「ガンが消えた」はアリ? ブームの健康本どこまで許されるのか?

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 2度にわたる末期ガン宣告を受け、さらには治療も放棄した患者がパリで料理修行……と、ここまででも驚きの連続ではあるが、さらに自力で歩けなくなっていた著者は、この修行中にいつしか体力を取り戻し、パンをこねるなどのハードな作業もできるように。しかも、彼女が気を付けていたというのは、

「痛みと熱に対応できる食材を選び、胃粘膜の保護、唾液分泌促進を考えて食事を摂るようにしていました。体を常に温めるようにして決して冷たいものは摂らず、朝・晩足浴するようにして、手足の指を全部動かし、関節を動かしつつ過ごしていました」

 という実にシンプルなことだけなのだ。その後4年間パリで勉強し、続いて中国で学び、日本に帰国してからは料理教室を主宰しているほどだから、“全身末期ガンから生還”したといえるのかもしれない。だが、この高遠氏の経験が事実だったとしても、現代の医学においては“奇跡”としか言いようがないことは明白。科学的根拠がないなかで“食べ物だけでガンが消えた”と謳うのは、誤解を生じさせてしまうのでは?と疑問が湧いてくる。

 実際、そうした疑問を「FLASH」が追跡。7月5日号では、『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋)などのベストセラーで知られるガン治療の専門家・近藤誠氏が本書の内容を検証し、「食事でガンが消えるなんて本当に詐欺」と憤慨。さらに15日号では、高遠氏の経歴詐称疑惑にまで発展している。

 しかし、“ガンが消えた”などと扇動しているのは、なにも本書だけではない。『今あるガンが消えていく食事』『ガンが消える食べ物事典』『ブドウ糖を絶てばがん細胞は死滅する!』『がん患者は玄米を食べなさい』『これを食べれば医者はいらない』など食事でガンが治ると謳う本は山ほどある。“抗ガン剤は効かない”と主張する前出の近藤氏に対しても“思考停止の証拠”“たんなるトンデモ本”という批判が起こっているのだ。

 もちろん、問題はガンに限らず、健康本全般にいえることだ。たとえば、“ふくらはぎは第2の心臓”“ふくらはぎをもめば免疫力がアップする”ことを謳い、95万部を突破した話題の本『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(著・槙孝子/監修・鬼木豊)にも、「週刊文春」(7月10日号)が「医学的にありえないこと」「詐欺商法」などと批判している。だが、こうした本を手に取る読者には、当然ながらトンデモ本なのかどうかをジャッジできる専門知識がない。出版社はそのことに付け込み、“○○だけでガンが治る”“××すれば健康になる”と煽っているのだ。

 病気はとりわけセンシティブな問題である。とくに命に関わる話は、藁をもすがる思いで読者は頼りにする。そうしたことを考えると、根拠も示さず安易に焚きつける行為は、「詐欺」といわれても仕方がない。出版社にはもっと慎重さをもって内容を吟味し、正しい情報を提供してほしいものだ。
(田岡 尼)

最終更新:2014.07.13 03:41

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