今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった

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 しかし、だからこそ反論しておきたいが、自己責任論の前提となっている長谷川が言うような“ほとんどの人工透析患者は自堕落の結果”という説は、まったく的外れの指摘だ。

 まず、自堕落の結果だと槍玉にあがっている「2型糖尿病」の原因は、高脂肪の食事や運動不足だけでなく、そもそも親や肉親の遺伝によって糖尿病になりやすい体質である人も含まれている。そのうえ、現在ではストレスの影響も大きいことがわかっている。現に、ドイツの研究機関の調査では、職場で過大な仕事を要求されるなど強いストレスに晒されている人は、そうでない人と比較すると2型糖尿病を発症するリスクは45%も上昇したという。

 にもかかわらず、糖尿病は「飽食のせい」「贅沢病」とされてきた。もっとも象徴的なのは麻生太郎副総理の発言で、「食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで、糖尿病になって病院に入っているやつの医療費はおれたちが払っている。公平ではない。無性に腹が立つ」などと糖尿病患者を批判し、医療費問題につなげて自己責任を煽った。

 だが、この発言が本当に正しければ、毎晩のように政治活動費で高級ワインやらフランス料理などに舌鼓を打つ「食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで」いる麻生副総理こそ糖尿病に罹りそうなものだが、実際はそうではない。それもそのはずで、糖尿病は「贅沢病」などではなく、むしろ「貧困病」だからだ。

 たとえば、こんなデータがある。全日本民主医療機関連合会(民医連)が40歳以下の2型糖尿病患者約800人のカルテ分析と対面調査を行ったところ、〈患者のBMI値の推移を分析すると、一〇代で既に一定の肥満状態になり、成人後にさらに体重が増加して糖尿病を発症して〉いたことがわかったというのだ。また、同じように40歳以下の2型糖尿病患者が合併症である網膜症を発症する確率は、正規雇用の患者にくらべて非正規雇用の患者は1.52倍となっていることも公表。こうした結果について調査班は〈患者は低学歴で非正規雇用が多く、貧困や労働環境の悪化が糖尿病の発症を早めていることが推測されます〉とまとめている。

 実際、糖尿病予防では、高脂肪の食事を控えることや野菜の摂取が推奨されるが、食事を安く済ませようとするとこれらを守ることはできない。カップ麺などの安価な炭水化物は財布にやさしい一方、高脂肪・高塩分で野菜に含まれる栄養素の摂取が期待できない食品の代表例だし、自炊でなるべくバランスのよい食事を心がけようにも都市部のスーパーでは野菜はもはや高嶺の花で、食費を抑えようとすれば多品目を口にすることは難しい。

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