だまされるな! 芸能人の無断撮影は犯罪じゃない!

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 週刊誌「女性自身」(光文社)がタレントの肖像を無断で掲載したとして争われたピンク・レディー事件の判例(最高裁平成24年2月2日判決)では、パブリシティ権は「顧客吸引力を排他的に利用する権利」と定義され、人格権のひとつとして認められている。そしてその侵害にあたるのは、以下において肖像を無断で使用した場合とされる。具体例を補足しつつ明示しておこう。

①独立して観賞の対象となる商品を販売すること(例:ブロマイドの換金など)
②差別化を図る目的で肖像等を商品に付すこと(例:写真入りグッズ制作など)
③商品の広告として使用すること(例:写真等を使った宣伝行為など)

 今回のきゃりーのケースでは、撮影者は商業的な目的で写真を撮影・公開したわけではないだろうから、少なくともパブリシティ権の侵害には該当しえないと解釈されうるわけだ。

 このように、パブリシティ権には個人の肖像の扱われ方が関係している。たしかに「肖像権の侵害」という言葉はよく耳にするが、はたして裁判所は肖像権についてどのように考えているのだろうか。

 写真週刊誌「FOCUS」(新潮社/休刊)が、和歌山毒物カレー事件の林真須美被告(当時)を法廷内で隠し撮りし、それら他を掲載したこと等に関する判例(最高裁平成17年11月10日判決)を見てみる。これは、林被告側が「肖像権」の侵害を原告として主張し、慰謝料の支払等を求めた裁判だ。これについて最高裁は《人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する》との文言を判決文に組み込んでいる。

「これを一般的には『肖像権』と呼んでいます。裁判所はストレートにその語を用いてはいないが、しかし、法律上は認めているということ。ピンク・レディー事件でも同じようなことを言っている」(芳永弁護士)

 それでは、いかなる場合も肖像を無断で利用することは許されないのか。注目したいのは、上で引用したカレー事件被告撮影事件判決文の一部が以下のように続けられていることだ。

《もっとも、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、(中略)被撮影者の社会的地位、(中略)活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、非撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。》(カレー事件被告撮影事件判決文)

 判決文は極めて抽象的だが、ようは侵害される者の利益と報道する者の社会的な利益とのバランスのなかで、「受忍の限度」つまり“我慢できる限界”を超えていると考えるべきかどうか、いろいろな事情を総合的に踏まえながら相対的に決定されるということだ。

 きゃりーのケースではどうだろうか。彼女の「社会的地位」は“若者を中心に人気を博すアーティスト”といったところ。一般人が趣味のために撮影することは、上でいう「正当な取材行為等」に該当するのか。芳永弁護士によれば、この「等」という表現は、記者やジャーナリストによる取材だけではなく、別の場合をも含んでいるということを意味するという。さらに、きゃりーは知名度の高いタレントのひとりであり、彼女らは言わばセレブリティである。単純に一般人と事情を同じくするというわけではない。

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