ゴーンだけじゃない、巨額報酬の経営者がこんなに! ソニー平井、ソフトバンク孫正義、ユニクロ柳井…

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カルロス・ゴーン  『国境、組織、すべての枠を超える生き方 』(私の履歴書) 

 衝撃が走った日産自動車のカルロス・ゴーン会長の逮捕。容疑は、2011年から15年までの間の報酬が49億8700万円とする有価証券報告書の記載が過少報告で実際は99億9800万円だったとする有価証券報告書の虚偽記載だった。

 今回の逮捕の裏では、捜査に日産社員が協力することで刑事処分が軽減される司法取引制度が適用されたと報じられており、その問題点については別稿で報じたが、「ゴーン逮捕」で沸くテレビ報道で、引っかかりを覚えずにはいられない問題がある。

 それは、違法性が批判されても、もともとの報酬の高さがまったく問題になっていないことだ。それどころか「ゴーン会長の役員報酬はけっして高くない」「日本の役員報酬は他のグローバル企業にくらべれば安いくらい」「欧米はもっと高い」ということを口にするコメンテーターまでいる。

 必ず「日産のV字回復の立役者」「コストカッター」などと称賛するように紹介されるゴーン会長だが、その実態は2万人を超える人員削減や工場閉鎖、下請け企業の切り捨てによってもたらされたものにすぎない。にもかかわらず、その報酬を「安いくらいだ」と強調する……。

 だが、これは大きな間違いだ。たしかに、アメリカやヨーロッパのグローバル企業の役員報酬は日本の大企業にくらべて高いが、一方でそれが強い批判の対象となってきた。実際、2016年の仏ルノーの株式総会では、ゴーン会長兼CEOの報酬約9億円が高すぎると株主の約過半数が反対、フランス政府も法規制を検討する事態になっている。米国ですらリーマンショック後、大企業の高額な役員報酬に大きな批判が集まり、保険大手であるアメリカン・インターナショナル・グループのCEOだったエドワード・リディは年間報酬を1ドルにし、自動車のビッグスリーもそれにならったこともあった。

 そもそも、欧米のグローバル企業と肩を並べる業績の日本企業がどれだけあるというのか。そうした肝心な部分は無視して役員報酬だけはグローバル水準であるべきだと主張すること自体がどうかしているが、こうした高額役員報酬は日産やゴーン会長に限ったことではない。

「週刊朝日」(朝日新聞出版)2018年7月13日号に掲載された役員報酬額トップ40によると、1位はソニーの平井一夫会長で27億1300万円。2位から4位まではソフトバンクグループの役員が占め、ロナルド・フィッシャー副会長が20億1500万円、マルセロ・クラウレ副社長COOが13億8200万円、ラジーブ・ミスラ副社長が12億3400万円とつづき、5位は武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長で12億1700万円。そのほか、自動車業界のトップであるトヨタ自動車はディディエ・ルロワ副社長が10億2600万円で8位。日産のゴーン会長はこのランキングでは14位で、今回、所得隠しと指摘されている分を足したゴーンの報酬よりも、多くの金をもらっている経営者がいるのだ。

 しかも、この役員報酬以外にも、企業経営者の驚くべき高額報酬の実態がある。たとえば、ソフトバンクグループの取締役会長兼社長である孫正義氏は上記の役員報酬のランキングには登場しないが、報酬総額は103億1000万円(『役員四季報 2019年度』東洋経済新報社)とダントツ。ファーストリテイリング取締役会長兼社長の柳井正氏もやはり役員報酬ランキングには登場しないが、報酬総額が82億8500万円と孫氏に次いで2番目に高い。

 なぜか。孫氏も柳井氏も、役員報酬は数億円にすぎず、報酬総額の大半が株式などの配当収入が割り当てられているからだ。実際、孫氏は約103億円の報酬収入のうち配当収入は101億7300万円、柳井氏も約83億円のうち配当収入は80億4500万円にものぼる。

役員報酬の高額化の一方で、給与は減少、非正規雇用は増加

 そして忘れてはならないのは、大企業優遇の税制のなかで役員報酬が高額化することで、従業員の給与との差が開きつづけているということだ。

 たとえば、前述したソニーの平井一夫会長の役員報酬約27億円に対し、従業員の平均年間給与は1013万円で、268倍もの差に。ソフトバンクグループのロナルド・フィッシャー副会長の報酬と同社の従業員給与差は174倍、日産のゴーン会長の報酬(注・過少報告の数字)は同社従業員給与と比較すると90倍となる(前出「週刊朝日」より)。

 このような役員報酬の高額化は、小泉政権時に顕著となった。1980〜1990年代は企業の経常利益、役員給与、株主配当、従業員給与はほとんど横並びの推移だったというが(「AERA」2009年7月13日号/朝日新聞出版)、変化が表れたのは小泉政権が発足した2001年ごろ。資本金10億円以上の役員報酬は2001年度で1425万円だったが、これが2005年度には2811万円と2倍に増加。2002年から07年まで日本は「いざなぎ景気の再来」と呼ばれるほど景気が拡大したと言われ、役員報酬も株主配当も内部留保も増えていったが、しかし、そんななかで従業員の給与だけは減少した。

 この間、何が起こっていたかといえば、労働者の非正規化と、株式持ち合いの解消が進んだことで外国人投資家が増加したことだ。

〈非正規労働者の雇用を進める政策のおかげで、低賃金の派遣社員や請負労働に企業が依存するようになった〉一方、増加した外国人投資家は〈欧米並みの収益を上げるよう、株主として日本企業に圧力をかけた〉(前出「AERA」)。つまり、労働者の非正規化で企業が支払う給料を減らすことで、役員報酬や株主配当という利益を増やしたのだ。

欧米では、富裕層による富の独占に批判が高まっているのに日本は…

 富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなる──。高額化した役員報酬は、まさしく新自由主義による格差拡大の象徴だ。しかも、安倍政権はその格差をさらに拡大させようとしている。消費増税を強行する姿勢を示す一方で、富裕層を優遇する金融所得課税を据え置いたり、法人税をさらに減税する方針を見せているからだ。

 米国では、オキュパイ運動、2016年大統領選挙における“バーニー・サンダース旋風”、先日行われた中間選挙での「社会民主主義者」と自ら名乗るアレクサンドリア・オカシオ・コルテスらの躍進などがあったが、高額報酬、富裕層による富の独占と格差拡大は世界中で重要なイシューになっている。

 ところが、日本は逆だ。ゴーン会長の疑惑が浮上したにもかかわらず、マスコミでは「日本の役員報酬はけっして高くない」ということが強調され、国民の間からも、高額報酬そのものへの批判の声はほとんど聞こえてこない。

 かつては「もっとも格差のない国」などと喧伝されていた日本だが、いまや米国につぐ有数の格差大国で、このままいくと、先進国のなかで「もっとも格差のある国」になるのも時間の問題だろう。

最終更新:2018.11.30 07:33

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