「戦後70年談話」で妥協しても何の痛痒も感じず⁉ 安倍晋三の浅く軽薄な思想は戦前の軍部そっくりだった

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〈そのひとつは、「国民の生命と財産を守るのが首相である私の役目」、もうひとつが「国家の安全を揺るがすか否かは首相の判断」という点である。ことごとく「私が中心」という発想である。首相が中心になることにより、行政府の責任者が統帥権を自在にふるえるといった錯誤がこれらに二つの論理の背景には見え隠れしている〉(同書より。以下同)

〈安倍首相の発言を聞いているとわかるが、実はこの首相は相手方の質問や疑問に真正面から答えるのではなく、相手の言葉尻をとらえて開き直り、その一方で「問題を整理すると」とか「一般に」といった言い方で、論議そのものを避けているのが特徴だ。いわば相手に丁寧に説明しようとする姿勢がまったくないのである〉

 こうした態度は戦前の陸軍の軍事指導部の幕僚たちがたとえば国家総動員法などの審議のときに見せた開き直りとソックリだという。このときも、在留邦人の保護や石油資源の供給が不安定な状態から脱するための自存自衛の策だという言葉が連発された。そのことに国会議員が疑問を口にすると、軍人は「黙れ!」と怒鳴った。つい最近、まさに安保法案の国会審議の現場であったような場面が、戦前にもそのまま行われていたという話である。

 昭和10年代の軍人の議会答弁には3つの特徴があると保阪氏は言う。

 ひとつは、具体的な説明にはかならず大仰な形容句がつく。「皇国二千六百年、戦って負けたことのない皇軍は…」、あるいは「在留邦人の安全と生命を守るのが軍人の役目」「大御心を体して」などの語を乱発して、相手の質問にまともに答えない。これは、「日本を取り巻く安全保障環境は激変し、もはや一国で平和は守れない」とか、「積極的平和主義」「日本を取り戻す」「美しい国」といった麗句や結論を先に口にするのと同根だという。

 第二は、まともな立論がされていないので、その説明が5分と持たない。東條英機が首相、陸相として答弁に立ち、「戦争が終わったとき」というのはどういうときか、と戦時時限立法について尋ねられると、法律上の答弁をしなければいけないのに、「平和が回復したとき」と答えたことなどがその典型だという。安倍首相や中谷防衛相の答弁を聞く限りでも、まともな立論ができているとは思えないし、自民党が安保法案の説明のためにつくったアニメ「教えてヒゲの隊長」がパロディ版であっという間に論破されているのもそのためだ。

 そして、三番目の特徴は、軍人は軍事に偏った知識しか身につけておらず、社会科学、人文科学といった分野はまったくダメだったということだ。言葉に歴史的背景や哲学的意味合いが込められていない。安倍首相の「憲法は占領憲法、押しつけ憲法だ」「靖国神社はアメリカ国民にとってのアーリントン墓地と同じです」などといった言い方がこれにあたる。

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