マスコミは全然報じないが、安倍首相のウソと詐術のトンデモ答弁がますますヒドいことになっている!

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自由民主党HPより


 ワイドショーのみならず、NHKのニュースまでもが取り上げたSMAP解散問題。しかしメディアあげての大騒動の恩恵をもっとも受けているのは、じつはこの人、安倍首相だろう。

 安倍首相は19日の参院予算委員会で、「多くのファンの方々の期待、願いに応えてグループが存続するということはよかったのではないか」とニヤニヤと笑いを浮かべながらSMAP解散について語り、それをニュース番組は大きく報道。平和ボケとはまさにこのことだが、SMAPの陰で安倍首相はテレビが国会審議の内容に踏み込まないのをいいことに、国会でウソと暴言を連発している。

 その最たる例が、1月8日の参院予算委員会で飛び出した、あの「妻のパート月収25万円」発言だ。

 大事なことなのであらためておさらいしよう。この日、民主党の山井和則議員から“第二次安倍政権における実質賃金の減少率の高さ”を指摘された安倍首相は、「景気が回復し、そして雇用が増加する過程においてパートで働く人が増えれば、一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけであります」と言い、こんなたとえ話をはじめた。

「私と妻、妻は働いていなかったけど、景気が上向いてきたから働こうかということで働きはじめたら、私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増えるわけでございますが、2人で働いているわけですから、2で割って平均は下がるわけです」

 そもそも、「景気も上向きだし、パートに出ようかしら」などと呑気な理由で働きに出るという“設定”自体がボンボンの発想すぎて唖然とさせられるが、「妻が25万円」というさらなる現実離れした月給に、「いまの世の中、パートで25万も稼げるわけないだろ!」と最大のツッコミが寄せられた。ちなみに、直近(15年11月速報)のパート労働者の平均月収は8万4000円である。

 そして当然ながらこの発言には批判が集中するのだが、今度は「私はパートで妻が25万円と申し上げていない」などと悪びれることなく開き直った安倍首相。しかも、「言っていない」ことの根拠として挙げたのは、こんな話だった。

「たとえば、インターネットの中で私を批判している方たちのなかには、この『妻が働きはじめている』にカッコをしてパートと書いてあるんですよね。私、言っていませんから。カッコをしてパートと書かなければ、この文脈のなかでは読めないのかなと思います」

 どこをどう考えても文脈読めてないのはあなたのほうだろ、と言いたいが、それにしても呆れるのは、答弁のレベルの低さだ。以前、本サイトが報じたように、安保法制反対デモが盛り上がっていた際には「今は昔と違ってインターネットがある」などとネット民頼りだったのに、今度はネットでの自分への指摘を、よりにもよって国会の答弁で批判の材料にしてしまうとは……。

 批判を批判として受け止めることなく、一方で自分にとって都合のいいデータだけを根拠にしてウソを垂れ流す──。これは安倍首相の十八番と言うべきやり口だが、今国会で安倍首相の口から出てくるのはウソばかり、まるでデマの見本市のような状態だ。

 そのひとつが「有効求人倍率」の問題だ。安倍首相は13日に「民主党政権よりも安倍政権で有効求人倍率は改善している」と胸を張り、「働いている人の絶対数が増えた結果」と得意満面に説明。そして安倍首相がお決まりでもち出すのは高知県の例で、昨年11月の自民党立党六十年記念式典でも「高知県は初めて有効求人倍率が一倍に到達した。おめでとうございます。県庁で祝杯を挙げたそうだ」などと述べていた。

 だが、この「高知県の有効求人倍率1倍」にはカラクリがあった。東京新聞の記事によれば、高知県では若い働き手は条件のいい職を求めて都市部へ流出、たんに求職者自体が減少しているだけだったのだ。しかも県内の仕事は非正規が多く、〈正社員のみの求人倍率は昨年十一月で〇・五六倍。全国で沖縄県に次いで低い〉という実情。安倍首相が語った「県庁で祝杯を挙げた」という話についても、高知県の雇用担当者は「祝杯なんて聞いたことがない。都市伝説ではないか」と述べている。

 さらに、高齢者への3万円臨時給付問題でも、19日の参院予算委員会で野党から「高齢者より子育て世代や学生の奨学金に回すべき」という批判があがると、安倍首相は「高齢者層は、他の年齢層に比べ、消費性向が高い傾向にあります」と言い出した。

 高齢者の消費性向が高い……? この安倍首相の答弁には首を傾げた人も多かっただろうが、すぐさま民主党議員も「子育て世代のほうが消費が活発で景気の下支えになる」と反論。こんな詭弁で安倍首相は参院選への投票を見込んだバラマキを正当化してしまったのだ。

 しかし、もっとも悪質なウソといえば、待機児童の数をめぐる議論だろう。安倍首相は昨年11月、読売国際経済懇話会で、やはり得意気にこんな話を披露した。

「今年、待機児童は前年より増えてしまった。安倍政権発足以来、女性の就業者が90万人以上増えたから、無理もないことであります」「その意味で嬉しい悲鳴ではあるのですが、待機児童ゼロは必ず成し遂げなければなりません」

 だが、この発言を国会で取り上げた民主党の山尾志桜里議員は、“25〜44歳という女性にとって子育て期の働く女性の数の推移は、この6年間ほぼ横ばい”というデータを突きつけた。しかも14年から15年にいたっては減ってさえいて、女性就労者94万人増加の要因は65歳以上(54万人増)なのだ。

 つまり安倍首相は、「働く女性が増えたから待機児童が増えてしまったよ〜」と得意気に語っていたものの、実態は65歳を超えても働かざるを得ない高齢者の貧困化、待機児童問題の放置、さらに働き盛りの世代が就業することの厳しさを物語っているだけだったのだ。

 このように自身がデマ製造機であることを次から次に明らかにされてしまった安倍首相だが、その態度はふてぶてしいまま。たとえば、「パート月収25万円」発言について前出の山尾議員から「一般の女性、主婦、子育て世代の感覚と、本当にずれまくっている」と真っ当な指摘を受けたときも、「私の発言を強引にすり替えている」と反論、「枝葉末節な議論はもうやめたほうがいい」などと言い出した。無論、話をすり替えているのは、「私の話をすり替えている!」などとヒステリックに騒いで煙に巻く安倍首相のほうである。

 一体、どうしてこの人は恥ずかしげもなく、堂々とウソばかり喋れてしまうのかと呆れかえってしまうが、あっけにとられている場合ではない。国会では「消費税増税分は間違いなく社会保障に充てます」などと当然の話をしたり顔で語っていたが、その増税で導入される軽減税率の財源確保のために削られるのも社会保障費だ。

 現に、公明党の肝いりではじめた「子育て世帯臨時特例給付金」は、軽減税率の財源確保のために16年度で廃止される方針であり、介護保険制度において「要介護1、2」に認定された軽度者向けの生活援助サービスも保険給付対象外にする方向だという。その一方で、国家公務員の給与引き上げで約756億円もの血税を投入することや、「三世代同居支援」などという伝統回帰のためのトンデモ事業が可決・成立されてしまった。

 きっと安倍首相は、この国の実態に何の関心もないのだ。実際、1月18日の参院予算委員会で安倍首相は「日本はかなり裕福な国だ」などと悪びれることなく言いのけている。

 これはウソもウソ、大ウソだ。厚労省が12年に発表したデータで、日本の相対的貧困率は16.1%、子どもの貧困率も16.3%と過去最低を記録。先進国が加盟するOCDE(経済協力開発機構)の統計でも日本の相対的貧困率はワースト6位だ。また、内閣府がまとめた「子ども・若者白書」(14年度)でも、〈子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高い〉と指摘されている。

 まあ、公邸という“社宅”があるにもかかわらず入居を拒否し、渋谷の一等地に建つ賃貸なら月60万円近い高級マンションに暮らす安倍首相には、貧困家庭の実態など、理解しがたく実感のもてない“別世界”の話なのだろう。だから、データとして表れている明白な貧困率の上昇という事実を安倍首相は無視し、GDPに話をすりかえて「日本はかなり裕福な国」と妄言を吐くのだ。

 今日の施政方針演説では、正社員と非正規労働者の「同一労働同一賃金」や、「介護サービスの人材25万人育成」などを目標として盛り込むとされているが、今国会でつきまくったウソを振り返ると、格差是正や福祉充実の重要性をこの人が理解しているとは、到底信じがたい。

 ちなみに安倍首相は、社民党・福島瑞穂議員が緊急事態条項を「ナチスの授権法とまったく一緒」と批判したことを、「限度を超えた批判だ」と国会でブチ切れていた。が、これは福島議員の言うとおりで、実際に緊急事態条項は宣言さえ出してしまえば何人も国の指示に従わなければならなくなるシロモノで、国民の権利を著しく制限、政府の統制下に置くことで戦争邁進の道具立てにする物騒なものである。

 だが、国会で福島議員がいくらその危険性を訴えても、メディアは「また福島瑞穂が暴走」と言わんばかりに報道し、肝心の緊急事態条項の検証さえ行わない。それは今回取り上げた、今国会における安倍首相の大ウソすべてにも同じことが言える。もし、ニュース番組で「日本は裕福な国」「パート月給25万円」という安倍首相の妄言が大きく取り上げられていれば、国民のあいだから「そんな馬鹿な話があるか!」と怒りの声があがっているはずなのだ。

 つまり、安倍首相はこう考えているのだろう。「目障りなキャスターもことごとく降板させられたし、メディアは抑え込んだ。もう何をやっても喋っても平気」と。──SMAPで騒いでいる他方で、この総理はますます増長しているのだ。ここにきて発覚した甘利明経済再生相の現金供与疑惑も、SMAP騒動により雲隠れできるとでも思っているに違いない。

 俳優の伊勢谷友介は昨日、Twitterで〈あほくさ。スマップの事なんかより、未来において大事な選択肢が国会で選択されてる〉〈人が求めるからだというエクスキューズで、大事な事から目をそらし、どうでもいい事に、注視させるメディアに、どんなリテラシーがあるんだろうか。。。〉とメディアを痛烈に批判した。まさに正論と言えるが、これからの国会、そして甘利経済再生相のスキャンダルはどうなるのか、リテラシーを失った大メディアに代わって今後も本サイトでは注視していきたい。
(水井多賀子)

最終更新:2017.02.13 07:22

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