高村光太郎夫人が描いた男性の股間から河西智美の手ブラまで…ヌードと国家の関係

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 ……いかがだろうか。このエピソード1つを取り上げるだけでも、一枚のヌード画デッサンをめぐる伝説が西欧諸国/日本の関係、ジェンダーなど様々な「意味」のあわいに成り立っていることに唸らされる。

「こんなの著者の単なる当てこすりじゃん」という声も聞こえてきそうだ。心配御無用。本書で取られている手法は「イコノロジー(図像解釈学)」という、れっきとした学問的方法論のうえに成り立ったものであることも申し添えておこう。

 イコノロジー的研究の第一人者であり、さらに本書著者・池川の師匠でもある美術史学者・若桑みどりは〈すぐれた作品は必ず解釈ができる〉(若桑みどり『絵画を読む イコノロジー入門』NHKブックス、1993年)と胸を張る。

 イコノロジーとは〈既知のデータから出発し、その作品を成立させているもろもろの因子、つまり歴史的・社会的・文化史的因子を総合的に再構成し、その作品のもつ本質的な意味〉(同書より)を探索する作業のことを指す。なんだかムズカシイ言い回しだが、要するに作品のバックグラウンドを参照しつつ、絵画や写真が伝える意味を「読む」作業も、研究者の立派な仕事だということは押さえておきたい。

 本書ではほかにも竹久夢二のレア作品「夢二式美人」のヌード絵、満州事変の時期に制作されたプロパガンダ映画に登場する乳房、はては高度経済成長期のパルコの手ブラポスターに至るまで、バラエティ豊かな素材が読み解かれている。作者の性別、時代背景などによって、それらに込められた「愛国」の意味合いもまた変わってくることの面白さが体得できればしめたもの。「ヌードマスター」を目指して頑張って通読してほしい。
(松岡瑛理)

最終更新:2017.12.19 10:23

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