マスコミが触れない村上春樹『騎士団長殺し』の核心部分(前編)

村上春樹『騎士団長殺し』は歴史修正主義と対決する小説だった! 百田尚樹も気づいてない南京虐殺の生々しい描写

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
kishidanchou_170514.jpg
『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』(新潮社)

百田尚樹らのネトウヨ的ヒステリーはある意味、的を射ていた

 村上春樹の7年ぶりの長編小説ということで、発売前から大きな話題を集めていた新作『騎士団長殺し』(新潮社)。発売からわずか3日間で『第1部 顕れるイデア編』と『第2部 遷ろうメタファー編』の合計が50万部近くまで到達し、改めて村上春樹の圧倒的な人気が浮き彫りとなったかたちだ。

 しかし奇妙なことがある。これだけ売れているにもかかわらず、マスコミでは『騎士団長殺し』の内容や主題についての言及がほとんどないのだ。いつもなら、村上春樹の長編が発表されれば、謎解き合戦が繰り広げられる。今回も発売前にタイトルが発表されただけの段階で、「『騎士団長殺し』というタイトルだから、オペラ『ドン・ジョヴァンニ』が関係しているのではないか」というようなハルキストの推測を放送していたテレビもあった。

 それなのに『騎士団長殺し』が発売されたとたん、新聞やテレビはこの小説のことを大きく扱わなくなった。それどころか、この小説の核心部分に触れた論評はいまのところ、文芸誌の批評なども含めてほとんど皆無に近い。

 いったいなぜか。それはおそらく、その核心部分が、歴史修正主義との対決にあるからだろう。

 実は、『騎士団長殺し』はすでに、ネトウヨたちから「南京大虐殺を認める記述がある」と攻撃を受けていた。たとえば、発売直後に百田尚樹はこんなツイートをしていた。

〈村上春樹氏の新刊『騎士団長殺し』の中に、「日本軍は南京で大虐殺をした」という文章があるらしい。これでまた彼の本は中国でベストセラーになるね。中国は日本の誇る大作家も「南京大虐殺」を認めているということを世界に広めるためにも、村上氏にノーベル賞を取らせようと応援するかもしれない。〉

 また、ヘイト団体・在特会の元会長でレイシストの桜井誠も同じくツイッターでこう書いていた。

〈村上春樹が「日本軍は捕虜管理能力がなかったから、降伏した敵兵や市民を虐殺した」と最新刊『騎士団長殺し』で記述しています。フィクションではありますが、このような事実と違う表現を文章に書けば村上信者がどう受け止めるか誰にでも分かります。本当にこの輩は日本人なのか疑ってしまいます。〉

 これらのツイートを読んだ当初、筆者は「また頭の悪いネトウヨたちが本もまともに読まず、一部の記述を抜き出して脊髄反射的なヒステリーを起こしている」と思っていた。実際、両者のツイートが指摘している箇所は、登場人物の一人が南京事件を解説しているだけのほんの十行たらずの箇所にすぎず、しかも、その解説は「正確に何人が殺害されたか、細部については歴史学者のあいだにも異論がありますが」ときちんと注釈のついた至極まっとうなものだった。逆に、百田や桜井の村上批判は、保守派の学者さえ相手にしない「南京虐殺まぼろし論」であり、一顧だに値しない。

 しかし、連中の主張のトンデモぶりはともかく、その警戒感は正しかった。『騎士団長殺し』をきちんと読んでみると、先の戦争における加害責任を指摘しているのはこのシーンだけではなかった。それどころか、作品全体に、戦争という負の歴史に向き合い、安倍政権的な歴史修正主義と対決する姿勢が貫かれていたのだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

村上春樹『騎士団長殺し』は歴史修正主義と対決する小説だった! 百田尚樹も気づいてない南京虐殺の生々しい描写のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。村上春樹歴史修正酒井まどの記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍、甘利、麻生、山口が立憲と共産党へのデマ攻撃!
2 維新の野党共闘ディスが悪質!吉村知事も“暴言王”足立康史と一緒に
3 Dappi運営会社社長が、“安倍の懐刀”元宿自民党事務総長の親族の土地に家を
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 Dappi運営企業と取引報道の自民党ダミー会社は岸田、甘利が代表の過去
6 安倍晋三が杉田水脈の名簿順位を上げ、あの初村元秘書の公認ゴリ押し
7 甘利明が「スマホは日本の発明」「消費税の使途は社会保障に限定」の嘘
8 安倍首相の「お父さん違憲なの」はやはりでっちあげ?
9 有名ネトウヨ「Dappi」の正体は自民党が取引先のウェブ制作会社!
10 山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
11 『ひるおび!』出演者のバービーが番組の野党の扱いに疑問!
12 大阪に看護師不足は維新のせい!橋下徹は看護師の給料を「バカ高い」と攻撃
13 岸田首相に「話が長くて中身がない」「何を言いたいのかわからない」と悪評
14 松井一郎が対立候補攻撃のためにネトウヨのフェイクをRT 
15 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
16 田崎史郎ら御用が垂れ流す「安倍さんは人事に不満」説の嘘,
17 松井府知事と橋下徹の台風対応が酷い!
18 吉村知事の大阪府は「時短協力金」支給も大幅遅れでダントツ最下位! 
19 岸田内閣に少女時代をデマ攻撃した金子総務相はじめネトウヨ極右閣僚が
20 辻元清美が自らの不正への対応を語って甘利明に説明要求!
1Dappi運営企業と取引報道の自民党ダミー会社は岸田、甘利が代表の過去
2有名ネトウヨ「Dappi」の正体は自民党が取引先のウェブ制作会社!
3甘利明が「スマホは日本の発明」「消費税の使途は社会保障に限定」の嘘
4『ひるおび!』出演者のバービーが番組の野党の扱いに疑問!
5ネトウヨDappiと自民党の関係が国会で追及されるも岸田首相はゴマカシ
6Dappi運営会社社長が、“安倍の懐刀”元宿自民党事務総長の親族の土地に家を
7安倍、甘利、麻生、山口が立憲と共産党へのデマ攻撃!
8岸田首相の解散直前『報ステ』単独出演に「放送の中立性欠く」と批判殺到!
9維新の野党共闘ディスが悪質!吉村知事も“暴言王”足立康史と一緒に
10辻元清美が自らの不正への対応を語って甘利明に説明要求!
11岸田首相に「話が長くて中身がない」「何を言いたいのかわからない」と悪評
12安倍晋三が杉田水脈の名簿順位を上げ、あの初村元秘書の公認ゴリ押し

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄