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発掘! 辻仁成が中山美穂との結婚、バーニングの圧力を小説に!
『刀』(新潮社)
中山美穂と辻仁成の離婚劇が未だに尾を引いている。7月8日に正式に離婚が成立したが、この離婚前に中山と音楽家・渋谷慶一郎の密会が報じられ、また、離婚に際しては息子の親権を辻が持つことが明らかになると、これまで中山に同情的だった世論が一気に変わってしまったからだ。
「中山の所属事務所は“芸能界のドン”こと周防郁雄氏のバーニングプロダクション傘下であるビッグアップル。今回の離婚報道も中山に優位になるようバーニングがコントロールしてきたが、いまでは頭を抱えている。当初は辻の『中性化』をマスコミにリークするなど、辻を悪者に仕立てることに成功していたが、その後の中山の暴走をコントロールできなかった。不倫に加えてマスコミに対しての悪態などもあり、最近では中山のイメージ悪化で芸能界復帰も絶望的などと見る向きさえある」(芸能記者)
これまで本サイトでもバーニングの情報操作を何度か取り上げてきた。そもそも離婚騒動発覚もバーニングサイドのリークであり、その後の辻バッシングもしかりだ。いや、今回だけでない。中山と辻が結婚する際、それを阻止しようとしたバーニングが辻バッシングをさかんに画策したことは関係者の間では知られた話だった。しかし、これはバーニングの威光にひれ伏すマスコミにとって、まるで伝説であるかのように密かに語られ続けてきたものだ。
だが今回、その“バーニング伝説”を裏付ける物証を発見した。それは、当事者である辻自身が書いた小説『刀』(新潮社)である。これが書かれたのは、中山との結婚から2年後の2004年。今や絶版となり入手も困難となっている『刀』だが、そこには結婚前の中山と辻に対する驚くべきバーニングの妨害工作、介入が描かれていたのだ。
『刀』は、1959年生まれの主人公の“トオル”の幼少期、青年期、そして小説家として成功するまでを丹念に描いた“愛”と“葛藤”の物語だ。だが、作品の中で描かれる主人公のトオルは、辻そのもの。生まれた年や場所も作者の辻とピタリと符合し、他にも父親の仕事の関係で各地を点々としたこと、大学時代にミュージシャンとなり、その後小説家として芥川賞を受賞、有名人との交際や、2度の離婚と3度の結婚を繰り返すとするなど、そこに描かれているのはまさに辻自身だ。『刀』は辻の半生を描いた“私小説”なのだ。
この私小説に中山美穂が登場するのは、前妻・南果歩(作中では千恵子)との離婚後。トオルの小説に映画化とその監督就任の話が持ち上がり、主役に岸ナナの名が挙がっていた。このナナこそ、中山がモデルと思われる女優である。この時点で2人はまだ出会っていないが、映画化に際して制作会社が慎重になるほど、ナナの所属事務所が“芸能界で最大勢力を誇っている”ことは知っていた。
〈スターアカデミーは芸能界、放送業界に絶大な力を持っていた。ナナはその会社は勢力を拡大し続けた時代の一つの神話であった〉
〈スターアカデミーには様々衆口が取り沙汰されていた。私が小説を連載していた週刊誌『S』が数回に渡って、闇の部分を追求する特集記事を載せていたが、芸能事に疎い私にその真偽など分かろうはずもなかった〉
文中に出てくる週刊誌『S』とは「サンデー毎日」のこと。当時、芸能界最大のタブーとされたバーニングの闇を「サンデー毎日」が異例の追求キャンペーンを行っている。
そんな状況の中、トオルは男性雑誌の対談で初めてナナと対面する。
〈撮影が終わり、食事に誘われ、最後のバーを出たのは明け方のこと。私が彼女を送ることになり、タクシーを拾い、方向を告げた。車が停車する少し前、ナナは私の手を上から強く握りしめた〉
その後、ナナはトオルの仕事場にやってきて、2人は恋愛関係になっていく。しかし2人の恋は普通とは違った。なぜならばナナの背後にスターアカデミーの存在がちらついていたからだ。
〈ナナが私の前に立ちはだかれば立ちはだかるほど、すれすれの危険を冒しているのではないかという不安や警戒心が増した〉
スターアカデミーに対しての漠然とした恐怖。しかも東京では人目もある。恋する2人はパリへと旅立った。そのパリで、ナナはトオルに結婚と出産をにおわす。
「もう恋はいいんです。恋とか愛とかそういう形ばかり気にしなければならないものはいらないの」
ナナはこの時、トオルに結婚したらパリで子どもを育てたいという提案をするのだ。早急なナナに尻込みするトオル。そんな2人の前に現れるのが、ナナのマネージャーである佐々木繁だ。このモデルは中山の所属事務所ビッグアップルのY社長のことではないかと見られるが、佐々木はナナという女優をつくり出し有名にした人物で、ナナにとっては肉親のような存在。しかし、同時に厳しい敵でもあったという。
この佐々木は、まず最初に、進んでいた原作映画でトオル自身が監督を務めることを反故にする。
〈原作者が映画を撮るのはよくないというテレビ局の、全くの正論を佐々木が私に伝えた〉
〈佐々木がテレビ局の代理となって、私を説得した。映画の企画をたてた制作会社の人間たちも、すでに蚊帳の外。テレビ局が動き、スターアカデミーが動いていたのである〉
プライドを潰されたトオルだが、さらにナナもトオルと一緒に映画をつくることをなぜか望まず、このように話す。
「監督なんてしなくていいと思います。むしろ引き受けないでほしい。あなたはもっと大切なものがあるから」「芸能界を知らない方がいい」「芸能界はあなたが生きる場所ではありません」
一体どういうことか? スターアカデミーを熟知していたナナは知っていたはずだ。自分と付き合い、そして仕事にまで絡んでくる人間は潰される。過去に付き合った男性たちは皆潰されてきた。でも、今度こそは幸せになりたい。だからこそ、トオルには芸能界から遠くにいてほしいと。
さらにその渦中、写真週刊誌に2人の関係がスッパ抜かれる。トオルの関係者の多くも「スターアカデミーに潰されるのではないか」「大丈夫か」と危惧し、トオルもその反応の大きさに不安を抱いて行く。
そんな喧噪のなかでもナナは一途だった。自分の夢は愛する人の子どもを生んで、誰にも邪魔されず、静かに暮らすことだというナナ。そしてトオルはナナに聞く。事務所についてどう思うのか、と。ナナは微笑んで「そのことははっきりと答えられる」と言ってこう告げた。
「いいですか、私がスターアカデミーなのです」
なんとも衝撃な一言である。芸能界に絶大なる影響力を持ち、牛耳る芸能プロがナナそのもの。自分は単なるタレントとしてコントロールされているわけではない。自分こそがザ・スターアカデミーであり、その影響力を行使できるのだと。そのやり口を熟知しているのだというのだ。
だからこそ、ナナはトオルに言い続ける。
「愛してくださるなら、覚悟をしてください」「野心を捨ててください。争いごとを避けて、無理をしない程度の仕事量にしてください。私や生む子供とつつましく向き合って、家族の傍にいてください。そうすればきっとあなたは幸福になる」
自分自身がスターアカデミーとさえ言い切るナナは、トオルがさらに芸能界に近づけば潰されること、いや、自分が潰すことになってしまうのを承知していたとも考えられる。そしてトオルに“覚悟”だけを要求した。
「あなたは文学の世界だけを大切にしてください」
トオルを、そして自分の夢見る幸せな生活を守るために、どうすればいいのかナナは理解していた。さらに、入籍を事務所に報告したいというトオルに対し、ナナは「私の仕事をあなたは何も知らないのだから、これから先も仕事には口を挟まないでほしい」と拒絶する。
──これまで大手芸能事務所による情報操作について語られることはあった。しかし、守られたはずの所属タレント側が、自分の恋人や夫に対する事務所の仕打ちをどう思っているのかといった心情が公になることは皆無だった。それが辻自身の作品で描かれていたことに驚く。
ともあれ、ナナもまた覚悟していたのだろう。スターアカデミーの意向に沿わない2人の結婚が明るみになるや、マスコミは一斉にトオルに矛先を向けていく。
〈私はここでも沈黙を守り、嵐が過ぎるのを静かに待った。それがナナとの約束、ナナが私に言った覚悟の正体なのである〉
結婚後、日本での生活はナナにとって過酷ものだった。連日の主演ドラマ撮影で睡眠時間が2、3時間。しかも常にマスコミの陰におびえながらの生活に、2人は疲弊しきっていた。仕事を辞めたいというナナにパリ移住を提案するトオル。パリで子育てをしたいと思っていたナナは興奮気味にそれに賛同した。
そして2人は芸能界を離れ逃げるようにパリへと旅立った。04年1月14日、2人の間に男子が生まれた。
……これが『刀』に描かれた、辻と中山のパリ生活にいたるまでのいきさつだ。
2人にはバーニングの陰が色濃く存在していたが、中山はそれを熟知していたからこそ、フランスでの生活を選び、そして芸能界から離れていった。離婚騒動の際、辻を“ろくに仕事をしないヒモ”などと揶揄したメディアもあったが、それは中山が望んだことでもあったのだ。
しかし、こうした困難、激流に立ち向かうほどの情熱をもって始めた2人の結婚生活は12年で終わりを告げた。──皮肉にも、パリでの結婚と子育てを迫った中山は東京にひとり戻り、辻は息子と2人でパリに残る決心をした。辻はいま、中山との結婚生活を振り返って、何を思うのだろうか。
(伊勢崎馨)
最終更新:2014.09.16 08:02
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