安倍政権が元号に続き紙幣まで私物化! 異例の発表前倒しに田崎史郎も「空気を変えたかった」と政治利用を指摘

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韓国からも批判の新1万円札(財務省HPより)


「元号の政治利用」で調子に乗る安倍首相だが、お次は「紙幣の政治利用」らしい。安倍政権は2024年から発行が始まる紙幣の新デザインを発表した。ところが、これがいろんなところで物議を醸している。

 まず、ひとつは一万円札の絵柄に渋沢栄一を選んだことに、韓国から批判の声が上がっていることだ。

 たとえば、ハンギョレ新聞は「金融・通貨の分野で日本政府の代理人の役割を果たし、朝鮮の様々な利権を取得した」と報じ、東亜日報は〈日韓併合直前に日本の民間銀行が現地で流通させた紙幣の肖像に渋沢が採用されたことを紹介。韓国の歴史観に照らして波紋が起きかねないとした上で「愛国心を強調する安倍晋三首相の政治哲学と合致する」との解釈を伝えた〉(朝日新聞より)。
 
 江戸末期に生まれた渋沢は、第一国立銀行の創立などで知られる実業家だ。国内のマスコミ報道は「日本の資本主義の父」で「近代化の礎を築いた偉人」だと強調するが、韓国で「経済侵奪に全面的に乗り出した象徴的な人物」(聯合ニュース)という見方をされるのも仕方がない面はある。

 当時の日本政府は、本格的な韓国併合(侵略)に向けた地ならしのために、まず経済的進出を行ったのだが、その先鞭を担ったのが渋沢だったからだ。1878年、渋沢は当時の日本政府の対朝鮮方針に従うかたちで、第一国立銀行の釜山支店を設置。のちに第一国立銀行は実質的な韓国の中央銀行となり、流通した紙幣には渋沢の顔が印刷された。正確にいえば、1905年の第二次日韓協約で韓国は大日本帝国の「保護国」となり、1909年より中央銀行の機能は第一国立銀行から総督府体制下の韓国銀行に移行するわけだが、いずれにせよ、日本政府は韓国併合以前に韓国の金融経済の中心を掌握していたわけである。渋沢がその経済的侵略の「先導者」であるという評価は間違ってはいない。

 また渋沢は、韓国併合前年の1909年に大韓帝国の電気事業を独占していた韓美電気会社を買収し日韓瓦斯電気株式会社に改名したほか、鉄道網の整備にも関与している。渋沢が韓国への経済的侵略に積極的だったのは明らかだろう。

 ただ複数の評伝などから渋沢の発言を拾っていくと、対外戦争については、経済発展と背反するものとの認識から是々非々の立場をとっていたことがわかる。渋沢は日清戦争や日露戦争には戦費捻出などで積極的に寄与したが、台湾出兵やシベリア出兵、対華二十一か条要求には明確に反対論を唱えるなど、財界の中心人物として、政府の戦争の動きに一定の歯止めをかけようともしていた。国民の平和運動についても「軍備負担の苛重に苦しむ苦痛の叫びであり、軍備拡張に対する納税者の自覚である」と評価している。

 また、渋沢は日本人の朝鮮人差別についても批判していたようだ。1900年の講演には、同席していた銀行員を名指しして「口を極めて朝鮮を誹る、私は極めて弁護する」との発言が残っている。このあたりは見城悌治『渋沢栄一 「道徳」と経済のあいだ』(日本経済評論社)に詳しい。同書は渋沢について〈「文明人」としての振る舞いができており、意識的あるいは無知の所産として朝鮮人を見下す人々とは異なるとの自意識発露〉が見られるとしている(一方で同書は渋沢が〈「保護者」的高みから見下ろす視点にとらわれていたこともまた否定できない〉とも指摘しているが)。

 そう考えると、安倍政権にしては、リベラル寄りな人選とも言えなくはない。実際、安倍政権の国粋主義思想を考えると、神武天皇や吉田松陰を新紙幣に使ってもおかしくなかっただろう。しかし、国際社会から見ると、やはりこの人選には首を捻らざるをえない。それは韓国への配慮不足というだけではない。世界各国の通貨に描かれる肖像は、帝国主義全盛の19世紀後半から20世紀前半にかけては政治家や権力者の肖像が多かったが、第二次世界大戦後は芸術家や学者などの文化人が主流になっており、日本でもその流れを汲んでいたからだ。今回、民間人とはいえ大日本帝国の国策と近いところにいた渋沢を採用したのは、明らかにある種の反動だろう。

元号に続いて紙幣も私物化する安倍首相!政権浮揚のために異例の前倒し発表

 ただ、今回の新紙幣は、肖像の人選よりも、もっと別のところに大きな問題がある。

 それは今回、安倍政権が紙幣の新デザインを公表した時期が、明らかに従来よりも早すぎるということだ。事実、2004年11月に発行が始まった現行の紙幣デザインが発表されたのは2002年8月で、その間は2年あまり。1984年のデザイン刷新時も、発表から発行までは3年あまりだ。ところが、今回の発表は発行を予定する2024年から実に5年もの期間がある。なぜか。

 あきらかに政権浮揚の政治的効果を狙ったものとしか思えない。今月1日の新元号「令和」の発表でも内閣支持率が上昇しているように、世論は“お祝いムード”を歓迎する。麻生太郎財務省は「たまたま重なった」とうそぶいているが、そんなわけがないだろう。ようするに、元号の政治利用に味をしめた安倍政権は紙幣の新デザイン公表で二匹目のドジョウを狙いにきたわけだ。

 また、安倍首相の自民党総裁任期が2021年までであることも関係しているだろう。従来と同様に発行から2、3年前にしたのでは、自分の任期中に発表できるとは限らない。

 紙幣刷新の決定権を持つのは財務大臣だが、10日付の日本経済新聞によれば、財務省内には「安倍政権の間にやるべき」との考えがあり、2018年春頃に構想がスタート。省幹部が麻生財務相に案を示したのが昨年秋頃で、麻生自身も図柄の選定に携わり、一万円札に渋沢栄一を充てる構想を練っていたという。

 安倍首相とすり合わせを行ったのは年明けだ。10日付毎日新聞は、麻生財務相は事前に渋沢栄一らを図柄に選ぶことについて安倍首相に報告したが、〈特に異論は出ず、関係者によると「麻生氏の意向がそのまま実現した」という〉と伝えている。

御用ジャーナリスト田崎史郎も「新紙幣の発表は新元号とリンクしている」と

 10日放送の『ひるおび!』(TBS)では、財務省幹部の「『やれ』と言われた時に事務方が『すぐに出来ません』とは言えない」との言葉を紹介。官邸に近いジャーナリスト・田崎史郎氏が、「去年の6月か7月に麻生さんが印刷局を視察してるんですよ。それは、当時理財局長の太田(充)さんも一緒に行ってる。もう、その段階からやろうということになってたんだと思います」と指摘した。

 田崎氏は同日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でも、昨年6月4日に公文書改ざん問題の調査結果を発表した直後には、新紙幣に向け動き出していたと解説している。

 田崎氏ですら、新紙幣デザイン発表のタイミングについて「(準備のためだけでは)今でなければならない理由にならない」「やっぱり新元号の発表とリンクしてるんじゃないかって思わざるを得ない」「このタイミングで空気を変えたかったのでは。令和特需も意識している」とコメントしているように、発表時期はどう考えても政治判断によるものだろう。

 安倍首相は「お札を変えた総理大臣」というレガシーが欲しかったのではないか。だとすると「元号の私物化」に続いて「紙幣の私物化」と言わざるを得ない。リオ五輪閉会式での「安倍マリオ」の悪夢もそうだったが、安倍首相は何から何まで政権浮揚目的のパフォーマンスに利用している。こんな“私物化政治”をこの国の国民はいつまで許しておくのか。

最終更新:2019.04.11 10:44

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