松本人志「訴訟取り下げ」でワイドショーが醜悪な忖度! 吉本御用スポーツ紙は「物証なし」だけ強調し復帰を扇動

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松本のコメントのうち「強制性の」「証拠はない」だけを強調して見出しにしたスポーツ報知(11月9日付)の1面


 ジャニーズ問題であれだけ批判されたにもかかわらず、この国のマスコミの忖度体質は何一つ変わっていないらしい。ほかでもない、松本人志の対「週刊文春」訴訟取り下げをめぐる報道のことだ。

 改めて指摘しておくが、今回の訴訟取り下げは、勝ち目がなくなった松本が自分で起こした裁判から逃げ出した“事実上の敗訴”以外のなにものでもない。それは、ここまでの裁判の中身を見れば明らかだ。

 性加害疑惑の報道直後、「事実無根なので闘いまーす」と大見栄を切って、5億5千万円という巨額損害賠償請求訴訟を起こした松本だが、裁判が始まると、告発したA子さんやB子さんの素性を明かせというセカンドレイプにつながりかねない要求を行なう一方で、記事のどこが事実に反するかさえ、具体的に明示しなかった。

 一方、文春側は、性加害の直接的物証こそ示せなかったものの(密室内の性加害に直接的物証がないのは当然なのだが)、8月に予定されていた第2回弁論準備手続きを前に、19ページにわたる主張書面と20通に及ぶ証拠を提出。そこには、文春に事件の通報があった2020年以降、約3年半に及ぶ入念な取材の経緯と、編集部が被害の告白を真実と信じた根拠が詳細に記されていた。被害者のA子さん、B子さんの記事よりもはるかに具体的な証言内容、最初の通報がA子さんから相談を受けた元東京地検特捜部検事の中村信雄弁護士という信頼に足る第三者だった事実、周辺取材によって、A子さんの知人、B子さんの当時の交際相手、B子さんの大学の後輩の民放記者などから得た裏付け証言、さらには、A子さんが飲み会直後に知人に送った「危なかった」「やんわり対応して最後のところはギリギリ守れた」というLINE……。

 2023年の刑法改正で定められた「不同意性交等罪」は、密室内での不同意の立証が困難でも、相手との権力関係や被害者が性的行為を断れない状況に追い込まれていたことが客観的に立証できれば成立する。今回は報道をめぐる民事裁判だが、司法の性犯罪に対する厳罰化の流れを考えれば、文春が提出したこれらの証拠はそれだけで、「性加害があったと信じるに足る」と判断されてもおかしくないものだった。

 また、7月には、松本の代理人である田代政弘弁護士が探偵を雇ってA子さんの尾行を行い、A子さんの相談相手である中村弁護士に対してA子さんの証言をやめさせるよう働きかけていたことが発覚。これは裁判の公正な進行を妨げるととられかねないもので、裁判所の心証を著しく悪化させてしまった。

 司法の専門家の間でもすでに「松本サイドに勝ち目はない」という見立てをする人が圧倒的になっていた。

 しかも、今後、裁判が続けば、A子さん本人や最初の通報者である中村弁護士などが文春側の証人として証言台に立ち、文春記事の真実相当性の立証はさらに補強されていく。

 一方、松本のほうは、裁判が進むと、「性加害の有無」以前に「性的行為があったかどうか」を問われる局面が必ずやってくる。そこで「性的行為がなかった」と言い張れば、前述したさまざまな証言・証拠をつきつけられるし、「あったが同意していた」と答えれば、「その場で初めて会った人と、いったいどうやって性的同意を得たのか」を問われることになる。

 敗訴と同時に、こうした追及を避けたかった松本は、どうしても裁判を終結したかった。だからこそ、夏になって、松本側から文春に「和解」をもちかけたのである。

 そして、文春にこれを拒否されると、「訴訟取り下げ」までハードルを下げ、女性への謝罪とその公開という条件を呑んで、文春に「取り下げ」に同意してもらったのだ。

 だったらいったいなんのために訴訟を起こしたのか、と突っ込みたくなるが、松本の訴訟については、そもそも「記者会見を避け、休業を正当化するためのスラップ訴訟ではないか」という声もあった。このお粗末な顛末を見ていると、その可能性は高いと言わざるを得ない。

実質敗訴の松本人志をまともに批判できないテレビ! 民放各局は吉本興業の株主でズブズブ

 なんともお粗末な訴訟取り下げ劇だが、しかし、今回の松本の対応でもっと呆れたのが、その発表にともなうコメントだった。コメントが出される前は「さすがの松本も今回は全面謝罪した上で、芸能界引退を発表するのでは?」と予想する向きもあったが、そんな殊勝さ、誠実さなどみじんもなかった。
 
 密室で起きる性加害では「直接的物証」を確保できないのは当然であるにもかかわらず、わざわざ「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認」と強調。被害女性への「おわび」も、「参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば」と、仮定の話として謝罪するポーズをとったに過ぎなかった。

 そして最後は「どうか今後とも応援して下さいますよう、よろしくお願いいたします」と締め、芸能界復帰への意欲を早々に表明する始末だった。

 吉本興業のコメントも同様で、「松本人志の活動再開につきましては、関係各所と相談の上、決まり次第、お知らせさせていただきます」と、すでに活動再開に向けて動いていることを露骨にうかがわせていた。

 いずれにしても、今回の松本の態度は批判の対象以外の何物でもない。実際、普通のタレントが同じように性加害報道を否定できずに裁判から逃げ出した上、謝罪になってもいない中途半端な対応で復帰を進めようとしたら、ワイドショーやスポーツ紙から「ありえない」「この程度で許されると思ってるのか」と袋叩きにあっただろう。

 ところが、である。松本の訴訟取り下げをめぐるテレビの報道はあまりに腰が引けたものだった。

 8日13時すぎに、「松本人志、訴訟取り下げへ」というニュース速報が流れて以降、当日14時からの『ゴゴスマ』(CBCテレビ)『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などのワイドショーを皮切りに、夕方のニュース、夜の報道番組も一斉にこの問題を取り上げたが、どの番組も松本への厳しい批判はほとんどなし。それどころか、訴訟取り下げが「実質的に松本側の敗訴」という、ごく当たり前の解説すらせずに、「早期に復帰するための取り下げ」と、まるで復帰への露払いをするような報じ方をしていた。

 松本のコメントについても、その不誠実さを批判するトーンはほとんどなかった。文春に告発した被害女性のひとりが朝日新聞の取材に応じ、松本が「いらっしゃったのであれば」という言い回しをしたことについて、「私は仮定ではなく、実在するので深く傷ついた。記事には一切誤りが無いと今も確信している」と批判したが、女性がコメントを出していたこと自体を取り上げた番組さえ僅かだった。

 むしろ、多くの番組が松本のコメントにあった「強制性の有無を直接に示す物的証拠がない」ことを強調し、「玉虫色の決着」「痛み分け」などと、まるで和解であるかのような解説をしていた。

 こうした腰の引けた姿勢は翌日、翌々日も同様で、踏み込んだ発言が飛び出すことのある10日の『サンデージャポン』(TBS)も、松本の訴訟取り下げ問題は細野敦弁護士の解説を受けて太田光が「法廷でボケても受けない。取り下げも一つの考え方」などと擁護コメントをしただけで、他の芸能人パネラーたちには一切コメントさせなかった。

 明けて月曜日、11日は、ネット上で松本批判が高まっているためか、『めざまし8』(フジテレビ)や『ひるおび』(TBS)など一部の番組で松本に批判的な発言をするコメンテーターもいたり、弁護士が「事実上の敗訴」という解説をするようになったが、一方で『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)や『DayDay.』(日本テレビ)などは、そもそもこの問題にまともに触れようとしなかった。

「テレビ各局は、吉本興業の株主である上、松本が復帰する可能性もあるので、まともな批判なんてできるはずがない。一方、擁護姿勢を示した番組やコメンテーター、芸人に批判が殺到しているので、露骨に擁護することもできない。身動きが取れなくなっているんです」(在京キー局局員)

松本の性加害疑惑をなかったことにし早期復帰を煽るスポーツ紙! まさかの万博アンバサダー復帰まで

 テレビのだらしなさには呆れるほかはないが、もっと酷かったのがスポーツ紙だ。スポーツ紙はジャニーズをめぐっても癒着と忖度報道が大きな問題になったが、吉本興業とも同等のべったりな関係がある。

 そのため、松本人志の性加害問題でもこれまで、吉本のリークと思われるような擁護情報を散発的に流していたが、今回の「取り下げ」をめぐる報道は「ここまでやるか」と言いたくなるものだった。

 なかでも露骨だったのが「スポーツ報知」だった。同紙は取り下げ発表の翌日朝刊の1面で、「松本人志 文春と電撃終戦」という大見出しの隣に、松本のコメントのうち「強制性の」「証拠はない」「確認いたしました」という部分だけを赤字で大きくして載せたのである。(1ページ目の画像参照)

 繰り返しになるが、密室で起きた性加害事件で直接的な物証がないのは当たり前。にもかかわらず、その部分だけをわざわざ1面でクローズアップするというのは、明らかに松本人志や吉本興業の意図に乗っかって紙面を作ったとしか思えない。

 しかも、「スポーツ報知」は芸能面では「松本年明け復帰 来年4月大阪万博アンバサダー視野」などという大見出しをうって、復帰の露払い報道を展開。さらに、東国原英夫の「復帰意向歓迎、まずは一歩目」「週刊誌も時代と共に変わらないと」などとする松本擁護、文春批判コメントを大きく掲載した。「時代と共に変わらなきゃいけない」のは、「ハラスメントや性加害の意識」のはずなのに、「週刊誌」のほうに「変われ」と説教するとは、とんでもない錯綜ぶりだが、東国原は以前から松本に擁護的で「週刊文春」批判を繰り返してきた御仁。「スポーツ報知」は明らかにそれを見越して、コメントに起用したのだろう。

「サンケイスポーツ」も同様で、9日早朝のウェブ版記事では「松本人志VS文春の裁判終結「強制性示す物的証拠ないことを確認」活動再開へ「調整」」と、やはり「物的証拠がない」ことを強調した上、復帰の露払い報道を展開した。

 また、吉本と非常に近いことで知られる「スポーツニッポン」となると、一面から「松本人志 年明け復帰へ」と大見出し。さらに、芸能面では「浜田 再出発全力支援」「松本人志“訴訟終結”相方の決断を尊重」と打つなど、訴訟取り下げをすっとばして、復帰をメインに報道を展開した。

 とにかくスポーツ紙はこぞってこんな調子で、事件そのものをなかったことにして、早期復帰を煽ろうとしているのがミエミエだった。しかも、複数のスポーツ紙がそろって具体的に「年明け」という復帰時期を明示していたところをみると、一連の報道の背景に、吉本興業の意向があるのは間違いないだろう。

「吉本は和解工作を始めた直後から、年明け復帰を計画して、我々スポーツ紙に散発的に復帰計画をリークしていた。今回、訴訟取り下げへの批判をかわし、復帰に向けた世論を醸成するために、本格的に復帰計画を書かせたんでしょう」(スポーツ紙記者)

 しかし、だとしたら、慄然とするのが、複数のスポーツ紙が復帰を煽る記事の中で共通して書いていた「松本が来年4月の大阪万博アンバサダー復帰に意欲を示している」という情報だ。

 万博というのは世界的イベントであり、性加害疑惑を抱えた人物がアンバサダーに復帰すれば、国際的な批判を招きかねない。吉本と松本は、そんな無茶苦茶な復帰計画を本気で立てているのだろうか。

 松本に対しては、いまのところ、ネット上でも批判が大きく、松本や吉本の思惑通り年明け復帰できるかどうかは不透明だ。しかし、こうした忖度マスコミの体たらくぶりを見ていると、気がついたら、松本人志が記者会見もしないままいつの間にかテレビに復帰している、という事態も十分にありうるだろう。

最終更新:2024.11.11 11:15

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