百田尚樹が『日本国紀』炎上中なのに調子に乗ってトンデモ天皇論まで開陳! 「皇室には不思議な力」「錦の御旗があれば勝てる」

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「FLASH」2019年1月1日・8日・15日合併号


『日本国紀』(幻冬舎)のデタラメが暴かれまくっている百田尚樹氏が、今度は今週発売の「FLASH」(光文社)2019年1月1日・8日・15日合併号のインタビューに登場。「2019年からの天皇と日本を語ろう」なるタイトルで“天皇論”を得意げに語っている……のだが、その内容がまたあまりにトホホなのである。

 まず、百田センセイは「今上陛下には、これまで日本の平和と安全をお祈りくださって、本当にお疲れさまでしたと申し上げます」と、来年4月末日をもって退位する今上天皇に“ねぎらいの言葉”をかける。そして、『日本国紀』とからめてこう語るのだ。

「私が『日本書紀』で伝えたかったことのひとつは、日本の皇室の不思議な力です。日本は万世一系の皇室のもとで国体がある、これは世界的に見て奇跡です」

 いやはや「お疲れさま」って百田センセイ、天皇に対してやけに上から目線だが、それは置いておくとしても、「日本の皇室の不思議な力」ってなんなのか? 

 百田センセイは、江戸末期に孝明天皇の許可なく日米の不平等条約を結んだ大老・井伊直弼が暗殺された桜田門外の変をあげたり、鳥羽・伏見の戦いで当初旧幕府軍が優勢だったが新政府軍が「錦の御旗」を掲げると逆転した、などと言って、「ずっと皇室は実権から離れていたのに、不思議なことです。万世一系の天皇とは、理屈を超えたものなのです」とオカルトめいたことを述べている。いや、完全に意味不明だ。

 話がアバウトすぎて突っ込む気にもなれないのだが、一応言っておくと、桜田門外の変は、単に「天皇の言うことを聞かないのはけしからん」みたいな民族派右翼テロではなく、その背景には将軍の後継をめぐる政争があったし、別に、孝明天皇もなんら政治的権力を有していなかったわけではない。

“天皇の軍であることを示す「錦の御旗」のおかげで新政府軍は勝ちました”みたいな主張も呆れるほかない。だったら聞くが、なぜ承久の乱では後鳥羽上皇に「錦の御旗」を与えられた反乱軍が破れたのか。なぜ、太平洋戦争では「天皇の旗」である軍旗を携えた日本軍が、連合国軍に完膚なきまでに敗北したのか。

 だいたい、幕末の倒幕派は天皇のことを裏で「玉」と呼び、その「玉」を奪うことで政治権力を手中に収めようとしていた。ようは「勝てば官軍」という話にすぎないのに、これを「不思議な力」などと表現するのは、ちょっと頭が悪すぎるだろう。

 だが、考えてもみれば、百田センセイの“天皇論”があまりにお粗末なのも、当然なのかもしれない。というか、このオッサン、日頃から右翼っぽいことをよく言っているが、はっきりいって「ファッション天皇主義者」とすら呼べないほど、その皇室に関する理解や思慮のなさは恥ずかしいレベルだからだ。

 たとえば、百田センセイは前述のインタビューでも「万世一系の皇室」を絶賛しているが、ちゃんと「万世一系」の意味をわかって使っているのか自体危うい。

 なにせ『日本国紀』では、序文で〈我が国、日本は神話の中の天孫の子孫が万世一系で二十一世紀の現代まで続いているとされている。こんな国は世界のどこにもない〉などと誇る一方、少し読み進めると、天皇家の血は途中で断絶しているという説=王朝交代説をアッサリと採用。〈現皇室は継体天皇から始まった王朝ではないかと想像できる〉と書いているからだ。ようは、百田センセイは“万世一系の皇統”を否定しながら、かたや“万世一系の皇室を戴く日本は万邦無比”というふうに語っているのである。矛盾にもほどがあるだろう。

 それだけではない。そもそも天皇や皇室に対して真面目な興味関心があるのかどうかも大いに疑問だ。

『朝生』で得意げに皇室論を語るも木っ端微塵に論破された百田尚樹

 たとえば、2017年5月に百田センセイが『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に初出演したときのこと。番組冒頭の皇室議論のなかで、百田センセイは、今上天皇が生前退位の特例法などに不満を漏らしていたという5月22日付毎日新聞一面の報道について、「宮内庁否定したでしょ? 公式に否定したんでしょ」などとギャーギャー騒ぎ出したのだが、そこで司会の田原総一郎から、「あなたね、8月の天皇の『おことば』見た? 聞いた?」と聞かれると、なんと悪びれることもなく「聞いてない」とのたまったのである。

 つまり、愕然とすることに、百田センセイは今上天皇が国民に直接語りかけた「おことば」のビデオメッセージも聞かず、知り顔で皇室について語っていたのだ。

 ちなみに、当時の放送のなか、この百田センセイの「聞いてない」発言に対して、さすがに小林よしのりが「めちゃくちゃだよそれ」と嘲笑すると、百田センセイはビキッときたらしく「聞いてないだけやん!」と逆ギレ。だが、続いて小林から「『おことば』聞かずに語ったってしょうがないじゃないかそんなもの!」と一喝された百田センセイは、思わず目が泳ぎ、その情けない表情をカメラにバッチリ抜かれてしまっていた。

 こういう皇室に対する理解や不勉強を鑑みても、この作家の“ナンチャッテ天皇主義者”ぶりは明らかだろう。しかし、こういう態度は、なにも百田センセイに限った話ではなく、安倍応援団の面々の多くに共通するものだ。

 たとえば、2015年の誕生日に際した記者会見で今上天皇が踏み込んだ護憲発言をした際には、八木秀次氏が「宮内庁のマネージメントはどうなっているのか」と批判。ちなみに、八木氏は「神武天皇のY染色体を継承できるのは男系男子だけ」などと主張しているが、言わずもがな実際に男性のY染色体を辿って行き着くのは“神話”ではなく類人猿である。生前退位をめぐっても、安倍首相が有識者会議のヒアリング対象者にねじこんだ平川祐弘・東京大学名誉教授が、記者団にたいして「天皇はおかしい」とまで発言している。

 ようは、普段、天皇主義者のツラをしている“ナンチャッテ国士”の安倍応援団たちは、実のところ「万世一系の天皇を戴く国体」なる時代錯誤かつフィクショナルな価値観を宣伝したいだけなのだろう。しかも、百田センセイにかんしては、肝心の「万世一系」の理解すらめちゃくちゃで、“皇室は不思議で理屈を超えた力をもっているから日本はすごい”というような、あまりに雑な話にもっていこうとする。あまりに低レベルとしか言いようがないではないか。

 むしろ、百田センセイには今後もトンデモな発言を繰り返してもらって、連中の主張がいかに御都合主義にまみれたペテンであるかを、どんどん広めていってほしいものだ。

最終更新:2018.12.26 12:27

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