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クルーズ船乗客の死亡は安倍政権の人災だ!「船内感染は留め置いた5日以前」という厚労省の言い訳の嘘
クルーズ船の患者死亡で会見をする安倍首相(首相官邸HPより)
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗客で、新型コロナウイルスの感染が確認され入院していた男女2名が死亡した。これは完全に、安倍政権のとったクルーズ船閉じ込め措置によって起こるべくして起きた、人災だ。もはや政府による過失致死と言ってもいい。
死亡した男性は87歳で気管支ぜんそくの持病があり、感染した場合のリスクが非常に高かったにもかかわらず、PCR検査をしたのは11日。死亡した84歳の女性も5日にはすでに発熱していたにもかかわらず、1週間も放置しPCR検査したのは12日。2人とも、5日にすぐ検査をしていれば命を落とすことはなかったかもしれない。
そういう意味では、2人は政府の対応が後手後手に回ったことによる、犠牲者なのだ。にもかかわらず厚労省は、検査当日、結果が出る前に即搬送したなどと胸を張り1週間放置したという過失を認めていない。
しかも、問題はこの2名への対応の遅れだけではない。現在27名が重症(20日現在)で、なかには集中治療室で治療を受けている人もおり、また感染していない人でも重症者が1人いると伝えられるなど、いまなお予断を許さない状況だ。
本サイトは以前からクルーズ船留め置きについて批判し、差別感情をいたずらに煽るだけで、逆に船内ではこのままでは犠牲者が出ると指摘してきた。風通しの悪い密閉空間で、高齢者が多く持病を持っている人も多い。そんな環境の悪いところに閉じ込めていたら、新型コロナウイルスに限らず、体調を崩すのは目に見えていた。
言っておくが、これは本サイトが推測で勝手に主張していた話ではない。多くの専門家が口を揃えて、クルーズ船留め置きにはなんの効果もなく、逆に危険なだけであることを早くから指摘していた。
ところが、政府は聞く耳を持たず監禁を続けて、その結果、乗客の人命を奪い、危険に晒しているのだ。
乗客だけではない。船内での医療従事者や公務員にも感染者が出るなど、感染は拡大し続けている。アメリカの国立衛生研究所はこのクルーズ船内を「ホットスポット」と表現したが、まさにその通りだろう。
ところが、政府は、自らの失策をまったく省みず、あり得ない言い訳をしている。乗客たちが感染したのは、船を留め置きした2月5日の前だというのだ。
船内隔離によって感染が広がったのではないかとの指摘に、加藤勝信厚労相は2月15日会見でこんな弁明をした。
「基本的にはそうした(留め置き措置をとる)前の段階で感染があり、発症したのではないかと我々は見ている」
19日の厚労省会見でも、脇田隆字・国立感染研究所所長が、こんなことを言っている。
「2月5日の時点で検疫・隔離が始まって明らかにこの検疫の期間で徐々に発症者が減ってきて現在ではほぼ感染がないという状況まで観察できているということで、隔離は有効におこなわれたということを確認しました」
ほかにも、厚労省や政府関係者は「留め置き前から感染が広がっていた」「感染は5日以前」「発症のピークが7日」などと主張しているが、これは明らかにおかしい。
「クルーズ内感染は5日以前」という政府の弁明では説明しきれない感染
感染研の報告書によれば、18日までに発症日がわかった陽性の乗客184人のうち33人は客室待機が始まる前の5日以前に発症、6〜9日には89人(乗客79人、乗員10人)が発症。潜伏期間を考えると、客室待機が始まる5日以前に感染が一定程度広がっていたと分析している。
しかし、発症日が判明している人は3分の1以下にすぎず、検査時点で陽性だが無症状で下船した人が下船後発症したかどうかも明らかになっていない。これでどうして、5日以前の感染と言い切れるのか。しかも、発症日がわかっているケースでも、10〜15日に62人(乗客32人、乗員30人)が発症しているし、17日に99人感染者が判明するなど16日以降も感染者は増え続けている。いや、そもそも5日以前に船内にいなかった医療従事者や公務員に感染が広がっているではないか。これだけをとっても、客室待機後も感染が拡大したのは明らかだろう。
また、仮に厚労省が主張するとおり「感染は5日以前」「客室待機前に感染が広がっていた」というのであれば、それこそ、ただちに5日に全員下船させて検査を実施し、陽性と陰性にふり分けて、陽性の人は専門病院に入院、陰性の人は「ホテル三日月」のような隔離施設に移すべきだっただろう。
ところが、政府は5日朝から客室待機にしただけで、そうした措置をとらなかった。ホットスポットであるクルーズ船にそのまま患者を隔離してしまったのだ。
当たり前だが、ホットスポットと隔離施設はまったく違う。隔離施設はもともとウイルスに汚染されていない安全な場所に患者や感染可能性のある者を隔離するため、感染危険性のある場所をあらかじめ特定し、管理することができる。しかし、ホットスポットは感染者が多数発生した場所であり、どこに菌が潜んでいるかわからない。実際、「ダイヤモンド・プリンセス」号では4日の夜まで乗客たちは船内を自由に行き来し、シアターやダンスホールなどの共有スペースも使用されており、食事もビュッフェ形式で提供されていた。感染源が香港の男性1人なのかどうかも特定できない、という複数の専門家による指摘もあった。
政府はそんなところに、感染していない乗客も含めて長期間監禁したのである。
ダイヤモンド・プリンセスというホットスポットを隔離施設にしてしまった厚労省
しかも、これは止むに止まれぬ措置というわけではなく、背景には厚労省の素人丸出しの錯誤があった。その証拠が「ダイヤモンド・プリンセス」号から乗客を19日以降下船させる判断を発表した際の厚労省の見解だ。
このとき、厚労省は武漢からのチャーター機帰国者を収容した「ホテル三日月」を引き合いに出し、「2月5日以降はチャーター機の帰国者が過ごした施設と同様の感染防止策がとられており、感染は広がっていないと判断した」とした。
しかし、前述したように、「ダイヤモンド・プリンセス」号は、「ホテル三日月」のような隔離施設ではなく、武漢と同じホットスポットなのだ。実際、アメリカなど各国はクルーズ船をホットスポットと捉えているため、自国の乗客を退避させたうえ、帰国後2週間、用意した隔離施設にとどめている。
ところが、日本は「ダイヤモンド・プリンセス」号を隔離施設としてとらえ、19日から下船した陰性の乗客を公共交通機関で帰路につかせたのだ。多くの乗客は自主的に隔離生活を送ると話しているが、厚労省や国がそれをサポートするような動きもいまのところ見られない。
しかも、下船直前に全員検査してから下船させるのかと思っていたら、かなり前に検査しただけで新たに検査しないまま下船・帰宅させている事例、帰宅後に厚労省から「2週間外出しないで」と連絡があった事例などが発覚。また陰性として下船しチャーター機でオーストラリアに帰国した乗客から2名が、帰国後陽性反応が出たと発表された。
さらに、もう一つの問題は、留め置き措置以降、乗客と同じく経過観察対象者であるはずの乗員を、隔離施設の職員のように、そのまま乗員として勤務させていたことだ。
乗員は個々の乗客よりも接触相手が多く、感染のリスクも高いと言ってもいい。しかも本来の勤務期間を超えた過重労働で疲労も溜まっているだろう。そんな感染の可能性のある人間に、食事の提供などサービス業務を続けさせていたというのは一体どういう判断なのか。先週乗船した櫻井滋・岩手医科大学教授は「感染には二回の波があった」「最初はパーティーやビュッフェなどの乗客同士の交流だったがその後、乗員のサービスの提供で広がったと推定される」と指摘している(東京新聞2月20日付)。実際、感染研の報告書でも、10日以降に乗員の感染が拡大している。
そう考えると、いま議論になっているグリーンゾーンとレッドゾーンのゾーニング以前に、そもそも本当にグリーンゾーンと呼べる場所が船内にあったかどうかも怪しい。船内の杜撰な感染管理を告発した岩田健太郎・神戸大学教授は、対策本部を船外に移すべきと主張していたが、まさにそのとおりだろう。
「犠牲者を出さない」より「感染者を排除しろ」という安倍政権の姿勢
それにしても、政府はなぜ、感染拡大を誘発するようなこんな支離滅裂なことをやっているのか。要因は様々あるだろうが、いちばん根底にあるのは、「感染者を守る」のでなく「感染者を排除する」という意識だろう。
感染者を守る・犠牲者を出さないという見地に立てば、前述したように、5日の時点で、感染がどれだけ広がっているか把握できていないクルーズ船からは、まず全員検査、全員退避させることを考えるべきだ。全員検査をするのに時間がかかる、収容施設がすぐに見つからないのであれば、高齢者、基礎疾患のある人、症状の出ている人など、専門家の見地にしたがってスクリーニングし、リスクの高さに応じて優先順位を決め検査、退避させることはできただろう。前述したように、そうしていれば、昨日死亡した2人の乗客が助かっていた可能性は十分にある。
しかし、政府のやっていることや安倍首相取り巻きの政治家たちの主張は、まったく逆。水際対策だけに異常なまでに固執し、国内感染を想定した対策をまったく取らない。これは、単純に知識不足とか判断ミスというより、根底に排除の意識があるからだ。
極論を言えば、武漢の人が全滅したとしても、クルーズ船内で全員感染したとしても、日本国内に上陸さえさせなければいいと思っているのだ。
だからこそ、政府は体調も考慮せずホットスポットに14日間も留め置くという非人道的な措置を平気でおこない、メディアも多くの国民も国内に感染を広げないためには仕方ないと大した批判の声もあげなかった。
それどころか、いま、日本社会では新型コロナをめぐる差別発言、感染者攻撃がまかりとおっている。中国人に対する差別がひどいのはもちろん、日本人同士でもマスクをせずに咳をしていただけで通報されたり、言い争いになるという事件も起きている。持病を持つクルーズ船の乗客に対し、“病気なのにクルーズ船に乗った自己責任”などと罵る言説も見られた。すでに市中感染が発生しているにもかかわらず、メディアもいまだに感染経路の追跡に固執し、犯人探しのような様相すら呈し始めている。
ウイルスはどんな人にも感染のリスクがあるのに、まるで感染はその人の自己責任かのように切り捨て、攻撃する。実際は、感染者を守る視点の欠如こそが、検査・治療体制の整備を遅らせ、感染を拡大させているにもかかわらず、生活保護バッシングと同じようなことが繰り広げられているのだ。
新型コロナは、安倍政権と日本社会の全体主義的体質を改めて浮き彫りにしたと言えるかもしれない。
全体のために一部の犠牲を厭わない。新型コロナは、安倍政権と日本社会の全体主義的体質を改めて浮き彫りにしていると言えるかもしれない。
(編集部)
最終更新:2020.02.21 08:14
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