スプーンをくわえたまま練習も! メッシの“王様コドモ”ぶり

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『知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像』(グイレム・バラゲ著)

 ブラジルW杯の決勝は「アルゼンチン対ドイツ」の対決となった。ネイマールもC・ロナウドもいなくなった今、注目が集まるのは当然、アルゼンチン代表のエース、リオネル・メッシだろう。サッカー史上最高といわれるプレイヤーがはじめてのW杯決勝でどんなプレイを見せるのか。

 しかし、メッシについては、そのプレイのすごさの一方で、人物像についてはほとんど語られていない。というのも、メッシはメディアのインタビューに応じることもごくまれだし、たまに応じてもあたりさわりのない優等生的な発言をするだけだからだ。一般的には「シャイで謙虚な天才プレイヤー」というくらいの印象しかないのではないだろうか。

 しかし、そのメッシの意外な素顔を伝えている本がある。メッシが所属するバルセロナの監督をつとめていたペップ・グアルディオラの伝記『知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像』(グイレム・バラゲ著)だ。欧州で活躍するフットボール・ジャーナリストが、グアルディオラ本人から直接話を聞いたと思われる濃密なエピソードを克明につづった一冊だが、その中でメッシの性格はこんなふうに表現されている。

「あどけない子供のような外見の内側には、肉食獣のような強烈な人格が潜んでいる。言葉を変えれば、大きな野望を抱え、記録を次々と塗り替えていくサッカー選手の中に、一人の子供が隠れていると言っても良い」

 この「コドモ」のような性格の例としてあげられているのは、メッシが試合をはずされていたときのエピソードだ。メッシはとにかくサッカーにしか興味がなく、いつもサッカーをしていないと気がすまない。だから、どんなに疲れていても試合に出たがり、監督が疲れを考慮して試合からはずすと、とたんに不機嫌になって、監督と何日も口を利こうとしないのだという。

 そして、ある試合でスタメンから外された翌日のこと。メッシはなんと、「口にティースプーンを入れたまま練習場に現れ、トレーニングの中のほとんどの時間、スプーンをくわえていた」のだという。

 こうした性格は、ピッチにいるときはもっとエスカレートする。とにかく自分にボールを集める事を要求し、若い選手たちがパスを回さないと怒鳴りつける。メッシにパスを出せる状況では、「ダビド・ビージャですら自らシュートを打つことが許されなかった」。

 それでも結果を出し続けることで、メッシのチーム内での影響力はどんどん強大になり、選手の獲得や移籍といった、チーム編成の根幹にかかわる部分にまで影響するようになっていったという。

 たとえば09年にズラタン・イブラヒモヴィッチがチームに加入した際、メッシは「(自分を)センターフォワードで起用しないのなら試合に出ない」とグアルディオラに詰め寄り、結局、イブラはわずか1シーズンでチームを去るハメになっている。バルサではメッシと相性の悪い選手は、どれだけ優秀であろうと放出されてしまうのだ。

また、ブラジル代表の10番でもあるネイマールを獲得した際にも、バルサ幹部はメッシの取り巻きを通じて「ネイマールと契約したらメッシはどう思うだろうか」というお伺いを立てていたことも明かされている。このとき、メッシはプレステでネイマールとサッカーゲームをしたことがあったという理由で「良いよ。彼と契約しなよ」と“お墨つき”を 与えたという。ここまでくると、「コドモ」というより「王様」だが、その人並みはずれたプレーで勝利をもたらしてくれるメッシをだれも切る事ができないし、機嫌をそこねないように厚遇していくしかない。

 この本では、グアルディオラが監督として好成績をあげながら辞任したことについても、メッシの扱いに疲れ果てたことが一因になっているのではないか、と示唆している。グアルディオラはバルサを離れる際に選手に対して、「(このまま監督を続けたら)互いに傷つけあうことになる」と語ったというが、これはメッシのことをさしていたともいわれている。

 一選手が、チームにこれほどの影響力を持つことはめったにないが、それだけメッシのプレーが突出していることの証明だろう。ただし、メッシの存在はチームにとっては諸刃の剣でもある。バルサでのグアルディオラはメッシを生かすためのチーム作りを最優先した結果、監督どころかチームメイトまでもが、良くも悪くも一種の「メッシ依存症」にかかってしまった。

 そして、同様の問題は今大会のアルゼンチン代表にも指摘されている。メッシの1ゲームの総ランニング距離はチーム内で最も短く、守備もほとんどしない。その穴を埋めるためにチームメイトたちが汗をかきまくるという、前近代的なチームが今大会のアルゼンチンだ。それでも決めるときに決めれば文句はないが、徹底マークされた準決勝のオランダ戦のように試合から消えてしまうこともしばしばで、そうなると組織としてはもうお手上げとなってしまう。

 果たして決勝でのメッシは、アルゼンチンにとって「天使」になるのか「悪魔」になるのか。そのプレーに注目したい。

(兼松 ひろし)

最終更新:2014.07.11 07:14

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