中山美穂に捨てられた辻仁成が息子のためにつくる愛情料理がスゴい!

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辻仁成公式サイトより


 世間を賑わせた中山美穂との離婚劇では、「中性化キモい」「相変わらずナルシスト」と非難を浴びた作家・ミュージシャンの辻仁成が、いま、にわかに注目を集めている。熱視線が向けられているのは、今度はロン毛の容姿ではなく、腕。小説でも歌でもなく、料理の腕前だ。

 発端は、辻が頻繁にTwitterに投稿する料理写真だった。ルーからつくったハヤシライスはじつに家庭的で、かと思えば週末にはズッキーニのメルゲーズ(子羊肉) 詰めオーブン焼きなるオシャレな一品も。愛息の遠足弁当には、かわいいらしいタコさんウインナーまで登場……。こうした料理画像の数々に、「女子力高すぎ!」「こんなパパがほしい!」と称賛する声がぞくぞくと寄せられている。

 そして、ついにその腕が認められて(?)、辻は「女性自身」(光文社)に料理コラムを連載するまでに。連載タイトルも、ずばり「辻仁成 子連れロッカー「希望回復大作戦」ムスコ飯」だ。

「希望回復大作戦」とは、中山美穂を同じ音楽家の渋谷慶一郎に奪われた心境を見事に表しているが、あの“無双のナルシスト”だった辻が自虐に走るとは、と少々意外に思うかもしれない。だが、この連載を読めば、辻への見る目もきっと変わるはずである。というのもこの連載、料理のレシピとともに辻と息子のふれあいが綴られており、それがじつに微笑ましく、温かいのだ。

 たとえば、息子の学校の会合や説明会について、「心細い」と弱音を吐く辻。過去には歌番組などで横柄な態度をとってきた、あの辻がである。というのも、フランスのマダムたちにとって、ひとり混じった“ロン毛の日本人パパ”は格好の見世物。「みんな、チラチラッと私メの顔を盗み見るわけです」という。それでも辻は辞書片手に、校長の話を理解しようと必死。もちろん、すべては息子のためだ。辻は、その決意をこんなふうに述べている。

「シングルファザーなんて似合わない私メですが、彼が高校を卒業するまでは命がけで頑張らないとなりません。ええ、その通りでございます」
 
 しかし、がんばってもどうにもならないこともある。それは、息子を学校に迎えに行った日のこと。学校の先生から辻は、「今日、彼は一日泣いていました。お母さんにたまに会えるといいですね」という報告を受けた。このことに辻は「私メ、びっくりしました」という。息子は学校に行く前も元気で、家に帰ってもケロっとしているからだ。そこで、「一日中、泣いていた? 何があった?」と質問する辻。すると、息子はこう話しはじめたという。

「あのね、下の学年の子たちがね、自分のママの自慢話をしたんだよ。それを聞いているうちに思い出してしまったの。そしたら、涙が止まらなくなった」

 ふだんは「ママには会いたくない」と言っている息子が、その心のうちには寂しい思いを抱えている。──他人が聞いても胸が押しつぶされそうになる言葉だが、シングルファザーたる辻には、さぞかし堪らない話だったろう。そのとき、辻は息子に向かって、「泣いていいんだよ。泣きたいときはうんと泣きなさい」と語りかけた。そして息子は、こんな質問をし返したという。「パパはどうして泣かないの?」。辻の回答は、こうだ。

「だって、パパが泣いたら、みんな悲しくなっちゃうだろ? パパはどんなときも、微笑んでいなきゃ」

 辻いわく、息子は「私にとっては新しいパートナーであり、希望」。息子もまた「これからはパパと2人で生きていくのだ、ということも心得ております」という。それでも寂しいときだってある。だから、辻は愛情たっぷりの料理をこしらえる。その夜のメニューは、「温かいじゃがいものグラタン」。

「2人でオーブンにグラタン皿を入れ、出来上がるのを待ちます。待っている間がとっても楽しいのです。パルメジャーノチーズの香ばしい匂いがキッチンを優しく包み込みます」

 シングルである親には、さまざまな苦労がともなう。家事と仕事を両立させるだけでなく、好奇の目にさらされることもあるし、何より子どもの気持ちに敏感でなくてはならない。それをたったひとりで背負うのだ。だが、辻はとにかく懸命だ。たとえば、息子が友だちを自宅に招いても、「父親がおやつの載ったお盆を抱えて出て行けば、子供たちはどう対応していいのか分からず緊張するわけです」。そんなときは子どもたちが喜ぶようにと、辻は手巻き寿司を披露。……さすがは元モテ男、気が利くではないか。

 こうした辻のがんばりは、息子にも届いているのだろう。というのも、2人でドイツ旅行に出かけた際、息子は「ヨーロッパのために働きたい。建築家にもなりたい。ホテルの受付でも働いてみたい。市電の運転手さんにもなりたい」とたくさんの夢を語るのだが、最後に「でも、いちばんなりたいのは世界一優しいお父さんになることかな」と話すのだ。

 ときには、辻と一緒に登校したいがために学校の「通行テスト」(フランスにはこんなものがあるらしい)をわざと落第してくる息子。そんな息子へのいとおしい気持ちは、文章にもよく表れている。

「私は息子が大きくなるのが嬉しくてしょうがありません。彼が成長していく手助けをしているわけです。手塩にかけて育てているという実感があります。これは幸せなことです」

「息子の笑顔が明日の父親の糧になる」──。だからこそ辻は、「おふくろの味」ならぬ「おやじの味」を日々つくる。シングルファザーの名作映画『クレイマー、クレイマー』でも、父と息子をつないだのはフレンチトーストだったが、辻もまた、料理を通して息子に愛情を伝えようとしているのだろう。

 このエッセイ連載、はっきり言って辻がこれまで書いてきたどの小説よりも、ぐっとくる。そう。息子こそが、作家・辻仁成の隠れた魅力を引き出したのだ。
(水井多賀子)

最終更新:2015.01.19 04:29

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