あのベストセラーも! 引き寄せ系自己啓発本“焼き直し”の歴史

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『こうして、思考は現実になる』については、「簡単な実践」を強調している点が同種の本に比べて個性的ではある。だが、内容そのものは既存の「スピリチュアル系・自己啓発本」と全く同一であり、ただパッケージを変えているだけだ。例えば、上記の針金が勝手に動くかどうかという実験。これは感情などが起こす不随意運動によるもので、中世の古くから「ダウジング」と呼ばれ親しまれてきたが、本書では「アインシュタインの法則」と言い換え、新味を演出している。他にも「シンクロニシティ」を「101匹わんちゃんの法則」と呼んだり、「Oリングテスト」や「インナーチャイルド」といったお馴染みのスピリチュアル言説を、それとは明記せずサラリと出したり……。見せ方を工夫するのは良いとしても、結局は、耳にタコが出来るほど繰り返された言説の焼き直しばかりである。
 
 他にも、本書含む「スピリチュアル系・自己啓発本」の目立った共通点を挙げれば、以下の二つとなる。

・欧米なら伝統的キリスト教から距離を置き、日本なら逆に古神道など伝統宗教に親近感を寄せる。だが、いずれも共通して、伝統宗教が部分的にしか見出さなかった「本当の真理」を見つけたと主張する。
・一見、科学的な装いではあるが、厳密な観測や証明を伴っておらず、むしろ非科学的である。多くは、いまだ解明できていない未知のパワーが存在すると説く(量子力学が根拠に持ち出される場合が多い)。

 もちろん、「同じ主張が繰り返されるのは、それが正しいからだ」という考え方もあるだろう。私だって、ポジティブ・シンキングや、目標に向かって心を奮い立たせるのは素晴らしいとは思う。しかし、相も変らぬ「スピリチュアル系・自己啓発本」が飽きられもせずヒットを飛ばし続ける現状には、一抹の不安も感じてしまうのだ。

 アメリカが本場であることから分かるように、「スピリチュアル系・自己啓発本」は高度消費社会と非常に相性が良い。さらに正確に言えば、経済が停滞し、その消費社会が行き詰まりを見せた時点が、最も求心力を生むタイミングとなる。突然の解雇に脅かされ、格差は広がるばかり。今まで社会はひたすら消費を求めてきたのに、それもままならない。さりとて、崩壊していった地域共同体や伝統にアイデンティティを求めるのも難しい。そのような不安が顕在化していく中で、多くの人は「スピリチュアル系・自己啓発本」を求めだす。上手くいかないのは全て自分に原因があり、意識さえ変えれば幸せが手に入る……そんな発想に活路を見出したくなる。

 しかし、ここでの幸せとは結局「欲しいものが手に入る」という現行の(しかも行き詰った)消費社会の枠内の幸福でしかない。さらに「自分さえ変われば」という思想も、今ある現状を変革せず受け入れているだけだ。こうした二重の追認を与えているのが、その社会システムの問題にさらされているはずの人々だという矛盾。

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