妊婦に性欲あったらいけないの? 怒りと絶望の妊婦あるある!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
ikuji_140804.jpg
『ママだって、人間』(河出書房新社)

「妊娠したら母性は自然に湧いてくるもの」「つわりは母性で乗り越えられる」「出産の痛みを乗り越えてこそ母になれる!」「子供にとっては母親が一番。やっぱり父親はかなわないよ」

 全部、嘘だった。
 いや、嘘とまではいわない。「私は母性でつわりを乗り越えました!」と大いに共感する人もいるだろう。ただ少なくとも、私の場合はどれも当てはまらなかった。母性とやらは自然に湧くものでもなかったし、痛みはないに越したことはない。母親ができることは父親もできる。それが今現在、2歳児を育てている私(と夫)の偽らざる実感だ。そして確信している。同じように思っているけど口に出さないママが世間には絶対大勢いるはずだ、と。

『ママだって、人間』(河出書房新社)を読むとそれがよくわかる。作者は、実母との長年の戦いを描いた『母がしんどい』でブレイクした田房永子。両親と決別した後、今度は自らが母になった彼女が妊娠・出産・育児の実体験を綴ったこのコミックエッセイは、帯のコピーに「育児マンガのタブーを破る!」とある。育児マンガのタブーとは何か? 

 本書の中で作者は、驚くくらい赤裸々に自分の性欲や性生活についてさらけ出している。妊娠してから乳首の感度が上がったこと、夫婦でTENGAの使い方をめぐってケンカしたこと、出産後に大陰唇がビロビロになったこと、娘の「われめの中」をどう洗えばいいかわからないこと、産後セックスレスの打開案として夫をラブホテルに誘ったら引かれたこと、そのことに怒ってFacebook経由で元カレに連絡を取ろうとしたこと……。

 どのエピソードも世間一般の「いいママ」像とはほど遠い。「そんなはしたないこと公にして……」と眉をひそめる人もいるだろう。だが、出産経験者の立場からすれば、どれをとっても「わかる!」「あるある!」の連続だ。すべての行動が同じとはいわないが、根っこにある焦燥感、切実さはリアルに共感できる。だからこのマンガは笑えない。読んでいるとじくじくと傷跡が痛むような感覚に襲われる。

 これまで育児コミックエッセイといえば、子供のおもしろ言動を笑いに昇華させたギャグ系が人気だったが、『ママだって、人間』は同ジャンルの作品の中では明らかに一線を画している。作者は自分の心身の変化を赤裸々に描くことで、「母になったら生々しいオンナを封印しろ」という世間の無言の圧力に身をもって立ち向かっている。産前産後の女の心身に起きるドラスティックな変化は、雑なギャグに昇華できるほど軽いものじゃないのだ。

 育児マンガのタブー、それは「母性ですべてはカバーできない」という圧倒的事実を明らかにしたことだ。「母性本能」という曖昧な言葉でなかったことにされていた、さまざまな事象への違和感。それは実母との関係に悩み続け、ついには縁を切ることで母性幻想を打ち破った作者だからこそ描けたのかもしれない。

 娘として、女として、そして母になって。「母性」に振り回され続けた作者がたどり着いた「母性」のあり方とは? ぜひ本書で確かめてほしい。
(阿部花恵)

最終更新:2016.08.05 07:03

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

妊婦に性欲あったらいけないの? 怒りと絶望の妊婦あるある!のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。あるある出産妊娠の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍首相が辻元清美に“前夜祭の決定的な嘘”を暴かれ窮地に!
2 槇原敬之は明らかに不当逮捕だ!薬物より怖い警視庁組対5課
3 安倍政権のコロナ対応の遅さに非難殺到! 14 日まで感染症専門家会議設置せず
4 安倍政権の酷すぎる新型コロナ対応!「金がかかる」と検査キットを導入せず
5 安倍政権はコロナも“自己責任 韓国は生活費支援も日本は休業補償認めず
6 『報ステ』政権忖度で首を切られたスタッフたちに支援の動き!
7 伊集院光がNHK『100分de名著』で「東京五輪、本当にいるのか」
8 葵つかさが「松潤とは終わった」と
9 安倍首相の強気の裏にニューオータニ幹部との関係
10 「全国高校生未来会議」仕掛人に新疑惑
11 国内感染広がるも百田尚樹ら極右はまだ「中国人を入れるな」
12 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
13 小学8年生の安倍伝記漫画が反日と炎上
14 安倍「感染症対策のため獣医学部」は嘘! 加計は新型コロナ対応不能
15 「桜を見る会」前夜祭問題でニューオータニ総支配人が
16 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
17 『報ステ』から政権批判が消える! 派遣切り、安倍シンパ出演
18 報ステ後藤謙次の安倍批判がキレキレ!
19 グッディ!土田マジギレ真の原因
20 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
1久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

カテゴリ別ランキング


人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄