「演歌は日本の伝統」を掲げる議員連盟に「?」演歌は1960年代に生まれたもの、みだりに「伝統」を使うな!

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 ただ、「演歌」という言葉自体はそれ以前からあった。「演歌」という単語が生まれたのは明治時代にまで遡る。自由民権運動の流れのなかで、政府が公開演説会を取り締まりの対象としたために、規制を免れるべく演説を「歌」のかたちで展開したのが「演歌」であった。この「演歌」は、政権批判や社会風刺を歌うものを指し、恋や酒を歌のテーマとする現在の「演歌」とはまったくの別物だ。そしてこの「演歌」は元号が昭和になるころには衰退。忘れ去られた音楽となっていく。

 では、なぜそれから時を経て「演歌」という言葉が復活し、現在のようなかたちで「演歌」というジャンルが生まれるようになったのか。それには、このジャンルが生まれた60年代後半という時代が大きく関係している。この時期、ポピュラーミュージックの世界は、グループサウンズ、フォーク、そして、後のニューミュージックへとつながっていく「若者音楽」大変革期の最中であった。

 これらの音楽の台頭により、それまで「都会調」「浪曲調」「日本調」などと呼ばれ区分けされてきた古いスタイルのレコード歌謡と、ロックやフォークなどの新しい音楽との間に乖離が生まれ、結果、旧来のレコード歌謡はすべてまとめて「演歌」というひとつの言葉のもとにまとめられることになる。その裏には、古いレコード歌謡を「リバイバルもの」としてプロモーションしたいレコード会社の思惑があった。

 現在、ロックもフォークもアイドルも、昭和期にお茶の間を賑わせた音楽ならジャンル関係なくすべてひっくるめて「昭和歌謡」というカテゴリーにおさめコンピレーションアルバムなどが盛んに制作されているが、これと似たような現象が当時も起きていた。その結果、「演歌」という忘れ去られた言葉が意味を変えてリサイクルされたのである。

 なので、一括りに「演歌」といっても、そこに厳格な音楽的基準はなく、民謡や浪花節のような日本的な音楽も含まれれば、ムード歌謡のようにジャズの影響を色濃くもち、かつての音楽界ではむしろモダンなものとして受容されたものまで混ざっている。

 たとえば、「古賀メロディー」と称され、現在では演歌の基礎をつくったと評価される古賀政男だが、彼の音楽的な素養となっているものも西洋音楽の知識やクラシックギターの技術である。

〈いまでは「演歌」の典型的なサウンドとみなされる《影を慕いて》などに特徴的なギター奏法も、開放弦を活用しながらベース音と和音と旋律を同時に演奏するクラシックギターの技術に基づくもので、当時はギターやマンドリンの響き自体がモダンなものでした〉

 また、「演歌」というジャンルがいかに雑多な出自をもっているかの一例が「こぶし」である。演歌らしさを特徴づける最も大きい要素である「こぶし」だが、これは浪曲において使われる歌唱法で、ジャズはもちろん民謡調の歌手も用いない歌唱法であった。なので、「演歌」というジャンルに一括りにされた当時「こぶし」をまわす歌手は主に浪曲出身の歌手たちであり、「演歌」がジャンルとして成立した時には、クラシックなどの声楽的素養を誇っていた他の歌手から「下品」と批判されたりもしている。

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