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吉村洋文知事がコロナワクチン開発でもペテン手口! 専門家の承認前なのに自分の手柄にしようと「治験開始」発表
大阪維新の会公式サイトより
「コロナ対応でもっともよくやっているのは大阪の吉村知事だ」「決断力と実行力が素晴らしい」「大阪府民の命を必死で守ってくれている」……テレビやネットがこんな賞賛の声を送り、各種世論調査の次期総理候補でも上位に名前が挙がるようになった大阪府の吉村洋文知事。しかし、本サイトでは、その人気はイメージ操作や自己演出による虚像であると繰り返し指摘してきた。実際の吉村知事のコロナ政策は失敗と怠慢と迷走だらけで、大阪では検査体制が遅れ、医療崩壊が起きていた、と──。事実、大阪の人口比の感染者は東京都と北海道以外の府県と比べると圧倒的に多く、検査拒否数も当初は全国ナンバーワンだった。
最近も、こうした実態を裏付ける客観的数字が次々と明らかになっている。ひとつは、超過死亡の多さだ。「超過死亡」とは平年同時期の平均死亡者数と比べて、増加した人数のことだが、この超過死亡の4月の数字が、大阪は東京についで2番目に多かったのだ。しかも、東京の1056人に対し、大阪は866人。人口比を考えると、大阪の超過死亡は東京を上回っていることになる。
今年は、インフルエンザの流行もなく自殺者も減少しているため、4月の超過死亡のほとんどが、コロナに感染しながらPCR検査を受けないまま死亡したケース、もしくは、コロナの影響で通常なら受けられる医療が受けられず死亡したケースと考えられている。つまり、大阪は東京よりも、コロナ感染疑いのある死亡者が未検査のまま放置されており、コロナによる医療崩壊がひどかったということになる。
しかも、大阪の医療体制のお粗末さはいまでも変わらない。厚労省が第2波に備えて、各都道府県のピーク時の想定入院者数と確保見込みの病床数を推計したが、大阪は最大の場合6411人、標準想定1636人に対して、病床確保見込み数は1615床。ベッドが足りなくなる恐れがある自治体のひとつなのだ。
これでどうして「吉村知事のコロナ対応は素晴らしい」「その決断力と実行力で大阪府民の命を守った」という話になるのか。
その理由はもちろん、前述したメディア操作と自己演出の結果だ。吉村知事はこの間、毎日のようにメディアに出演しては、いかに必死でコロナ対策に取り組んでいるかをアピールしてきた。その多くは中身のないただのパフォーマンスや他府県の後追いにすぎないものだったが、吉村知事の自信満々な口調とプラスな結果を全部自分たちの功績にする「やってる感」演出に大阪府民、そしてほとんどの日本国民がころりと騙されてしまったのだ。
いや、たんに中身のない自己演出をしているというだけならまだましなのかもしれない。吉村知事は自分の「やってる感」演出のために、公平性や安全性をそこなうデタラメまでやっているのだ。
そのひとつが最近、国内初の人への治験が始まったと話題の「大阪産ワクチン開発」だ。6月30日から大阪市立大学医学部附属病院で臨床試験が始まったものだが、実は、この「人への治験開始」をいち早く発表したのが松井一郎・大阪市長と吉村知事だった。
吉村知事「市大の附属病院の従事者に投与する」発言に「人権侵害」の批判
まず、6月16日に、松井市長が「6月30日、まず市大病院で医療従事者にワクチンを接種してもらうことが、ほぼ決まってきております」と発言。
さらに、吉村知事はこれを受けて、翌17日の定例会見で、あたかも正式発表のように意気揚々とこう語った。
「日本産、そして大阪産の新型コロナのワクチンの開発をこの間、進めてまいりましたが、6月30日、今月末に人への投与、治験を実施いたします。これは全国で初になると思います」
「現実に動物実験で安全性も確認をいたしましたので、今月末に市大の医学部附属病院の医療従事者に、まずは20例から30例の投与をする予定です。そして10月にはその安全性を確認した上ですけれども、10月にはこれを数百名程度の規模に拡大していきます。対象者を拡大します。そして、今年中には10万から20万の単位での製造というのが可能になります」
「新型コロナとの闘いは、治療薬とワクチンが非常に重要になってきます。全国初の第一歩を大阪で踏み出すことができた。なんとかこれを量産して、実用化して、府民の皆さん、国民の皆さんの命を守れるものに実現したい」
このセリフだけを聞くと、まるで吉村知事や松井市長が主導してワクチン開発を始めたかのような錯覚を覚えるが、ワクチン開発は3月5日、大阪大学の森下竜一教授と森下教授が創業したバイオベンチャーのアンジェス、製造を担うタカラバイオが立ち上げ、すでに発表していた。
ところが、4月14日になって、いきなり、吉村知事と松井市長が会見を開き、「オール大阪でワクチン開発を進める」「年内には10万から20万単位でワクチン投与させる」とぶちあげたのだ。
「森下教授は、『大阪府・市統合本部医療戦略会議』参与や『2025年万博基本構想検討会議』委員になるなど、維新とも関係が深い。その森下教授から国産のDNAワクチン計画を聞かされて、これは人気取りに利用できると乗っかった。森下教授の側も大阪大学ではなかなか治験の許可が下りないという問題を抱えており、吉村知事・松井市長が影響力のある大阪市立大学で治験を進めようという狙いがあった」(大手紙在阪デスク)
まさに手柄横取りの典型だが、もっと問題なのは人への治験開始を具体的に発表した6月17日の会見だった。
この会見をめぐっては、吉村知事が「市大の医学部附属病院の医療従事者に投与する」と発言したことについて、医療従事者から「医療従事者を人体実験に使うつもりか」「病院の職員に検査を強制する人権侵害ではないか」といった反発の声が上がり、吉村知事が「それだったら、僕を最初に治験者にしてもらっていい」などと反論する経緯もあった。
のちにアンジェスも大阪市立大学も「治験対象者は医療従事者に限らない」「あくまで募集して手を挙げた人が対象になる」と打ち消したが、吉村知事は明らかに医療従事者への投与を断言していた。行政の長が治験をおこなう予定の公立病院スタッフへの投与を宣言すれば、強制的な意味を持ってしまうのは避けられない。人権侵害、パワハラと言われても仕方がないだろう。
審査前に行政の長が「治験を実施します」と発表することの危険性
しかし、この6月17日の治験発表の会見にはもっと大きな問題がある。それは吉村知事がこの時期に治験を決定事項として発表したことそれ自体だ。
医薬品の治験は、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が必要な調査をおこなったうえ、治験をおこなう病院の審査委員会が審査して承認しないと、スタートできない。その審査はもちろん、専門家が予断をもたず、誰からの干渉も受けず、効果と安全性を客観的、科学的に検証する必要がある。
ところが、今回のワクチンについては、治験をおこなう大阪市立大学の審査が24日におこなわれたにもかかわらず、吉村知事はそれよりも1週間も早い17日に「6月30日、今月末に人への投与、治験を実施いたします。これは全国で初になる」と断言していたのだ。
これは、厳正であるべき医薬品審査の手続きを完全に無視する非常に危険な行為だ。
実際、ワクチンの開発会社である当のアンジェスまでがさすがにまずいと思ったのか、自社のHPで、〈6月16日および17日に、新型コロナウイルス感染症向けワクチン開発についての一部報道がございましたが、弊社から発表したものではありません〉と、必死で松井、吉村発言と無関係であることを強調していた。
また、吉村知事もあとになって、この会見を「方向性・目標を発表しただけ。目標を示すのは知事として必要な役割」などとごまかしていた。
しかし、6月17日の会見を聞き直しても、その中身は「目標」などというレベルではない。「6月30日から実施する」とはっきり決定事項として断言していた。
「実は、この時期、世界でいちばん開発が進んでいる英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチン供給に向けて、日本政府が交渉を始めるという情報が流れた。これが報道されると、自分たちのプロジェクトが霞んでしまいかねない。それであわてて『国内初の治験が決まった』と発表したんでしょう」(大阪府政担当記者)
しかも、問題は、単にフライング発表したというだけでなく、吉村知事や松井市長が、治験を許可するかどうかを審査する大阪市立大学医学部附属病院に予算や人事で多大な影響力を持つ行政の長であるということだ。そんな権力者が審査する前から「治験が決まった」などと発表すれば、審査は治験を認める方向に進むのは避けられない。その結果、本来指摘されるべき危険性をスルーされる可能性もあるのだ。
吉村知事の「大阪産ワクチン」前のめりに、拙速との批判も
実際、このアンジェスのワクチン開発については、吉村知事と松井市長がバックについたことで、検証プロセスが非常に拙速になっているのではないかという指摘もある。
たとえば、大阪大免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招聘教授は、時事通信の取材に対し、欧米や中国では、人への治験開始前に動物実験の詳細なデータが公開されているのに、「アンジェスは開示していない」と指摘。「承認後に死者が出たケースも過去にはある。スケジュールありきで進んではならない」と警告を鳴らしている(時事ドットコム6月30日付)。
また、吉村知事がぶちあげた今後の計画についても、危惧の声が広がっている。吉村知事は「10月に数百人規模の治験」としたうえで、「年内に10〜20万単位で製造」と発表したが、ワクチン開発は安全性を評価する第1相臨床試験、投与量などを評価する第2相臨床試験を経て、1000人以上の大規模な第3相臨床試験で安全性、有効性を評価するのが普通だ。ところが、今回は第1相、第2相臨床試験をいっしょにおこなう上、第3相臨床試験についてはまったくふれられていないのだ。
それは吉村知事の会見だけではない。アンジェスも日経バイオテクの取材に「第3相臨床試験がどのようになるかは、現時点では決まっていない」と説明していない。そんなところから、第3相臨床試験を経ないで製品化するつもりなのか、という批判の声が高まっている。
「吉村知事が最初に『10月に数百人規模の治験』『年内に10〜20万単位で製造』とぶちあげたときは、そんなスケジュールでやれるはずがなく、大ボラだと思っていた。ところが、その後の状況を見ていると、それにあわせて、ほんとうに強引な進め方をしている。これからも、何か裏技を使って、治験を簡略化しようとするのではないか」(前出・大阪府政担当記者)
「ワクチン」報道でかき消された大阪の休業要請支援金の大幅な支給遅れ
しかし、このワクチンをめぐっては、一方で、そもそも最初から有効性のあるものを完成させることができないのではないかという声もある。
「アンジェスが開発しているのは、DNAプラスミドを使った核酸ワクチンですが、このDNAワクチンはRNAワクチンやウイルスベクター型のワクチンより有効性でかなり劣るといわれている。吉村知事は派手にぶち上げているが、実際に有効性のあるものが実用化できるのかは疑問なんです」(製薬業界紙記者)
いずれにしても、この間の吉村知事の先走り言動を見ていると、ワクチンの安全性や有効性なんてどうでもいいと考えているのは明白だ。この男の頭の中にあるのは、とにかく派手な話題で「やってる感」をアピールし、それによって失政をごまかす、それだけなのではないか。
実際、このワクチンの話題はさっそく、吉村知事を助けている。実はいま、大阪では休業要請支援金の大幅な支給遅れが起きており、現場では大きな問題になっている。政府と同様、手続きの煩雑さ、システムの欠陥、支給の遅れが露呈し、6月初旬の時点で支給決定は申請の2割に満たない状況なのだ。
ところが、在阪メディアの報道はこのワクチン開発一色。休業要請支援金の支給遅れを指摘する報道はほとんどない。そして、世論は「吉村さんワクチンまで開発しはってさすがやわ〜」という声で埋めつくされている。一体、大阪府民は、いや、この国の国民はいつになったらこのペテン師の正体に気づくのだろうか。
(編集部)
最終更新:2020.07.01 04:52
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