沖縄は米軍基地を阻止できるか? 翁長新知事に立ちはだかる日米密約の闇

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「その後調べると日米原子力協定という日米間の協定があって、これが日米地位協定とそっくりな法的構造を持っていることがわかりました。(中略)米軍基地の問題と同じで、日本側だけでは何も決められないようになっているのです。条文を詳しく分析した専門家に言わせると、アメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけだそうです」(同書)

 まだ明らかになっていない“原発密約”も数多く結ばれているはずだ。そう著者は続ける。にわかに鵜呑みにしがたい話だが、たしかに、原子力に関する“密約”が行われてきたことに関しては事実である。日本は建前上、非核三原則を打ち出す非保有国であるが、アメリカは冷戦下における共産圏への牽制として、当然日本の領土に核兵器を配備したかったのは間違いない。日本政府は公的に認めていないが、実際に近年、様々な角度から“核密約”の存在が明らかにされている。

 共同通信編集委員の太田昌克によれば、岸信介は60年安保時に、マッカーサー2世らとの間で、核搭載戦艦の通過や寄港は事前協議の対象としないとする密約を交わした(「『3.11』──日米核同盟の帰結」/岩波書店「世界」2012年6月号)。また、佐藤栄作の密使・若泉敬は自著『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』(文藝春秋)で、69年ホワイトハウスでの首脳会談において、佐藤栄作とニクソンが二人きりの密室のなか、沖縄核持ち込みの密約を交わしたと証言している。なお、2009年には、密約文書の実物が佐藤の親族宅に保管されていたことが判明している。

 他方アメリカは被爆国である日本の“核アレルギー”の緩和策として、積極的に“原子力の平和利用”を喧伝してきたことは周知の通り。つまり、“安全保障上の問題=核”と、“原子力の平和利用=原発”は双子のような関係だったのだ。ゆえに“核密約”だけでなく、原発に関しても国民の知らぬところで、なんらかの“日米合意”が存在している可能性は極めて高い。

 憲法を超越したウラの法体系──この倒錯した構造を変えるにはどうすればよいのか。残念ながら現在の自民党政権では100%不可能であると断言できる。

 今回の安倍政権の「解散風」を見るだけでも、どこか様子がおかしいことに気がつかねばならない。建前はアベノミクスの是非であるが、本来は経済政策とともに、原発問題や米軍基地、集団的自衛権行使容認などの外交政策を総合考慮した評価が問われるべきところ。だが、これらを争点として取り上げるメディアは皆無だ。まるで、原発再稼働や日米地位協定、そして集団的自衛権行使容認が、アンタッチャブルな“合意”のもとに進められる既定路線であるかのように……。

 はたして、岸信介の孫、安倍晋三に、安保や密約の取り決めを清算することができるだろうか。少なくとも安倍政権はこうした“合意”を、特定秘密保護法を用いてなおさら隠匿しようともくろんでいるようにしか見えない。

 ひっきょう、安倍が“ウラの最高法規”にメスを入れずにおくならば、彼のいう「美しい日本」は、もはや法治国家ではなく、民主主義国家でもないのだろう。よくよく考えてみるべきだ。
(梶田陽介)

最終更新:2015.01.19 04:13

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