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安倍政権はやっぱり共謀罪を治安維持法にするつもりだ! 金田法相が「治安維持法は適法」と明言、処罰対象も次々拡大
自民党HPより
先週、「平成の治安維持法」と呼ばれる共謀罪法案が参議院で審議入りした。懸念されるのは、濫用によって一般市民が取り締まりの対象になることだ。
政府はこれまで処罰対象を「組織的犯罪集団」に限ると説明してきた。しかし、これは嘘八百で、一般人も対象となりうることが国会答弁で明白になっている。
6月1日の参院法務委員会では、法務省の林眞琴刑事局長が「構成員でない者についてもテロ等準備罪の計画の主体になりうる」と答え、対象を「組織的犯罪集団」の構成員に限るという要件は完全に崩れた。しかも見逃せないのは、同委員会で金田勝年法相が「組織的犯罪集団の構成員ではないが、組織的犯罪集団と関わり合いがある周辺者」という概念を新たにもち出し、「処罰されることもありうる」などと明言したことだ。
言うまでもなく「周辺者」なる概念は曖昧で、いくらでも恣意的解釈が働く。たとえば、米軍基地反対運動に組織的犯罪集団とみなす者がひとりでもいれば、他の参加者を全員、その周辺者としてしょっぴくことができるというわけだ。
まさに、処罰範囲の拡大解釈によって、党派性なく反戦運動に参加した一般市民まで対象とし、国民の思想と生活を弾圧した治安維持法の再現である。
しかし、驚いたことに、安倍政権はそもそも、治安維持法を悪いものとはとらえてないことが明らかになった。金田法相は、2日の衆院法務委員会で、共産党の畑野君枝議員から治安維持法の認識を問われ、「適法だった」「謝罪の必要はない」と言い切ったのである。
「治安維持法は当時、適法に制定されたものでありますので、同法違反の罪に関わります拘留・拘禁は適法でありまして、または同法違反の罪に関わります刑の執行も適法に構成された裁判所によって言い渡された有罪判決に基づいて適法に行われたものであって、違法があったとは認められません。したがって、治安維持法違反の罪に関わる拘留もしくは拘禁または刑の執行により生じた損害を賠償すべき理由はなく、謝罪及び実態調査の必要もない」
この大臣は過去への反省がまったくないのだ。そもそも治安維持法は、制定された1925年には「国体の変革」(天皇制から共和制への意向など)と「私有財産制度の否認」を目的とした結社を取り締まる法律で、念頭にあったのは共産主義や社会主義の運動だったが、適用範囲の拡大を繰り返して、共産主義とは無関係の市民まで弾圧するようなった経緯がある。
金田法相が「適法」と評価した治安維持法の実態
たとえば、1928年の法改正では、最高刑を死刑とする厳罰化とともに「目的遂行罪」が設けられた。これによって、共産主義運動などに資すると見なされればあらゆる行為が処罰の対象となり、30年代前半には検挙者数が激増した。なお、この改正と前後する共産主義者の一斉検挙(3・15事件)の際などの激しい暴行については、本サイトでも以前、小林多喜二の小説を紹介しながら取り上げている。
【“現代の治安維持法”共謀罪が審議入り! 権力批判しただけで逮捕虐殺された小林多喜二の悲劇が再び現実に!】
そうして日本共産党(とその目的に関連すると見なされた組織)を壊滅した治安維持法は、戦争へ突き進む政体とともに、さらなる運用の変貌をみせる。反戦・民主主義運動を新たな“敵”として創出し、これを取り締まったのだ。表現の自由の大家として知られる法学者の故・奥平康弘東京大学名誉教授は、30年代後半における治安維持法の「拡大解釈」についてこう記している。
〈第一は、反ファシズム・統一戦線とのかかわりのある組織と運動への治安維持法の適用である。当局はこのばあい、反ファシズム・統一戦線というのは、コミンテルンの命令するものであるから、すなわち日本共産党の活動の一貫であると強調する。けれども、当時の実情にてらしても、またのちの歴史からみればますます明らかに、日本の反ファシズム・統一戦線なるものは──もしそう称しうるものがあったとすれば──日本共産党の活動でもないし、等を支援する目的の活動でもなかった。市民的自由をまもり、民主主義を擁護しようとする試みであった。〉(『治安維持法小史』岩波書店)
奥平氏は〈反ファシズム・統一戦線への治安維持法の適用は、このゆえに、同法が民主主義・自由主義へ適用されたことを意味するものにほかならなかった〉と続けている。天皇制の護持と私有財産否認の思想の壊滅を目的とし始まった治安維持法は、一般市民によるごく自然な反戦・民主主義運動の弾圧に利用されたのだ。
さらに労働組合はもちろんのこと、右翼団体や宗教団体、司法関係者、役人、あるいは学者、編集者、芸術家なども次々と検挙されるなど、適用範囲は底が抜けた状態になる。41年の改正(いわゆる新治安維持法)では悪名高き予防拘禁制度が生まれた。これは2年の期間が設けられていたが、実際には無期にわたる拘禁を容易に科すことのできるものだった。
ようするに、金田法相はこうした拡大的解釈・適用によって極めて深刻な思想弾圧や人権侵害をもたらした治安維持法を「当時は適法だった」の一言で済ませようとしたのである。民主主義国家の法務大臣としての資格が皆無と言わざるを得ないが、さらに強調しておかねばならないのは、この治安維持法ですら、政府は成立当初は“一般市民が対象になることはあり得ない”と説明していたという事実である。
治安維持法制定当時の法相も「一般人には及ばない」と
実際、1925年3月、当時の小川平吉司法相は貴族院で「無辜の市民まで及ぼすというごときことのないように十分研究考慮いたしました」と述べている(朝日新聞3月15日付)。
また治安維持法は、その前年に廃案となった過激社会運動取締法案(1922年)と異なり、すべての犯罪は「目的罪」であり、「国体若ハ政体ヲ変革シ又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ」為される行為に処罰を限定するのであって、警察の権限濫用は大幅に抑えることができると説明された(平岡秀夫、海渡雄一・共著『新共謀罪の恐怖』緑風出版)。
まさに、この間の共謀罪法案の説明で、安倍首相が「一般の方々がテロ等準備罪の捜査の対象になることはない。テロ等準備罪は犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定している」(5月8日衆院予算委)などと強弁し続けてきたのと酷似していると言わざるをえない。
しかも前述したように、その「一般人は対象にならない」との政府説明は、すでに明確な破綻をみせている。実際、金田法相は5月29日の参院本会議でも一般の市民運動が対象になりうると暴露していた。
「環境保護や人権保護を標榜していても、それが隠れみので、結びつきの基本的な目的が重大な犯罪を実行することにある団体と認められる場合は処罰されうる」
こうした「隠れみの」や「周辺者」という曖昧性、あるいは「認められる」という恣意的解釈が示すものこそ、共謀罪が「現代の治安維持法」たりうる証明に他なるまい。絶対に廃案とする。それ以外に歴史を繰り返さぬ手立てはないのだ。
(編集部)
最終更新:2017.12.04 04:18
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