乙武洋匡の不倫報道を障がい者はどう受け取った?…「障がい者も性欲はあるし、それをタブー視するな」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 健常者と同じように性的な体験をすることが自信となり、また、性的に自立している人は社会的にも自立しやすい。そのような傾向があるのだが、では、なぜ性的な自立が社会的な自立につながるのか。それは「母親の壁」が関係していると坂爪氏は指摘する。

 障がいをもって生まれた子どもとその母親の間には過度の母子密着が生まれやすい。トイレやお風呂、外出の世話まですべての生活を母親がサポートしているため、子どもはプライベートな時間をもつことが難しい。また、なんらかのコミュニティの集まりに参加していたとしても、そこに母親がついてくることにより、その場で恋愛関係が構築されることも難しくなってしまう。この「母親の壁」が結果的に自立を妨げることにもつながってしまうのだ。性的な自立は、この「母親の壁」からの自立ということでもある。

 また、こういった状況では、母親が本人に代わって意思決定をしてしまうことが多いため、自分から情報を集めたり、何かを決めたりということが難しくなってしまう。とくに、性的な情報などについてはその傾向が強い。思春期を迎えた子どもに「性的」な芽生えがあったとしても、家族はそれを見て見ぬ振りをしてしまうからだ。

 そのように、障がい者と性の問題を見て見ぬ振りしてしまうのは学校教育の現場でも同じだ。「寝た子を起こすな」の姿勢の性教育が、身体のどこに障がいがあるかは関係なく障がいをもつ人たち全員の教育に共通してあり、そうして性の問題をタブー視していることが、また新たな問題を生んでいると熊篠氏は主張している。

「異性との接し方、オナニーの方法、SEXの仕方など、障害者に対し、性に関する情報はあまりにも閉ざされていました。僕たちは性的に封印され続けてきたのです。でも、僕たちだって生身の人間なんです。性的欲求は体の奥からフツフツと沸き上がってきます。その欲求にどう対処すればいいのか、その答えが見つからずモンモンとした日々を過ごしている障害者が、僕の周りにはたくさんいます。(中略)僕たちは障害者というより、障害にがんじがらめにされた者たちなのです」(前掲「週刊宝石」)

「障がい者はセックスのことなど考えない純潔な人である」という健常者の勝手な思い込みは、彼らを苦しめ続けている。今回の乙武氏の不倫報道をきっかけに、そのような偏見が少しでも是正されればと願うばかりだ。
(田中 教)

最終更新:2016.07.13 05:17

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

セックスと障害者 (イースト新書)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

乙武洋匡の不倫報道を障がい者はどう受け取った?…「障がい者も性欲はあるし、それをタブー視するな」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。田中 教の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄