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菅首相「五輪関係者と国民が交わらない」は大嘘! 528自治体で選手団と住民の交流計画、政府が実施を明言 そば打ち、おにぎり作りも…
首相官邸HPより
昨日7日、菅義偉首相が「短期集中」を掲げていた緊急事態宣言の期間を今月末まで延長することを決定した。当初から17日間と期間を区切ったことに対しては「短すぎる」と指摘が相次ぎ、菅首相以外の誰もが「延長は不可避」と考えていたはずで、案の定と言わざるを得ない。
しかし、昨日おこなわれた会見でも菅首相は自身の判断の甘さを頑なに認めず、責任問題をごまかすための最終兵器であるワクチン接種にかんして、またも大風呂敷を広げた。
なんと、菅首相は「1日100万回の接種を目標とし、7月末を念頭に希望するすべての高齢者に2回の接種を終わらせるよう自治体をサポートする」と言い出したのだ
1日100万回の接種……!? そもそも自治体からは「供給量が見通せないなかでは接種スケジュールも見通せない」などという困惑の声があがっており、〈厚労省が4月末、全国の地方自治体に内々で調査したところ、1741の市町村のうち6割以上の1100の自治体が「7月中に高齢者のワクチン接種完了はできない」と回答〉という報道もある(AERAdot.3日付)。
さらに、政府が唐突にぶち上げた大規模接種センター設置による接種でも、東京会場は「1日1万件が目標」と宣言したが、当初から岸信夫防衛相をはじめ運営を担う自衛隊内部からも「難しい」「絶対に不可能」という声があがり、一方、ワクチン担当の河野太郎・行革担当相も「1日1万人になるかどうかは自衛隊の検討次第」などと自衛隊に責任を押し付けはじめている。
このように、現場からも「実現不可能」という見方が強まっているというのに、菅首相は性懲りもなく「1日100万件」などという数字を打ち上げたのだ。
だが、当然ながらこの数字に根拠はない。実際、会見の質疑応答では、日本経済新聞の記者が「1日100万回」について「どういった積算根拠があっておっしゃったのか」と質問したが、菅首相はこんな返答をおこなったのだ。
「あのー、これはいろいろな、あのー、情報を全部収集しています。ま、そのなかで、えー、いわゆるインフルエンザの接種というのを日本はやっています。そういうなかで60万回ぐらいは平均でできているという報告も受けていますので、ま、そうしたことから考えたときに、体制としては今回のほうがはるかに広くとっていますので、ま、そうした、あのー、さまざまなことを考えたときに、それは可能だと。ですから、接種を始めて本格的になって慣れてくると、ま、そういうことも可能だというふうに十分に思っています」
「積算根拠は?」と訊かれて持ち出したのが、まさかのインフルエンザのワクチン接種とは……。言うまでもなく、季節性インフルエンザのワクチンは接種体制が全国の医療機関ですでに確立されているし、マイナス70度以下の超低温管理で輸送・保管といった難題もない。接種会場での感染防止や健康観察のための待機といった求められる対策のハードルもまるで違う。それでも「平均60万回ぐらい」でしかないというのに、菅首相はそれを上回る「1日100万回が可能だ」と言っているのである。
ようするに、「1日100万回」というのは菅首相の「そうなればいいな」という楽観的な希望であって、「積算根拠」などと言えるような裏付けはまったくないのだ。
ファイザー社の五輪選手団へのワクチン提供を“手柄話”のように語った菅首相の棄民思想
いや、それどころか、菅首相は「ワクチン接種の加速化を実行すること、そして、それまでの間に感染拡大を何としても食い止めること、この『2つの作戦』に私自身、先頭に立って取り組んでまいります」などと宣言したのだが、「感染防止」のほうの対策について言及したのは、まさかの「マスク、手洗い、3密の回避の徹底」だけ。すでに政府分科会の尾身茂会長やコロナ担当の西村康稔・経済再生担当相も「3密ではなく1密でも感染する」と述べているのに、肝心の対策トップに立つ菅首相は「3密の回避」などと言っているのである。
こんな体たらくでよくもまあ「2つの作戦」などとぶち上げたものだが、しかし、昨日の会見で絶句したのは、もちろん、東京五輪開催の是非についての発言だ。
菅首相はまず、会見冒頭の発言で「ファイザー社との協議においては、東京大会に参加する各国の選手団に対し、ワクチンを無償で供与したいという申し出がありました」などと自身の手柄であるかのように語り、「安全・安心の大会に大きく貢献する」と得意げに述べた。
だが、この話を勝ち誇ったように語ること自体、「棄民」の姿勢が溢れたものだ。五輪選手団にワクチン接種を優先させることに対しては、世界保健機関(WHO)の緊急対応責任者であるマイク・ライアン氏が「われわれは今直面している現実を直視しなければならない。今、最も危険にさらされている人々に接種するワクチンさえ十分にない」「最前線の医療従事者、高齢者、社会で最も脆弱な人々が最初にワクチンにアクセスする必要がある」と言及、東京大医科学研究所の石井健教授も「ワクチンは公衆衛生のために使うべきであって、スポーツイベントのためではない」と指摘(毎日新聞ウェブ版6日付)。だいたい、この国においては医療従事者へのワクチン接種すらいまだに完了しておらず、選手にワクチンを打つ医療従事者がワクチンを打てていないという公衆衛生の観点をまるで無視した状況が生まれる可能性があるのだ。
いや、そもそも東京五輪の強行開催に反対論が高まっているのは、大阪をはじめとして医療従事者不足などから医療崩壊が起こっているというのに約1万人もの医師や看護師を大会運営のために駆り出そうという「国民の命よりスポーツイベントを優先させる」姿勢にある。
なのに、菅首相はそうした国民の疑問や不条理には答えず、「安全・安心の大会」としか口にしない。ようするに、「安全・安心の大会」を可能とすることだけが開催の条件だと考えているのである。
しかし、その「安全・安心の大会」というのも、裏付けなき「2つの作戦」と同様、まったく根拠がない。いや、それどころか、信じられないような計画まで進められているのだ。
国会で内閣府政務官が「そば打ちも14日以内はできない」とホストタウン計画強行を明言
昨日の会見では、共同通信の記者が「国民の命と暮らしを守ることと五輪・パラリンピック開催の両立は本当に可能なのか」と問いただしたのだが、菅首相はまたも選手へのワクチン接種を持ち出し、さらにはこう述べた。
「選手や大会関係者と一般の国民が交わらないように、滞在先や移動手段、ここを限定したい。さらに、選手は毎日検査をおこなうなど、厳格な感染対策を検討しております。こうした対策を徹底することで、国民の命や健康を守り、安全・安心の大会を実現する。このことは可能と考えており、ま、しっかり準備をしていきたい、このように思います」
つまり、菅首相は「選手や大会関係者と一般の国民が交わらない」こと、つまり選手を外部から隔離するいわゆる「バブル方式」を「安全・安心の大会」の根拠として挙げたわけだが、ワクチンの優先接種や毎日の検査の実施、隔離という「バブル方式」が導入されるのは選手であって、大会関係者であるボランティアは予定されていない。ようするに、大会関係者のなかでクラスターが発生する可能性があり、その大会関係者は「一般の国民」と交わるのだ。
このように、菅首相の「安全・安心の大会」という論拠はすでに破綻しているのだが、「選手と一般の国民は交わらない」というのも大嘘なのだ。
じつは、菅首相の会見が開かれたのと同じ昨日7日におこなわれた衆院厚労委員会では、立憲民主党の尾辻かな子衆院議員が重要な問題を指摘していた。それは「ホストタウン」の問題だ。
ご存知のとおり東京への五輪招致で「お・も・て・な・し」を掲げた日本は、そのおもてなしを実行するため、五輪大会史上初となる、国内の自治体が海外選手団と交流する「ホストタウン」の実施を計画してきた。そして、新型コロナの発生によって当然見直されたものとばかり思われていたこの計画は、いまだ実施する方針となっているのだ。実際、ホストタウンに登録する自治体数は、今年4月27日時点でも528にものぼっているという。
日本各地の自治体で地域住民と海外選手団の交流がおこなわれる──。つまり「選手と一般の国民は交わらない」という菅首相の説明はまるっきり嘘であるわけだが、尾辻議員が質疑で取り上げた内閣官房による「ホストタウン等における選手等受入れマニュアル作成の手引き」(今年4月改訂)には、「そば打ち、おにぎり作り、茶道体験、給食交流等」といった「食事の提供」まで記述されているのだ。
この「手引き」では、こうした「食事の提供」の場での〈作業・食事中の会話抑制、社会的距離の確保〉に留意するよう書かれているのだが、尾辻議員はこの点を「全然バブル方式になっていない。抜け穴だらけ」「自治体の負担が重すぎる。ホストタウンは中止すべきではないか」と追及。しかし、答弁に立った三谷英弘・内閣府大臣政務官は「選手と住民の交流は、入国後14日間は選手との接触は生じない」「そば打ちも14日以内はできない」などと述べ、ホストタウンの実施を強調したのだ。
フランスの記者から海外報道陣の対策について追及されても、はぐらかした菅首相
こんな計画をいまだに推し進めているのに、菅首相は「選手と一般の国民は交わらない」と断言したのである。完全に国民に対する虚言の説明ではないか。
選手や大会関係者の問題のみならず、昨日の会見ではラジオ・フランスの記者から海外報道陣の対策について「数万人の行動を監視するのは物理的に可能か」と追及がおこなわれたが、その際も菅首相は質問されていない選手団の話にすり替え、「選手と日本国民の命、健康はしっかり守ること、ここは隔離しますので、できると思っています」などと語り、肝心の海外報道陣の問題については短く、「それ以外の方は、さまざまな制約がある、水際も含めてありますので、そこは安全対策を徹底していきたいと思っています」と具体性の欠片もない話で終わらせていた。選手の「隔離」も嘘なのに、数万人にもおよぶ海外報道陣の対策など、とれるはずがないだろう。
この期に及んでも大嘘と大言壮語で国民を欺いた菅首相。この男のホラ吹き体質・棄民思想によって、国民の命の危険はますます高まっているのである。
(編集部)
最終更新:2021.05.08 03:21
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