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『荒川強啓デイ・キャッチ!』終了の不可解、聴取率好調なのになぜ? 政権批判できる報道番組がまた消える…
不可解な終了をする『荒川強啓デイ・キャッチ!』(番組HPより)
本日、TBSラジオの看板番組である『荒川強啓デイ・キャッチ!』(月~金 15時30分〜17時46分)が終了し、24年の歴史に幕を下ろす。
『デイ・キャッチ!』は夕方の生ワイド番組として1995年4月にスタート。“聴く夕刊”をテーマに時事問題をはじめとしたニュースを掘り下げて取り上げ人気番組に。TBSラジオは2001年から個人聴取率1位(ビデオリサーチ調べ、首都圏)の座を守り抜いているが、『デイ・キャッチ!』が躍進の立役者的番組であったことは間違いない。
だが、今年1月に番組の終了が伝えられ、今月19日には『ACTION』という新番組がはじまることを発表。脚本家の宮藤官九郎やクリープハイプの尾崎世界観、Creepy NutsのDJ松永、作家の羽田圭介、ライターの武田砂鉄が曜日ごとにパーソナリティを務めることがわかった。
『デイ・キャッチ』終了の報には、リスナーから「『デイ・キャッチ』は人気番組なのにどうして終了するの?」と疑問の声が噴出。さらに、サンケイスポーツの記事によると、同番組は〈聴取率調査も好調〉としながらも、〈今後も続行する選択もあったが、複数の関係者は「中身は充実していたが、番組として大きな役割を終える時期が来た。新元号を前に、新たな番組を立ち上げたい」としている〉と報道した。これには伊集院光がTBSラジオの『伊集院光 深夜の馬鹿力』のなかで「それぞれに役目があるって、全然知らないから。『なんじゃそりゃ?』と思うわけ」と疑義を呈した。
聴取率は良いのに、元号変更を持ち出して「大きな役割を終える時期」というのは、さっぱり意味がわからない。しかも、荒川自身も、番組終了については深く語っていない。現に、21日の放送では「消えた留学生問題」の解説で電話出演した常見陽平が「リスナーからも声が来ててですね、消える『荒川強啓デイ・キャッチ!』、どうするんだってことですよね」「TBS(ラジオ)のみなさん、出演者のみなさん、説明責任あると思いますよ」と言及すると、荒川は「そうですよね」「ぼくも訊きたいところもたくさんあるんですけども」と返答。リスナーだけではなく、荒川も番組終了に納得していない様子を滲ませたのだ。
一体、どうして番組は終了してしまうのか──。そこで囁かれているのが、「政権に批判的な番組だから潰されたのでは?」という見方だ。
実際、『デイ・キャッチ!』は、ラジオ界のなかでも安倍政権の問題に鋭く切り込む数少ない番組で、とくに16時台のニュース解説では、安保法制や共謀罪、辺野古新基地建設などを積極的に取り上げ、ジャーナリストの青木理や毎日新聞専門編集委員の近藤勝重、社会学者の宮台真司といった曜日コメンテーター陣が痛烈な批判をおこなってきた。とくに、“『デイ・キャッチ!』を聴く者こそ真の愛国者”と豪語していた宮台は、安倍政権の政治家たちやネット右翼に対して「クズ」「ケツ舐め」「ウヨ豚」などと容赦ない言葉を連発してきたことでも有名だ。
また、2015年には宮崎駿監督が録音出演し、「(安倍首相は)もう少し腹になんか複雑なものをかかえて、何かをやらないと……。そのとき、平和憲法がとても役に立つんですよ。『俺たちはこの憲法を守らなきゃいけないんでね、そっちにいきたくてもいけないんです』ってね」と安倍政権批判と憲法9条改正に反対の意志を示したことも大きな話題を呼んだ。
『デイ・キャッチ!』終了で政権批判できる報道番組がまた姿を消す…
一方、新番組の『ACTION』は、パーソナリティの顔ぶれを見ても、武田砂鉄を除いてはこうした報道色はまったく感じられない。TBSラジオも番組について「パーソナリティーやゲスト、リスナーたちが『やってみた/やってみたい』というさまざまなACTIONを持ち寄り、呼びかけ、連鎖していくプラットフォーム」と説明しており、『デイ・キャッチ!』の終了によってこれまで築き上げたニュース枠を廃止する方針であることは間違いない。
そして、こうした安倍政権の批判をしっかりおこなうラジオ番組が、だんだんと消えていっているのは事実だ。
たとえば2017年には、パーソナリティの吉田照美が政権批判を語ってきた平日帯のワイド番組『飛べ!サルバドール』(文化放送)が終了。番組名や時間帯を変えながら36年半の長きにわたってつづいた吉田照美担当の平日帯番組を文化放送はなくした。この編成について文化放送は「さまざまな要素から総合的に判断した」と発表したが、吉田本人は「もうちょっと続けたかった」とコメントし、このときも圧力もしくは政権への忖度なのではないかと噂された。
しかも、TBSラジオは『デイ・キャッチ!』にかぎらず、他のラジオ局にくらべても報道に力を入れ、定評を得てきた。にもかかわらず、どうしてその姿勢を代表してきた『デイ・キャッチ!』を終了させ、夕方のニュース枠を廃止するのか。──取材してみると、その背景に浮かび上がってきたのは、三村孝成・TBSラジオ社長の方針だ。
三村社長は大手広告代理店やJ−WAVEを経て、2005年にTBSラジオ&コミュニケーションズ(現・TBSラジオ)に入社。2018年6月に社長に就任すると、大胆な改革を打ち出してきた。
その最たる例が、“聴取率を気にするのはナンセンス”発言だ。
三村社長は昨年11月の定例会見で「スペシャルウィーク」の廃止を発表。ラジオ局では、ラジオ聴取率調査週間をスペシャルウィークと位置づけ、各番組で豪華ゲストを呼んだり、リスナーへのプレゼント企画をおこなうなどしているが、三村社長は「年52週のうち、6週間しか調査されないデータを金科玉条のように気にするのはナンセンス」とし、聴取率ではなくネット聴取サービスである「radiko」のデータを注視するよう社内に通達。その上で、2001年から誇ってきた聴取率ナンバー1の記録について「これからはもう言いません」と宣言したのだ(日刊スポーツ2018年12月5日付)。
荒川強啓、宮台真司は何を語る? ついに最終回の『デイ・キャッチ!』
「三村氏は広告代理店出身らしいというか、“自分はこんな改革をした”とアピールすることに必死で、『デイ・キャッチ!』が代表するような、TBSラジオの武器でありリスナーから支持されてきた報道路線の重要さには目を向けない。新規リスナーの開拓は大切ですけど、それでこれまで支えてきてくれたリスナーを簡単に切り捨てるのはどうなのか?という声や、自由な報道が守れなくなるのではないかと不安視する声は社内でも起きている」(TBSラジオ関係者)
一方、安倍政権のメディア選別はラジオにも及んでいる。実際、2016年におこなわれた参院選ではラジオ局の個別インタビューを拒否し、ニッポン放送を指名して同局の取材にだけ応じた。この一件にかぎらず、安倍首相はニッポン放送が放送する辛坊治郎や青山繁晴、須田慎一郎といった“安倍応援団”の番組にばかり出演。テレビと同様、御用メディアを偏重しているのだ。もちろん、安倍政権擁護やリベラル叩きデマを垂れ流すラジオ番組も数多い。
テレビ以上にラジオには報道の自由があるにもかかわらず、いま、政権批判をおこなうニュース系帯番組は、文化放送の『大竹まこと ゴールデンラジオ!』やJ-WAVE『Jam the WORLD』、TBSラジオの『荻上チキ・Session-22』と『デイ・キャッチ!』くらいだ。そして、その数少ない番組のひとつが、きょう消えてしまう。──自由な言論を守ってきたパーソナリティの荒川は、最後にどんな言葉を語るのか。ぜひ、本日出演するコメンテーターの宮台には報道番組の“政権ケツ舐め”状況に檄を飛ばしてほしいと思うが、果たしてどうなるか。きょうの放送に注目してほしい。
(編集部)
最終更新:2019.03.29 03:22
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