ドラえもんの黒歴史(前)全26話が封印! 知られざる放送中止事件

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
draemon_01_140820.jpg
“泣ける”と話題の映画『STAND BY ME ドラえもん』(画像はドラえもん公式ページ「ドラえもんチャンネル」より)

 公開10日目にして観客動員244万人を記録、興行収入32.7億円を突破した映画『STAND BY ME ドラえもん』。あの『ドラえもん』を3DCGで表現した話題性だけでなく、監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの山崎貴と、『friends もののけ島のナキ』の八木竜一が務めるという豪華さ。さらに、秋元康が「何度も泣いてしまった」とベタ褒めしただけでなく、“塩”と呼ばれるAKB48のぱるること島崎遙香までもが「総選挙のときも泣かなかったのですが、この映画では泣いちゃいました」と告白するなど、「大人こそ泣ける映画」という口コミ作戦にも成功。イタリアや韓国、台湾、スイス、スペインなど21の国・地域での公開も決まり(19日現在)、評判も上々だ。

 だが、長きに渡って愛され続ける国民的アイドルキャラクターのドラえもんにも、表沙汰にはならない“黒歴史”があるのをご存じだろうか。その一例が、テレビアニメ版『ドラえもん』第1シリーズの“封印”だ。

 1979年から現在までテレビ朝日系で放送されている長寿アニメ『ドラえもん』は、じつは第2シリーズにあたるもの。最初にテレビアニメ化されたのは73年、日本テレビ系列で約半年・全26話で放送されていた。マニアのあいだでは“旧ドラ”“日テレ版ドラえもん”と呼ばれているものだが、これがソフト化されていないばかりか、ドラえもん公式の資料からも“なかったこと”になっているケースが多いのだ。

 なぜ、日テレ版ドラえもんは、無きもののように扱われているのか……。大人の事情で闇に葬られてきた数々の作品の謎を紐解いてきた安藤健二氏による『封印作品の憂鬱』(洋泉社)によれば、その大きな理由は、原作者である藤子・F・不二雄こと藤本弘氏が“『ドラえもん』のアニメを非常に嫌がっていた”せいだというのだ。

 この本のなかで、日テレ版とテレ朝版のふたつで美術監督を務めた川本征平氏は、このように話している。

「藤本先生は、ほとんど余計なことをしゃべらない方でした。それでも、言わず語らず『以前やったのは非常に悔いが残る』なんてことは言われたんですよ。過去にアニメ化を許諾されたことを、非常に後悔されていた様子でした。テレビ朝日で新しくやるときにも、藤本先生は『前のは失敗だった』と思われていて、『そのぶんだけ今回のドラえもんは、これこそがドラえもんだということでやりたい』とおっしゃっていた」

 藤本氏にとって、この“日テレ版”がどれほど許しがたいものだったのか。そのことを裏付けるのは、富山での再放送打ち切り事件、通称“富山事件”だ。

 テレビ朝日で第2シリーズが放送された79年、藤子不二雄2人の故郷である富山県の富山テレビで、日テレ版の再放送が行われた。だが、全26話あるにもかかわらず、「この放送は、わずか9回で終了」。たった9回までしか放送されなかった理由について、小学館の元専務はこう証言している。

「(再放送を始めた局があると知って)藤本先生は大変お怒りになっていました。(中略)藤本先生は旧作の内容が全く気に入っておらず、『原作とは似て非なるものだ』とおっしゃっていました」

 そして、激昂した藤本氏からの「要請を受けて」、小学館は再放送を差し止めるべく、藤子スタジオとの連名で警告状を送付。これにより再放送は打ち切られたのだ。日テレ版ドラえもんが再放送されたのは、これが最後。すなわち、封印されてしまったのだ。

 あの温厚そうなF先生が、ここまで怒るなんて……。ファンならばにわかに信じがたい事件だが、なにも最初からとりつく島がなかったわけではない。アニメ化始動の際は、藤本氏は「協力を惜しまなかった」といい、実際、アニメ用に部屋の間取り図や家の俯瞰図なども描き下ろしている。が、放送直前に仕上がったパイロット版のラッシュフィルムの出来は、「とにかくひどかった!」(小学館関係者)。

 また、映像の出来映えだけではなく、“自主性のあるのび太”“秘密兵器を出すドラえもん”など、キャラクターもアニメオリジナルの設定が目立った。声優も、最初は『平成天才バカボン』の“バカボンのパパ”役で知られる富田耕生が演じ、いまの水田わさびの声に顕著な愛くるしさや、大山のぶ代のオカン(保護者)っぽさは皆無。相当にオヤジくさい声だったようだ。さらに、途中で富田は降板して『ドラゴンボール』の孫悟空でおなじみの野沢雅子にバトンタッチ。現場の混乱が透けて見えるような展開だが、視聴者もオッサン声から一転、突如、少年声に変化したことでさぞかし驚いたことだろう。ちなみに、日テレ版はYouTubeなどでオープニング動画や画像がアップされているが、「かぜきるおつむはツルツルテンだよ」「だけど ドラえもん いいおとこ」「ハァ ヤッショ マカショ」という歌詞が登場するアダルト歌謡のような主題歌(しかし作詞は藤子不二雄が担当)などは、テレ朝版に慣れた視聴者には大いに違和感が残るものである。

 ──それでも、封印されていると聞くと、ついつい観たくなってしまうのが人の好奇心というもの。「ぜひ観たい!」という人も数多いと思われるが、残念ながら「藤本の著作権を管理する藤子プロの許諾を得るのは相当難しい」(本書より)。テレビでの再放送、ソフト化される確率は、ほぼゼロであるようだ。

 が、しかし。『ドラえもん』をめぐっては、さらに大きな黒歴史がある。それは『ドラえもん』こそが藤子不二雄の解散劇を招いた、という噂だ。これについては、明日の後編でお伝えしたいと思う。
(水井多賀子)

最終更新:2018.10.18 04:24

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

ドラえもんの黒歴史(前)全26話が封印! 知られざる放送中止事件のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。アニメ業界水井多賀子漫画家の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 「#GoToキャンペーンを中止してください」ツイート25万超
2 GoTo強行の安倍政権、専門家の感染拡大予測メールを破棄した東京都
3 首相官邸のSNSはやはり電通が仕切っていた! 高橋まつりさんも母親に
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 村上春樹が『猫を棄てる』で歴史修正主義と対決、父親の凄惨な戦中体験を
6 GoToキャンペーンは、 “影の総理”今井補佐官と菊池桃子の夫が経産省の利権に
7 電通社員自殺でも弘兼憲史が宴会芸賛美
8 辛坊治郎が新宿区のコロナ見舞金を「ホストが10万円狙いで感染」とデマ
9 「医療逼迫していない」は嘘だった!なのにGoToキャンペーン前倒し強行
10 安倍政権がまた「災害ないがしろ」!被災地に耐久性不十分の段ボールベッド
11 森友公文書改ざんで安倍首相を守った太田充主計局長が財務省トップに
12 日本のコロナ政策への批判チェックに24億円!
13 東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望も、安倍政権は
14 「東京でコロナ感染224人」は本当に検査を増やしたせいだけなのか
15 公安庁が沖縄めぐりネトウヨ並み報告書
16 木下優樹菜の「新しい不倫相手」は本当に存在するのか?
17 『進撃の巨人』のシキシマはリヴァイ?
18 東京の感染者は7月1日から100人超、発表67人を139人に修正
19 河井克行の買収に安倍事務所が関与の新証言!現金渡した相手を首相秘書が訪問
20 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
1 東京の感染者は7月1日から100人超、発表67人を139人に修正
2 年金積立金が1~3月期で18兆円マイナス! 国民の年金を溶かした安倍政権の責任
3 小池百合子都知事が東京アラート解除のため陽性者数を操作していた疑惑
4 「医療逼迫していない」は嘘だった!なのにGoToキャンペーン前倒し強行
5 安倍政権がまた「災害ないがしろ」!被災地に耐久性不十分の段ボールベッド
6 GoToキャンペーンは、 “影の総理”今井補佐官と菊池桃子の夫が経産省の利権に
7 森友公文書改ざんで安倍首相を守った太田充主計局長が財務省トップに
8 首相官邸のSNSはやはり電通が仕切っていた! 高橋まつりさんも母親に
9 大谷医師が明かしたネトウヨの電凸攻撃!「反日」と怒鳴り込まれたことも
10 「#GoToキャンペーンを中止してください」ツイート25万超
11 河井克行の買収に安倍事務所が関与の新証言!現金渡した相手を首相秘書が訪問
12 安倍政権がコロナ増税の動き! 新会議に震災で復興税導入を主張した経済学者
13 東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望も、安倍政権は
14 吉村洋文知事がコロナワクチン開発でもペテン手口!
15 東京都の感染者100人超で小池知事、加藤厚労相、安倍首相の仰天言動
16 GoTo強行の安倍政権、専門家の感染拡大予測メールを破棄した東京都
17 「桜を見る会」で昭恵夫人、菅官房長官と写真の“大物半グレ”が逮捕
18 「東京でコロナ感染224人」は本当に検査を増やしたせいだけなのか
19 河井事件でバービーが「安倍首相の名前で金を受け取らせたのは圧力」
20 辛坊治郎が新宿区のコロナ見舞金を「ホストが10万円狙いで感染」とデマ

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄