再放送でも話題『逃げ恥』はなぜ響いたのか? 星野源と作者・海野つなみが語っていたその理由

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 いわゆる安倍政権の「女性の活躍」とは、女性に“安い労働力”として社会進出を推奨する一方、家事や子育て、介護などの再生産労働を無償で押し付け、女性たちに二重負担を迫っている。社会はこの無償労働を「女性は家事が得意」「女には母性がある」などという社会的につくりあげられた性役割と「家族への無償の愛」という“尊さ”を女性たちに突きつけて、二重負担を正当化してきた。そういった愛情につけ込んだ女性への脅しを、『逃げ恥』は「搾取」として明確に俎上に載せたのである。

 これだけでも『逃げ恥』は、真正面から恋愛の問題を真摯に捉えていることがよくわかるというものだが、本作を際立たせている重要な要素はもうひとつある。それは、キャラクターを、その特性だけを取り上げてステレオタイプに描くのではなく、きちんと1人の生きた人間として描けているということだ。

『逃げ恥』の主要キャラクターは、皆かなり特徴的な設定をもっている。たとえば、平匡は人付き合いのあまり得意ではないSEで「プロの独身」を自称するいわばオタクである。みくりは大学院まで行ったものの就職活動には失敗し、なんとか見つけた派遣社員の仕事も派遣切りに遭い、無職となったためひょんなきっかけで「契約結婚」への道を踏み出している。

 他の主要キャラクターも、前述の2人同様いわゆるステレオタイプな表現の枠に捕われる危険性を大いに孕んだ設定をもつ。みくりの伯母である土屋百合(石田ゆり子)は外資系の化粧品会社でバリバリ働くキャリアウーマンながら、親族には「一生結婚できない」とも言われ、実際にアラフィフの「高齢処女」として描かれる。平匡の会社の上司である沼田頼綱(古田新太)はゲイ。同じ会社の後輩である風見涼太(大谷亮平)はイケメンで女性の扱いに慣れているがゆえに「チャラチャラして軽い」と見られがちな人間として設定されている。

 このように『逃げ恥』のキャラクター設定は、ともすれば差別的な描き方に収斂される危険性も十二分に孕む。しかし、毎週ドラマを見ている視聴者なら分かる通り、そういった設定がステレオタイプに描かれることは決してない。

 実は、それはドラマの制作陣が意識していた部分だった。今月4日にTBSラジオで放送された特別番組『『逃げるは恥だが役に立つ』大好きジェーン・スーが、原作漫画家・海野つなみ先生に恥を承知で聞いてきた!特番』のなかでコメント出演した星野源はこのように語っている。

「津崎平匡という役をやっていて思うのは、特に那須田(淳)プロデューサー、そして演出の金子(文紀)さんがですね、すごく役柄、設定にこだわりを持っていて。まず僕が衣装合わせとかに入った時に、たとえばパソコンオタクとか、SEという職業をやっているのでそういう部分はあるけれども、たとえば1人で生活をしていくということにすごく長けていて、ちゃんと生活力がある。そして、自分なりのこだわりがあって、たとえば服に無頓着ではなくて、しっかり自分の好きな服がある。そして、自分が好きなセンスの、たとえば家具とか、自分の趣味とか、しっかりある男であるっていうことをすごく気を使って衣装合わせもされていました。そして、小道具とか持ち物、そういうものも含めてすごくこだわって、一生懸命みんなで役作りというか設定を考えてやっていきました」

 出演者やドラマ制作陣が細心の注意を払って類型的な表現を避けるのには理由がある。人はみんな多様な価値観や考えをもっていて、生きていればそれらがぶつかり合うことはあるものの、お互いが理解するよう努めれば必ず前に進むことができる、というのがこの物語の伝えるメッセージだからだ。そのキャラクターがもつ特徴を強調して描いた方が「キャラ立ち」という面では作劇上有効なのかもしれないが、それをするわけにはいかない。その方法を選ぶことは、キャラクターのもつ多様性を捨てることになり、生きた人間として見せられなくなって、作品が伝えようとするメッセージも壊すことになるからだ。星野は先ほどのコメントに加えてこのようにも語っている。

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