションになる話もないでしょうよ、秋元センセイ。
(大方 草)

最終更新:2015.05.18 12:43

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