問題はボート会場じゃない、「東京五輪開催」そのものを疑え! メディアにはびこる「どうせやるなら」論の罠

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
olympic_161027_top.jpg
『反東京オリンピック宣言』(航思社)

 迷走に迷走を重ねる2020年東京五輪。今度は、ボート・カヌー会場をめぐる問題だ。海の森水上競技場建設に491億円なんてありえない、なぜ当初予算の7倍に膨れあがったのか、仙台の長沼に移せば復興に繋がるのに、なぜ組織委の森喜朗会長らは抵抗するのか……。テレビからは毎日のようにそんな声が聞こえてくる。

 たしかに、招致段階では施設工事費7000億円と示されていたのが、都の調査で総費用が3兆円を超すことが判明しており、このまま海の森水上競技場の建設なんてありえないだろう。

 だが、いま起きていることは本当にボート会場を移せばすむ話なのか。問題はもっと根本的なところ、つまり五輪を開催するということにあるのではないか。

 しかし、テレビや新聞は費用のかけすぎや会場選定の不透明さは指摘しても、そのことには絶対に触れようとしない。最後は結局、「夢」や「感動」というフレーズをもちだし、「どうせやるならちゃんとやらないと」「アスリートファーストの素晴らしい東京五輪にためにみんなで知恵を絞らないと」などというきれいごとで終わらせてしまう。

 そんななか、東京での五輪開催自体に根源的な疑義を唱え、開催を返上するべきと主張する学者たちが現れた。今年8月末に出版された『反東京オリンピック宣言』(航思社)という本で、社会学系の学者・研究者たちを中心にした16人の論客がさまざまな視点から問題を指摘し、東京五輪の開催そのものにNOの声をあげているのだ。

 論者たちの多くが触れている最初の欺瞞が、安倍晋三首相が招致演説で口にした「アンダーコントロール」発言だ。鵜飼哲(一橋大学大学院教授)は、官邸HPに掲載の訳文──「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」──を引いたうえで、〈これほど公然たる嘘の前で、人はともすると虚を衝かれ、息を飲んでしまう〉〈この凶悪な言語行為〉と批判している。

 酒井隆史(大阪府立大学教授)は、この発言をほとんど問題視しなかったメディアの責任を問いつつ、「公人の無責任な虚言」を許容してしまう昨今の日本社会と、安倍発言に込められた暗黙のメッセージを次のように指摘する。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

反東京オリンピック宣言

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

問題はボート会場じゃない、「東京五輪開催」そのものを疑え! メディアにはびこる「どうせやるなら」論の罠のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。五輪大黒仙介安倍政権東京五輪の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄