ウーマン村本「テレビは真実を伝えてない」に宇賀なつみアナが涙浮かべ同意、一方、羽鳥慎一は黒い本性全開で全否定

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『羽鳥慎一モーニングショー』での羽鳥と宇賀アナ


 2月21日放送『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、ウーマンラッシュアワー村本大輔のテレビ批判にMCの羽鳥慎一が反論したことが大きく報道された。スポーツ紙系のニュースサイトを見ていると、羽鳥が村本の炎上商法を諌めたような話になっているが、これ、そんな格好いいものではない。

 テレビの最大の問題点を突く村本の発言に、羽鳥が“黒い本性”を全開。ジャーナリスト精神のかけらもない姿勢で、村本の発言を否定にかかったのだ。

 しかも、3月31日にテレビ朝日を退社予定の宇賀なつみアナウンサーが、村本に部分的に同意。局の報道姿勢に対する忸怩たる思いを、涙を堪えながら告白したのだが、羽鳥はその発言についても、威嚇的に否定しようとした。

 まず、経緯を説明しよう。村本の発言があったのは、『モーニングショー』内でテレビ朝日のコメンテーター・玉川徹が受け持つコーナー「そもそも総研」でのこと。

「そもそも日本人が知るべき問題とは何だろう」と題された今回の「そもそも総研」のコーナー冒頭で玉川氏はまず、辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票と、厚生労働省による毎月勤労統計の不正調査問題が、情報番組でほとんど取り扱われていないことの危惧を語る。

 コーナー前半は、玉川がウーマンラッシュアワーの村本大輔と、フリージャーナリストの安田純平にインタビューしたVTRで構成されていた。

 そのなかで村本は、情報番組で沖縄のことなどについてほとんど触れられることのない現状をこのように語っている。

「沖縄っていうのは基地でしょ? 基地っていうのは沖縄の話だけじゃないでしょ? 日本の話でしょ? 原発って福井県の話でも、福島の話でもなく、全国の話でしょ? でも、なぜかみんな聞かないじゃないですか。みんなね、考えたくないっていう装置がパーンって押されるじゃないですか。それは考えないで、楽に語れるものを求めているんですよ。遊びで語れるもの。苦しみたくないんですよ。自分たちさえよければいいから」

 そのように、「自分たちさえよければいい」という考え方が定着してしまった背景には「人々から心の余裕が失われている」という状況もあるのではないかと村本は分析する。

 沖縄の問題などは扱われない一方、ワイドショーでは「嫌韓」を煽るネタや、「中国人観光客のマナーが悪い」といったネタは日々垂れ流されている。その状況も、「心の余裕のなさ」のあらわれなのではないかと、村本は語る。

「たとえば、中国のネガティブなニュースは伝えられるけれども、ポジティブなニュースは伝えられない。でもネガティブなニュースを聞いたら、安心できる人がいるんですよ。やっぱり中国はこうだったんだ、やっぱり韓国はこうだったんだ。中国には負けたくない。だから、ネガティブなニュースは入れる、信じる。やっぱり、不安だから信じて、安心するわけじゃないですか。だから、信じたいんですよ。信じて楽になりたいんです」

 そして、村本は現在のテレビについて、このように断言した。

「不安を解消するための道具で、真実を伝えるための道具じゃない」

 村本の指摘はまさしく正鵠を射るものだと思うが、問題はカメラがスタジオに返ってきてからのやりとりだった。

宇賀なつみの「報道に憧れたけど現実は違った」発言に羽鳥が怒って詰問

 玉川からVTRの感想を訊かれた羽鳥慎一は、見たこともない非常に不愉快そうな表情で、このように吐き捨てたのだ。

「僕は違うと思います。広めるために炎上させるのはダメだと思いますね」

 また、玉川は村本の語った「(いまのテレビは)不安を解消するための道具で、真実を伝えるための道具じゃない」という言葉が刺さったと語り、テレビが安心させるための道具になっているという村本の指摘に対する感想を求めると、羽鳥はそれにもこのように答えた。

「それじゃダメなんですか?」

 いまのテレビは伝えるべきことをきちんと伝えていない──玉川が抱えるこの危機感を羽鳥はまったく共有していていないことが浮き彫りになるやり取りだったが、続けて質問を振られた宇賀アナは違った。彼女は目を潤ませ、言葉に詰まりながら、こんな思いを吐露したのだ。

「安心させるというか、娯楽として面白いもの楽しいものをつくる、伝えるというのも役割としては大切だと思いますけど、やっぱり、報道という世界に憧れて入ってきた自分は、『うーん、ちょっと現実は違ったな』と思って、情けなかったり悔しかったりすることは確かにありますね」

 これに対し、羽鳥はキツい声色で「どこが違うの? 嘘言ってるの? テレビは。言ってないでしょ」と責め立てる。宇賀アナは脅しに近い羽鳥の態度にも負けず「嘘は言ってないです。嘘はつけないから」と言葉を絞り出し、スタジオはまるで放送事故のようになった。

 普段は温厚な羽鳥の剣幕で緊迫した状況に、いつもは引っ掻き回し役の玉川が、宇賀アナをフォローしながら、このように話をまとめる。

「僕もよく思うんだけど、嘘は言ってない。ここは間違ってないんだけど、それでしかない。っていうふうなことを僕もやっていて感じることが多いんですよね」

 玉川のこの言葉は、現在のテレビにおける言論状況を象徴するような言葉だ。確かに嘘は言っていないかもしれない。しかし現在のテレビはそもそも、沖縄の問題にせよ、原発の問題にせよ、統計不正の問題にせよ、シリアの問題にせよ、国民が知るべき話題を放送することさえしていないからだ。

背景に、テレビ朝日の『モーニングショー』の政権忖度

 しかも、その変化がもっとも顕著に見て取れるのが、テレビ朝日だ。政権批判も臆せずに語ってきた小川彩佳アナが突如として番組を降板させられた『報道ステーション』や、ネトウヨ的な思想をもつ小松靖アナが司会に起用されて以降はヘイトに近い中国・韓国バッシングを繰り返すようになった『ワイド!スクランブル』など、ここ最近のテレビ朝日の報道番組は政権批判やリベラルな姿勢を失っているケースが多い。

『モーニングショー』も例外ではない。もともと『モーニングショー』は、玉川やジャーナリストの青木理などリベラルなコメンテーターのもと、政権批判も臆することなく発信してきた。

 しかし、森友・加計問題が連日テレビを賑わせていた2017年前半を境目に、だんだんと変質してきた。

 その変遷の大きなきっかけのひとつと思われるのが、「前川喜平・元文科事務次官の実名告発」を前にした安倍官邸からの圧力だ。「総理のご意向」などと記された文章は本物であるとした前川喜平氏の実名インタビューが掲載された「週刊文春」(文藝春秋)が2017年5月25日に発売、同日夕方前川氏は会見も行い、安倍政権を告発した。

 前川氏の実名告発記事の早刷りが出回った2017年5月24日に安倍首相は、テレビ朝日の早河洋会長と篠塚浩報道局長を赤坂の日本料理店「古母里」に呼んで会食を行った。報道局長まで呼びつけていることからも、報道に対する牽制があったことは明らかである。

 それでも前川氏の実名告発や読売新聞の謀略報道を扱った5月25日や、前川氏の会見を扱った26日などは突っ込んだ報道をしていた。しかしその後しばらくしてから、政権批判につながるネタは徐々に扱わなくなり、たとえ扱ったとしても、NHKの朝ドラとかぶって目立たない番組の冒頭や、もしくは、番組の最後の挨拶の部分に追いやられるといったことが増えた。たとえば同年7月の都議選街頭演説での安倍首相の「こんな人たち」発言は、他局は報じていたにもかかわらず、『モーニングショー』はかろうじて玉川がコメントで触れただけでその映像を流さなかった。

 解説者も田崎史郎などの安倍官邸御用ジャーナリストを起用し、政権に大ダメージが加わる可能性のあるスキャンダルを扱う際は、御用ジャーナリストのサポーター役としてテレビ朝日政治部デスクの細川隆三を同席させるという盤石の体制をとることが多い。

 そして、ここ最近にいたっては政権批判につながる話題をまったく扱わない日も増えた。視聴者の注目を集める芸能スキャンダルが起きているからというわけでもなく、天気や健康に関するネタなどの典型的な「暇ネタ」ばかりが放送されている。毎日中国叩き特集を繰り広げるような週もあった。

羽鳥慎一の「サラリーマン体質」こそがテレビをダメにした

 今回、玉川がこのような特集を組んだのは、『モーニングショー』自体の状況に対する危機感でもあったのだろうし、その特集を受けて涙ながらの告白をした宇賀アナにも忸怩たる思いがあったのだろう。

 ちなみに、今回の羽鳥のあまりにキツい後輩アナウンサーへの恫喝を見て、印象が変わったという声も多い。

 村本に対する強い調子での反論といい、宇賀アナへの執拗な追及といい、親しみやすいキャラクターとしてお茶の間の人気を集めてきた羽鳥が、いままで見せたことのない攻撃的な態度をとった。羽鳥がそこまで態度を豹変させたのは、村本が指摘した「真実を伝えるのでなく、安心を与える道具に成り下がっている」というテレビの現状を、もっとも体現する一人だからにほかならないだろう。

 羽鳥アナは安倍応援団でもないと思うが、空気を読み波風を立てずバランスを取ることに力を注ぐ典型的な「サラリーマン体質」の持ち主であることは間違いない。

 現在の言論状況をここまで後退させた要因として大きいのは、安倍応援団やネトウヨの存在以上に、この「サラリーマン体質」のほうだ。

 上司に逆らって睨まれたくない、政権から目をつけられるのも面倒くさいし、ネトウヨからの抗議を受けるのも面倒くさいから、ほどほどの内容におさえたい。政権批判せざるを得ないネタなら扱いたくない──そういった感覚がメディアの隅々まで浸透していった結果、時間をかけて日本社会における言論状況はここまで後退してきてしまった。

 今回の『モーニングショー』は、さまざまな面でメディアの問題点を炙り出す内容であった。

最終更新:2019.02.22 11:26

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