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南京虐殺世界遺産に抗議の自民党・原田委員長が荻上チキのラジオで「虐殺は捏造」と断言! ネトウヨのデマ信じる浅薄ぶり晒す
左・TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』公式サイトより/右・衆議院議員 原田義昭公式サイトより
今月、中国が関連資料をユネスコに申請、世界記憶遺産に登録された「南京大虐殺」。安倍政権はこれに「政治利用だ」とはげしく反発し、ユネスコの改革や日本政府のユネスコに対する拠出金の凍結を検討していると報じられている。
もちろん、この背後には、安倍政権=自民党の歴史修正の意志がある。連中は表向き「中国の政治利用」「ユネスコの不透明性」などといったもっともらしい大義名分を並べているが、実際は南京大虐殺という歴史的事実を隠蔽し、否定しようと躍起になっているのだ。事実、自民党で歴史認識問題に取り組む「国際情報検討委員会」の原田義昭委員長は世界記憶遺産登録前に、「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国はいまや否定しようとしている」と、その意志を露わにしていた。
ところが、このグロテスクな安倍政権の真意を取り上げたのは、本サイトなどいくつかの小メディアのみ。新聞・テレビはまんまと官邸・外務省に乗っかり、TBSやテレビ朝日のニュース番組までがユネスコ批判を展開する有様だった。
しかし、ここにきて、TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』が、その南京大虐殺の記憶遺産認定に批判を続けている原田委員長に直撃し、荻上チキ氏によるロングインタビューの模様を22日に放送。その結果、自民党や原田委員長が南京大虐殺について基本的な知識すら持っておらず、ネトウヨ並みの感情論でしかものを言っていないことが露わになってしまったのだ。
まず、原田氏は、中国が申請した南京大虐殺の内容について「客観的な歴史事象に照らされたものではない」「日本は捏造も含めてとても認められないと言ってきた」としたうえで、分担金の当面停止・削減等の「サンクション」(制裁)を声高に主張する。
「日本は一番大きな(ユネスコの資金の)分担国でありながらですよ、その日本の意見を聞かないで、こういうような、国益を傷つけるようなことが堂々と行われているっていうのは、そりゃ日本人としては怒るのが当たり前であって」
例の“金を出しているんだから言うことを聞け!”(一番金を出しているというのは嘘だが)という、なんとも幼稚で下品な物言いだが、まあ、これは菅義偉官房長官らも一斉に口にしていることなので驚きはない。
唖然としたのは、その後、南京大虐殺の被害者数についての認識を問われた時の原田氏の受け答えだった。
原田氏は「私どもはこれが南京『虐殺』という評価には全く当たらない。虐殺というのは、組織的に国家ないしは権力が膨大な数の数千、数万の人間を殺すことを、国際法上の虐殺になっているんだけどね……」「だいたいあそこには十数万しか南京の市民が住んでなかった」と、述べたのだ。
あらためて念を押しておくが、1937年の南京陥落前後に日本軍が中国人捕虜や民間人を虐殺したことは、日本政府も認めている客観的事実である。当時の虐殺行為は中国側の被害者だけでなく、旧日本兵たちが少なくとも数千人規模の中国人捕虜を集めて機関銃で殺害したことなどを証言している。
また、第一次安倍政権時の2006年、安倍首相の訪中によって実施合意にいたった日中歴史共同研究でも、日本側が論文に〈日本軍による捕虜、敗残兵、便衣兵、及び一部の市民に対して集団的、個別的な虐殺事件が発生し、強姦、略奪や放火も頻発した〉と記している。
人数についても、中国側が主張する30万人(これは1947 年の南京戦犯裁判軍事法廷に依拠した数字である)は否定したものの、日本側も〈研究では20 万人を上限として、4万人、2万人など様々な推計がなされている〉と、最低でも2万人の虐殺を認めている。
「南京虐殺はなかった」という、“虐殺まぼろし”論は一部のネトウヨや狂信的極右学者、右派メディアが叫んでいるだけで、保守系歴史学者の間でも相手にされていないトンデモ陰謀論なのだ。
しかし、原田委員長は今回のインタビューで、そのネトウヨと同じように「数千人の『虐殺』には当たらない」と強弁したのである。
しかも、原田氏の強弁はなんの根拠もないものだった。「十数万しか住んでなかった」などと言いながら、荻上氏から当時の南京氏の人口についての統計データを読んだことがあるのかと聞かれると、具体的なデータについてまったく答えられずしどろもどろに。そのうえで「あれだけの人数が虐殺されたとすれば当時の新聞が書いているはずだ!」と主張するのだが、これも荻上氏から、南京陥落直後に当時の米紙ニューヨークタイムズやワシントンポストなどが南京での日本軍の捕虜殺害や民間人への残虐行為等を報じていることをあっさり指摘されてしまう。
そして、困り果てた原田氏は慌てながら、こんな珍説まで披露し始めた。
「……なんかいかにも日本が戦争を起こして、それに対して、そのー、謝らなければならない、反省を強いられる、ということについてはですね、さまざまな、これは議論があるところであります。まああの、よく東京裁判史観という言葉ありますけども。東京裁判というのはもっぱら日本の、侵略というだけで、戦争が起こったと、まあ(そう)いうようなね、ことから当然、東京裁判自身はですね、まあそのー、日本のね、断罪されたかたちになってます。私は、そこはゼロではないとは思いますけど、まあ同時に、あとでマッカーサーまでもがね、『これは明らかに日本の自衛のため戦争だった』と(証言した)。そのへんの東京裁判史観が総括されないまま今日があるのも事実なんです」
要領を得ない原田氏の説明だが、ここでも原田氏は荻上氏から間違いを指摘されてしまう。
「マッカーサーのその言葉は誤訳なんですけれども。実際は『自衛のための戦争』というニュアンスの言葉ではないんですね」
荻上氏の言うとおり、「日本の戦争は自衛戦争だとマッカーサーが証言した!」というのは保守界隈で定番の“誤読ネタ”で、もちろんそこには太平洋戦争を肯定したいという欲望がある。だが、原文の発言全体を読めば普通に誤りだとわかり、一般的な歴史学者は相手にしない説だ。
誤解を指摘された原田氏は、原文を読んだことがなかったのだろうか、「ああそうですか、まあまあまあ──」と被せてうやむやにしようとするが、荻上氏はさらに、質問を続ける。
「話を少し戻しますと、ということは先ほど『私たちとして』という話を、主語として使われたのですが、これは自民党として南京大虐殺、あるいは虐殺という言葉を使うこと自体が問題だというふうにメッセージを出していくということになるんでしょうか?」
すると、原田氏はこう答えた。
「私は、あのー、そのように理解していただいていいと思いますね」
そう。原田は“自民党として「虐殺」を否定している”と明言してしまったのだ。さらに、政府・外務省が殺害行為などがあったことは事実だと認めていることについてはどう考えるのか、と問われると、こんなことを語り始めた。
「まあ、あのー、表現にもよりますけどね。まあそれこそね、いまの時代だってですよ? あのー、事件の、殺害ということは行われてますからね。まあしかし、戦中のですね、一番難しいときですから。混乱したときだからね」
戦争犯罪と現代の日本で起きている犯罪事件をいっしょにしてしまう無茶苦茶ぶり。普通は意味不明すぎて閉口してしまうが、しかし、荻上氏は根気よく質問を続ける。
「その場合の『混乱』とは個々人の兵士が勝手にやったということですか?」「『組織的ではない』というのは命令書があるなしの問題なのですか?」
「部隊による捕虜の殺害はどうでしょうか?」
一方の原田氏は、「あのー、そのー、それはー」と言い淀み、苦し紛れに「厳格には申し上げませんけどね」「個別にはコメントできない」などと言って、質問から逃れるのが精一杯。しかし、それでも、「(虐殺は)全体的には捏造だったと思っているということですか?」と突きつけられると、「はい、そうそう。間違いなく捏造だと思ってます」と言い張ったのであった。
まさに話せば話すほど、なんの根拠もないネトウヨ丸出しの強弁であることが明らかになってくるのだが、しかし、それも当然だろう。そもそも、原田氏率いる自民党の国際情報検討委員会は「国際情報検討委員会・日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会合同会議」なるものを開催して、「南京大虐殺」や慰安婦問題を検証しているのだが、そこに招聘したのが、トンデモ極右学者だったことが、やはり同番組で明らかになっているのだ。
荻上氏が、これまでの委員会や勉強会に一体誰を呼んだのか、と追及したところ、当初、原田氏は具体的名前を出し渋っていたのだが、荻上氏が「先日会見では高橋史朗さんの名前が」と指摘すると、渋々、秘書に向かって「おい、ちょっと、高橋史朗がつくった報告書をもってこい。あんときに配ったろ」と、同会議に高橋氏を招聘したことを認めたのだ。
高橋史朗・明星大学教授といえば、科学的根拠がないと散々指摘されている「親学」の第一人者。しかもこの報告書で参照されているのは、東中野修道・亜細亜大学教授の著書。東中野氏は「南京大虐殺はまったくなかった」論の急先鋒で、保守派の歴史学者でも実証性を重んじる秦郁彦氏などからも批判されている人物だ。ちなみに両者の専門分野は、高橋氏が日本教育史、東中野氏が日本思想史やドイツ史で、歴史学は専門でもなんでもない。
もうお判りだろう。自民党はとにかく結論ありきで、虐殺否定派のトンデモ極右学者の言うがままに、なんの根拠もなく「南京大虐殺は捏造だ!」とがなっているのだ。そして、中国の政治利用を批判しながら、自分たちは露骨に世界記憶遺産の政治利用を図り、金を盾にして恫喝までしてみせる──。
原田氏はこのインタビューで「南京大虐殺なんてものを認めたら国民が国際社会に顔向けできない」と言っていたが、日本国民がいま恥をかいているのは、過去の戦争犯罪のせいではなく、こんなトンデモ歴史修正主義の連中が政権に居座っているからだ。
しかし、繰り返すが、現在もほとんどのマスコミは尻込みして、この自民党の無知蒙昧をまともに伝えようとしない。大手新聞もいまのところ『Session-22』での原田氏のトンデモ発言を報じないでいる。国際社会に恥を振りまく安倍政権にこのまま任せておいていいのか。マスコミの姿勢も含めて、われわれはよく考えるべきだろう。
なお、約1時間に及んだ荻上氏による原田氏のインタビューは、後日、『Session-22』のサイト上でその書き起こし全文が公開されるという。原田氏のトンデモ歴史認識っぷりと、鋭い指摘の数々をつきつけた荻上氏の妙技が十分に味わえるはずなので、ぜひそちらもご確認いただきたい。
(宮島みつや)
最終更新:2015.11.12 10:22
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