維新・吉村代表が立花孝志に情報提供の県議を「思いはわかる」とかばうのはなぜか? 改めて問われる阪神オリ優勝パレードの疑惑

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日本維新の会HPより


 竹内英明・元県議がネット上で攻撃に晒された末に自死するなど、騒動が収まる様子がない兵庫県知事選をめぐる問題。ここにきて、2馬力選挙を展開した「NHKから国民を守る党」立花孝志党首が誹謗中傷の火種を撒き散らすこととなった情報源が、ようやく明らかに。しかも、それが百条委員会副委員長で維新所属の岸口実氏と、同じく百条委メンバーである維新の増山誠氏という、揃いも揃って維新の県議会議員だったことから、大きな物議を醸している。

 兵庫県知事選における岸口・増山両氏の動きは、下劣極まりないものだった。岸口氏は“斎藤知事失職の「黒幕」は竹内氏”などとする怪文書を、増山氏は非公開の秘密会で実施された百条委の音声データを、それぞれ立花氏に提供した。それらをもとに立花氏が情報拡散したことにより、ネット上にはデマや誹謗中傷、陰謀論が蔓延り、竹内氏や百条委の奥谷謙一委員長らに対する攻撃が激化。竹内氏は死にいたるまで追い詰められてしまったのだ。

 かねてより「文書や音声データの提供者は岸口氏と増山氏ではないか」との見方があったが、その事実を当人が認めたことの衝撃は、あまりに大きいと言わざるを得ないだろう。

 ところが、岸口氏と増山氏は、自分がしでかしたことの卑劣さと責任の重大さをまるでわかっていないらしい。たとえば、岸口氏が立花氏に提供した怪文書がもとになり竹内氏への誹謗中傷が巻き起こったというのに、反省の弁は「軽率だった」という薄っぺらなものだった。

 もっと酷いのは増山氏だ。増山氏はこの期に及んでも「クーデターという元県民局長が文書を作成した背景が県民に知らされないまま選挙がおこなわれることが正しいのかという非常に強い思いがあった」などと強弁。以前から片山安孝・元副知事らが主張してきたのと同様、あたかも元県民局長は斎藤県政を転覆させる目的で告発文書を作成したかのように語ったのだ。

 だが、これこそが「維新クオリティ」というものなのだろう。事実、維新の岩谷良平幹事長は19日、岸口氏について「除名処分とかいうものに該当するような大きな違法行為があったわけではないと認識している」「法的問題はない。あくまでも政治倫理上問題がある軽率な行為」と発言。そのうえ、岸口氏が立花氏に提供した文書に書かれていた内容は「いままで噂レベルで言われていたこと」だったとし、「立花さんの言動の変化につながったことはないと思う」などと口にしたのだ。

 極め付きは、維新の代表を務める吉村洋文・大阪府知事の発言だ。吉村知事は20日、今回の問題について「あってはならない」と断罪しながら、こう述べたのだ。

「本人たちの思いというのがあるのはわかるが、でもこれはやっぱりルール違反ですから、してはならないことだと思う。しかも、相手方は他党(注:正しくは政治団体)の党首ですから、それはやっぱりルール違反。思いはわかるけど、ルール違反です。これは」

陰謀論や誹謗中傷を助長し死者まで出ているのに「思いはわかる」と維新県議をかばう吉村知事の異常

 岸口・増山氏という維新の県議ふたりが立花氏を介して県知事選を歪め、百条委の価値を大きく毀損したというのに、それを「ルール違反」と矮小化すること自体、認識が甘すぎる。だが、耳を疑ったのは「本人たちの思いはわかる」という一言だ。死者を出すまでの誹謗中傷や、告発をおこなった元県民局長を貶めるデマや陰謀論が飛び交う元凶をつくったにもかかわらず、あたかもその行為に理があるかのように語るとは、代表としてあるまじき暴言ではないか。

 しかし、吉村知事の「思いはわかる」という発言は、まさしく本心から出た言葉だったのだろう。斎藤知事の再選、あるいは百条委を瓦解させたい──それは吉村知事も共有する思いだったはずだ。なぜなら、元県民局長の告発文書の“本丸”は、斎藤知事のパワハラ疑惑などではなく、吉村知事が言い出しっぺである「阪神・オリックス優勝パレード」をめぐる補助金キックバック疑惑にほかならないからだ。

 ご存知のとおり、吉村知事は2023年、斎藤知事らとともに、大阪万博の機運醸成を狙って阪神タイガースとオリックス・バッファローズの「優勝パレード」の開催をぶち上げた。その際、開催にかかる資金に公費は投入しないとし、資金確保のためクラウドファンディングで5億円を集めることを目標に掲げたが、集まった金額は1億円程度。最終的に大阪府と兵庫県が地元企業から約5億円の協賛金を集めて賄った。

 だが、告発文書では、その裏側でとんでもない協賛金集めがおこなわれていたと記されていた。

〈信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補った。幹事社は但陽信用金庫。具体の司令塔は片山副知事、実行者は産業労働部地域経済課。その他、■■バスなどからも便宜供与の見返りとしての寄附集めをした。パレードを担当した課長はこの一連の不正行為と大阪府との難しい調整に精神が持たず、うつ病を発症し、現在、病気療養中。〉(編集部注:伏せ字部分は原文では実名)

 県が補助金を増額し、それを協賛金としてキックバックさせていた──。これがもし事実であれば違法性が問われる公費の不正支出だが、この告発文書をきっかけに、疑惑がさらに深まる事実が次々に判明していったのだ。

告発文書の本丸は阪神オリックス優勝パレードをめぐる補助金キックバック疑惑!

 まず、告発文書が指摘する「信用金庫への県補助金の増額」だが、この増額はたしかに優勝パレードと同時期におこなわれていた。

 兵庫県では、金融機関が新型コロナ対策の無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)で融資先へ支援をおこなった場合、1件あたり最高10万円を金融機関に対して県が補助する「中小企業経営改善・成長力強化支援事業」を実施。2022年の補正予算では補助金として8億円が計上され、2023年は県の産業労働部が約1億円の予算を要求。11月14日の財政課長の査定資料には1億円と記されていたという(「サンテレビNEWS」2024年8月6日付)。

 だが、この約1億円という数字に対し、片山副知事が「これじゃ足りん。4億にせえ」と言い始め、担当課は要求額を3億7500万円に引き上げたという(「集英社オンライン」2024年10月30日付)。実際、11月16日の産業労働部の事業説明書でも、金額が3億7500万円に差し替わっている。

 さらに、この補助金を積み増ししたのが斎藤知事だ。職員のメモによると、優勝パレード2日前にあたる11月21日の知事査定において、斎藤知事は「全体をまるく4億円程度で」計上することを指示。その結果、現場が約1億円で要求していた金融機関への補助金の財源は、4億円にまで増額されたのだ。

 かたや、県は優勝パレードの協賛金集めに難航していたが、補助金の増額が決まって以降、優勝パレード終了後だったにもかかわらず協賛企業を得ていた。パレード終了後に協賛を申し込んでも企業PRにはならないというのに、優勝パレード後に協賛を申し込んだうち11件が、なんと告発文書で指摘されていた信用金庫だったのである。

 しかも、斎藤知事が「全体をまるく4億円で」とさらなる増額を決めたのと同じ11月21日、片山副知事は告発文書で「幹事社」として名指しされていた但陽信用金庫の桑田純一郎理事長に“協賛金の集まりが悪いので県内11の信用金庫から拠出してほしい”と依頼していたことも判明している。

 この問題について、片山氏は百条委で「信用金庫に対する協賛金の協力依頼と補助金を増額する予算措置のタイミングがたまたま一致した」と述べたが、「たまたま一致した」と言うには、タイミング的にあまりにも出来すぎた符合だと言わざるを得ない。だいたい、片山氏は当初案で1億円だったのを4億円に増額させたことについて、「これは国の財源から4億円を確保できるメドが立ち、それなら増額したほうが県内の中小企業のためになると考えたためです」(「現代ビジネス」内「週刊現代」記事2024年11月8日付)と述べているが、昨年10月24日の百条委においては〈補助金を1億円から4億円に積み上げる作業に関わった県職員が、増額する根拠は「なかった」との趣旨の証言をした〉と県関係者が語っているというのだ(前述・集英社オンライン)。

優勝パレードをめぐる疑惑は斎藤知事だけでなく、維新の責任も

 さらに、協賛金を取りまとめた但陽信用金庫の桑田理事長は「片山さんからキックバックの計画を持ちかけられたことも、具体的な金額の提示を受けたこともない」と反論しているが(前述・「現代ビジネス」内「週刊現代」記事)、「AERA.dot」(2024年9月25日付け)の取材に対し補助金との関係は否定しつつも片山副知事が同金庫を訪れ寄付を依頼したことが寄付増額につながったことは認めている。また、寄付をした金融機関のひとつに勤務する人物は、片山氏が信用保証協会の理事長を務めていたことを指摘したうえで、「保証協会理事長という以前の肩書をいかして、金融機関を直接、訪問するなど無言の圧力で寄付を募ったのです」「県の幹部は、斎藤知事の騒動前は『キックバックがあったから寄付した』『片山氏のメンツを立ててやった』と公然と言っていました。今はヤバいと思って口をつぐんでいますがね」と証言している(「現代ビジネス」1月23日付)。

 このように、「優勝パレード」をめぐる問題は疑惑が深まる一方なのだが、重大なのは、告発文書で「病気療養中」とされていた課長についてだ。このパレード担当の課長は、昨年4月20日に急死。斎藤知事の疑惑追及が強まったあとの同年7月23日になってようやく死亡が公表され、元局長と同じく自殺とみられているが、見過ごせないのは告発文書において「大阪府との難しい調整に精神が持たず」と言及されていること。いずれにしても、優勝パレードの問題と維新や大阪府は切り離せないことは確かだろう。

 吉村知事といえば、斎藤知事が再選した際、「別にやめろという趣旨ではないが、知事に不信任決議を出した議会が、百条委を継続する正当性はあるのか」「百条委員会やってる最中で不信任決議を出して、斎藤さんを完全否定したわけでしょ」などと述べ、必死になって百条委叩きをおこなっていた。もしかすると、その理由は、吉村知事が大阪万博のPRのためにぶち上げた「優勝パレード」の補助金キックバック疑惑への追及をやめさせたかったからではないのか。だからこそ、怪文書や音声データを立花氏に提供した維新県議ふたりに対し、「思いはわかる」などという発言が飛び出したようにも思えるのだ。

「優勝パレード」をめぐる補助金キックバック疑惑については、すでに兵庫県警も告発状を受理し、捜査が進められていると思われるが、兵庫県政の混乱には維新の反社会的かつ無責任な体質も大きくかかわっている。斎藤知事に対する追及のみならず、「優勝パレード」疑惑の真相究明、そして維新の責任についても厳しく問わなくてはならないだろう。

最終更新:2025.02.22 10:04

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