安倍首相の歴史修正主義を、赤川次郎と高橋源一郎が痛烈批判「国家サイズのモンスターペアレンツ」「安倍首相にとって命は数字に過ぎない」

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 もっとも身近な肉親が体験した戦争。そのためか、ふたりの話に“戦争ファンタジー”が入ることはない。逆に、“戦争法案”をつくり、通そうとする安倍首相のような“自分よりも年下の指導者たち”に、高橋氏は「彼らは上の世代からどういう話を聞いてきたんだろうねと思ってしまいます」と言う。

「僕たちが見聞きした話って、情報ではないと思うんです。僕たちは戦争に行った人たちの話をダイレクトに浴びて育ったわけで、それは「資料」でも「情報」でもない。戦争に対する態度とか、こういうものがあったという「物語」として、戦争の歴史を受け取っているんです。
 ところが最近、従軍慰安婦問題にしても、ものすごく細かい情報を集めて、この資料にはこう書いてあるから慰安婦問題はなかったという言い方が、増えてきていると思いませんか。これは右翼と言われる人たちも同じで、全部資料に頼るでしょう」(高橋氏)

 この高橋氏の言葉に対し、赤川氏も「私たちは物語を聞いているわけです。その物語は、ちゃんと人間が生きている話です」と同意する。

「でも、安倍さんたちが言うのは「数字」なんですよ。南京大虐殺だって三十万人も死ぬわけがないだろうというね。じゃあ十万人ならいいのかっていう話になりますよね。あの人たちにとっては、人の命は数字にすぎないんです」(赤川氏)

 数字にこだわるのは、戦争の問題だけではない。株価、人口といったように、経済の問題でも“全部数値にならないと証明されたことにならない”。そのような空気によって、当事者たちの「物語」は、「数」の論理でかき消されようとしている──。

 安倍首相が発表した戦後70年談話でも、結局、従軍慰安婦は「女性」と括られ、植民地支配も侵略も村山談話を引用しただけで、現在の首相としての考えを明らかにしなかった。そこには、“裏付ける資料がないから”という安倍首相の主張が見え隠れするようだった。安倍首相が談話のなかで無視しているもの、それこそが当事者たちの「声」であり、生きた「物語」だろう。

「僕は「論壇時評」でも書いたんです。紙の資料に頼りながらそこから発せられる「単なる売春婦」とか「殺されたと言ってもたかだか数千で大虐殺とは言えない」とか、「強制はなかった」という物言いに、すごく強い違和感があると。赤川さんがおっしゃったように、資料の中では単なる数に過ぎなくても、一人一人異なった運命を持った「当事者」がそこにはいたわけですよね」
「慰安婦のことも、あれだけ多くの、実際に体験した兵士の証言や、目撃した当時の外国人の証言もあるのに、それでもなかったと言う。人数の問題にしてしまえば無視できるだろうというような……。いつから日本人って、こんなに情けなくなっちゃったんでしょうね」(高橋氏)

 歴史を修正することは「愛国」ではない、むしろ愛がわかっていないのだ──。そう指摘する高橋氏と赤川氏は、現状の日本を「国家サイズのモンスターペアレンツ」と表現する。「あいつは敵でこいつは味方」と単純に切り分け、「わかりやすさ」を求める、それが安倍政権の姿だと。

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