Wikiコピペ疑惑の百田尚樹『日本国紀』を真面目に検証してみた! 本質は安倍改憲を後押しするプロパガンダ本だ

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百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)

 発売されるや否や、その記述の矛盾が次々に指摘されて騒動となっている百田尚樹の『日本国紀』(幻冬舎)。ネット上では有志による検証が着々と進んでおり、とくに盛り上がっているのがWikipedia等からの“コピペ疑惑”の追及だ。

 本サイトもチェックしてみたが、たしかに、いまネットで指摘されている『日本国紀』の複数の記述は、Wikipediaの文章をほんの少しいじったり省略したりしたものであることは明白だった。一例を挙げると、『日本国旗』は国旗の「日の丸」についてのコラムでこう書いている。

〈日輪のマークは天下統一の象徴であり、源平合戦の折も、平氏は「赤字金丸」、源氏は「白地赤丸」を使用した。それ以降、「白地赤丸」の日の丸が天下統一を成し遂げた者の象徴として受け継がれていったといわれている。〉

 一方、Wikipediaの「日本の国旗」の項目では、出典なしでこう記されている。

〈古代から国家統治と太陽は密接な関係であることから日輪は天下統一の象徴であり、平氏は御旗にちなんで「赤地金丸」を、源氏は「白地赤丸」を使用した。平氏が滅亡し、源氏によって武家政権ができると代々の将軍は源氏の末裔を名乗り、「白地赤丸」の日の丸が天下統一を成し遂げた者の象徴として受け継がれていったと言われる。〉

 見ての通り、使用している語彙のみならず文章構成もほとんど一緒で、とりわけ〈「白地赤丸」の日の丸が天下統一を成し遂げた者の象徴として受け継がれていったといわれている〉(『日本国紀』)の部分はWikipediaの記述から〈言われる〉をひらがなにしただけだ。百田センセイは本日20日の『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)で「この本を書くのにね、山のように資料を揃えた。そのなかにはね、そりゃWikipediaもあるよ!」と開き直っていたが、このザマでは“コピペ”と揶揄されるのも仕方がないだろう。

 著名人からも問題視する声が出ている。作家で法政大学教授の中沢けい氏は、11月17日に〈あのさ。レポートを出典明示なしのコピペで提出するとカンニング扱いになって、処分対象になるんだ。停学になるの。定価をつけて市販されている本が出典明示なしのコピペだらけって、仮に著作権侵害が成立してなくっても、版元は回収すべき事案じゃないかな〉とTwitterで指摘した。

 いずれにせよ、一部では“日本ウィ紀”“日本コピペ紀”などと呼ばれて、騒動がどんどん広がっていきそうな気配をみせている。ただ、コピペ疑惑も重要ではあるが、同時に深めていかなくてはならないのは、「はたして百田センセイはこの本で何をやりたかったのか」という視点ではないか。そのためには、同書全体をあらためて俯瞰し、紹介する必要があるだろう。

 そもそも『日本国紀』は、第1章「縄文時代」から終章「平成」までの全14章からなる、自称〈当代一のストーリーテラーが、平成最後の年に送り出す、日本通史の決定版!〉(帯より)だ。しかし、同書を通読した筆者から言わせてもらえば、その内容は、とりわけ近代以降は従来の保守派や右派の主張をパッチワークしているだけで、特段の目新しさは感じられず、端的に評すと「退屈」の一言で済む。

 ただし、「退屈」は「無害」とイコールではない。むしろ、その叙述(コピペ疑惑箇所含む)の凡庸さに耐えながら、著者・百田尚樹の主張のエッセンスを抽出し、繋ぎ合わせると、同書は概ねこのような起承転結の構成と理解できる。

【起】日本は太古から素晴らしい国であり、日本人は素晴らしい民族である(=日本スゴい言説)

【承】日本は外国と戦争をしたが、それにはやむを得ない理由があり、悪とすることはできない(=侵略戦争・戦争犯罪の否認と矮小化)

【転】ところが敗戦後、GHQによる占領政策および「洗脳」が日本の国柄や日本人の精神を破壊した。さらに、現在も大手メディアはこれに協力し続けている(=「東京裁判史観」批判および「WGIP洗脳」)

【結】いまこそ素晴らしい日本人の精神を復活させるべきであり、とりわけ憲法9条改正は急務である(=安倍改憲のPR)

“日本スゴい!”を喧伝し、侵略戦争・戦争犯罪を矮小化

 まず、【起】は近年の出版ムーブメントのひとつである“日本スゴい!言説”の亜種である。たとえば『日本国紀』の冒頭(「序にかえて」)は〈日本ほど素晴らしい歴史を持っている国はありません〉との一文から始まる。古代、中世、近世、近代にいたるまで、このような日本および日本人を絶賛するトーンは随所にみられる。いくつか引用しておこう。

〈我が国、日本は神話の中の天孫の子孫が万世一系で二十一世紀の現代まで続いているとされている。こんな国は世界のどこにもない。〉
〈「太陽が昇る国」──これほど美しく堂々とした国名があろうか。しかもその名を千三百年も大切に使い続けてきた。それが私たちの国なのである。〉
〈〔引用者注:律令時代の身分制度について〕これらを見ると、日本の身分制度は諸外国と比べて、厳格なものでないのがわかる。中国やヨーロッパ社会における奴隷制度に相当するものは、日本には存在しなかったといえる。〉
〈私は、日本人は世界のどの国の国民にも劣らない優秀な国民だと思っている。これまで述べてきたように、文化、モラル、芸術、政治と、どの分野でもきわめて高いレベルの民族であり国家であると確信している。しかし、幕末における幕閣の政治レベルと国際感覚の低さだけは、悔しいながらも認めざるをえない。〉

 続いて【承】の「侵略戦争・戦争犯罪の否認と矮小化」だが、これは明治から第二次世界大戦までの記述に顕著である。ここからは、日本の帝国主義と侵略、戦争犯罪を否定ないしは美化し、同時に「敵国」の残虐行為を強調することで相対化する狙いが読み取れよう。

 たとえば、日清戦争については〈日本が清と戦った一番大きな理由は、朝鮮を独立させるためだったのだ。朝鮮が清の属国である限り、近代化は難しかったからである〉と記し、韓国併合については〈日本は大韓帝国を近代化によって独り立ちさせようとし、そうなった暁には保護を解くつもりでいた〉〈韓国併合は武力を用いて行われたものでもなければ、大韓帝国政府の意向を無視して強引に行われたものでもない〉などとする。まるで日本が「善意」によって清の支配から「解放」し、朝鮮半島を「近代化」させてあげたかのような書きぶりだが、朝鮮での大きな抵抗運動が示すように、日本が不平等条約と併合を強要し植民地化したのが史実だ。

 日本の中国侵略に関しても、いわゆる対華二十一カ条要求について〈一部の希望条件を除き、当時の国際情勢において、ごく普通の要求だった〉などと評価しているが、実際には要求を飲ませるために軍事圧力に出ながら最後通牒を行っている。また、張作霖爆殺事件については〈事件の首謀者は関東軍参謀といわれているが、これには諸説あって決定的な証拠は今もってない〉と書き、含みをもたせている。しかし、歴史学的には河本大作が首謀者であると定説が固まっており、極右界隈ががなり立てる「ソ連工作員犯行説」は陰謀論として否定されている。

関東大震災の朝鮮人虐殺と南京虐殺もおきまりのロジックで否定

 また百田センセイは、日中戦争(支那事変)についても〈ただ、日本が戦闘を行ったのは、そもそもは自国民に対する暴挙への対抗のためであって、中華民国を侵略する意図はなかった。「暴支膺懲」というスローガンが示すように「暴れる支那を懲らしめる(膺懲)」という形で行った戦闘がいつのまにか全面戦争に発展したというのが実情である〉などと書いている。さも「自国民を守るために仕方がなかった」「挑発したのは中国側」と言わんばかりだが、そもそも日本の大陸侵略の意図がなければありえない話であって、ペテンとしか言いようがない。

 関東大震災での朝鮮人虐殺や南京事件(南京虐殺、あるいは南京大虐殺)などについては、「人数」をクローズアップし、「(大)虐殺ではない」と結論づけて矮小化を図るという、歴史修正主義定番のレトリックも健在だ。

 ちなみに、百田センセイは朝鮮人虐殺について、当時の司法省報告にある殺害された朝鮮人の人数「233人」(実際には起訴された事件の犠牲者数に過ぎないのだが)をあげつらい、〈流言飛語やデマが原因で日本人自警団が多数の朝鮮人を虐殺したといわれているが、この話には虚偽が含まれている〉などとして、決して「虐殺」の事実を認めない。

 ところが、日中戦争初期の通州事件については〈この事件は、「冀東防共自治政府」〔中略〕の中国人部隊が、通州にある日本人居留地を襲い、女性や子供、乳児を含む民間人二百三十三人を虐殺した残酷な事件である〉と説明し、明確に「虐殺」と評価する。なお、通州事件は、日本の戦争犯罪を相対化するために極右界隈がよく持ち出す話だが、『日本国紀』で百田センセイのいう「民間人233人」の具体的根拠を、筆者は寡聞にして知らない。なお、天津日本総領事館北平警察署通州分署「在通州居留民(内地人)名簿」および「在通州居留民(朝鮮人)名簿」では日本人114人、朝鮮人111人の合わせて225人(日本人将校、特務機関員、警察関係者は含まず)である(広中一成『通州事件』講談社)。もちろん犠牲者数がすべてではないが、念のためインターネットで検索すると「233人」とするネット右翼系のブログがヒットした。いや、本当に根拠がわからないので是非、百田センセイに教えてほしい。

 いずれにしても、百田センセイは〈大東亜戦争は決していわゆる「侵略戦争」ではなかった〉などと言い張り、日本の戦争犯罪を矮小化・正当化しようとするのである。しかし、言うまでもなく、こうした記述はほとんどの歴史教科書には見られない。だからこそ、百田センセイは歴史教科書にどうして書かれていないかを説明する必要に迫られる。

 それこそが、【転】にあたる「東京裁判史観批判およびWGIP洗脳」である。この敗戦から戦後にかけての叙述こそ、『日本国紀』のクライマックスと言ってよいだろう。

「WGIP洗脳で日本人の精神が破壊された」の陰謀論を全開する百田

「東京裁判史観」の定義は使う者によって様々だが、たとえば「我等の戦った大東亜戦争を(1)挑発を受けざる内に先制攻撃に出、(2)その動機が交戦相手国の領土・資源の占有であったが故に「侵略戦争」であり、国家の行った犯罪行為である、と決めつけたもの」(小堀桂一郎)と説明されるように、十中八九、極東軍事裁判(東京裁判)に代表される戦後処理を“戦勝国による敗戦国への不当な行為”とみなす右派の用語である。後ろに「史観」がつくのは、東京裁判を含む日本の戦後処理の後では「誤った歴史認識(=自虐史観)」が「いまもって中学校や高校で教えられていて、日本中に害毒を流し続けている」(渡部昇一)との見方をするからだ。

 さて、ここまで見てきたように、『日本国紀』が「東京裁判史観」を批判するよう組み立てられていることは自明なので、他方の「WGIP洗脳」について説明したい。まずは百田センセイによる記述を引用する。

〈もう一つ、GHQが行った対日占領政策の中で問題にしたいのが、日本国民に「罪の意識」を徹底的に植え付ける「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」(WGIP:War Guilt Information Program)である。これはわかりやすくいえば、「戦争についての罪悪感を、日本人の心に植え付けるための宣伝計画」である。
 これは日本人の精神を粉々にし、二度とアメリカに戦いを挑んで来ないようにするためのものであった。東京裁判もその一つである。そして、この施策は結果的に日本人の精神を見事に破壊した。〉
〈何より恐ろしいのは、この洗脳の深さである。GHQの占領は七年間だったが、それが終わって七十年近く経った現在でも、多くの日本人が「戦前の政府と軍部は最悪」であり、「大東亜戦争は悪辣非道な侵略戦争であった」と無条件に思い込んでいる。〉

 さらに百田センセイによれば、GHQは「公職追放」や「教職追放」でGHQに批判的な政治家や教育者を排除し、かわりに官僚を多く輩出する東京大学などを〈「WGIP」の推進者〉によって〈支配〉させた。新聞社や出版社などの言論界にも〈GHQの指名〉で〈彼らの覚えのめでたき人物〉が入ってきて、〈これにより、多くの大学、新聞社、出版社に、「自虐史観」が浸透し、GHQの占領が終わった後も、「WGIP」を積極的に一般国民に植え付けていくことにな〉ったと主張する。

 ようは、日本人はこのWGIPなるGHQの施策によって、「日本は侵略戦争をしていない」などの「(右派の言う)正しい歴史認識」ができなくなってしまい、現在でもマスコミがGHQの名代となっていることで、「すべて日本が悪かった」なる「洗脳」が解けていない、というのである。

 はっきり言って荒唐無稽だが、別に驚くほどでもないのは、これが最近の自称保守論壇で流行しているネタの使い回しでしかないからだ。

WGIPの真実、保守派の学者からも「そんな大それたものでない」の指摘

 もともとWGIPの存在自体は、1989年に保守系文芸評論家の江藤淳が『閉された言論空間 占領軍の検閲と戦後日本』(文藝春秋)で指摘したものだ。以降、保守界隈で受け継がれ、近年では『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと』(高橋史朗/致知出版社)、『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』(ケント・ギルバート/PHP研究所)などの“WGIP史観本”が密かな出版ブームになっている。

 しかしながら、敗戦後にGHQの主導のもとで、新聞・ラジオを通じたプロパガンダや出版物の検閲などがおこなわれたことは事実であっても、それが戦後70年経った今も「国民を洗脳している」と呼ぶべき状況とみなすのは、陰謀論的解釈にもほどがあるだろう。

 だいたい、WGIPは「日本の右派にとって“歴史戦の決戦兵器”」(能川元一)としてもてはやされる一方で、学術的研究や検証があまり進んでいるとはいえない。

 たとえば保守派の歴史学者である秦郁彦氏ですら、WGIPについては〈江藤は「戦後日本の歴史記述のパラダイムを規定するとともに、歴史記述のおこなわれるべき言語空間を限定し、かつ閉鎖した」と、高橋史朗は「日本人へのマインドコントロール計画」と評すが、果たしてそんな大それたものだったのか〉と疑問を呈している(『陰謀史観』新潮社)。

 また、これは哲学研究者の能川元一氏も指摘している(「“歴史戦の決戦兵器”、「WGIP」論の現在」『徹底検証 日本の右傾化』筑摩書房、所収)ことだが、江藤のWGIP論には決定的な弱点があった。それは、江藤自身も認めるように、敗戦直後に仕掛けられたはずの「日本国民洗脳計画」が、実のところ、当初は明らかに十分な効果をあげられなかったという事実だ。実際、サンフランシスコ講和条約の1952年には、全国的に戦犯の釈放運動が広がっている。

 十分な学術的研究が蓄積しないまま、保守論壇で一人歩きしてきたWGIPについて、膨大な資料をもとに検証した研究者の賀茂道子氏(名城大学非常勤講師)は、今年刊行した著書のなかで、「ウォー・ギルト・プログラム」は「敗戦の真実」と「戦争の有罪性」を国民に認識させるための情報教育政策だったと説明している((『ウォー・ギルト・プログラム GHQ情報教育政策の実像』法政大学出版)。

 占領開始直後のGHQは、日本軍による残虐行為が一切報道されていないことと、国民に罪の意識がないこと驚いたという。さらに日本政府も「無条件降伏」の解釈の違いから非協力的であり、戦争犯罪については公にしようとしなかった。そのため注力されたのは、軍事的に完全に敗戦したという事実と、言論弾圧が戦争を導いたこと、そして国民に隠されていた日本軍の残虐行為や非人道行為を明かすことだったという。

 賀茂氏によれば、資料の検討の結果〈「ウォー・ギルト・プログラム」と東京裁判は一体のものではなく、プログラムの施策の一つとして、東京裁判判決を理解させることが含まれていた〉。また、前述の戦犯釈放運動についても〈もし本当に残虐行為に対する有罪性が理解できていたとしたら、はたしてこれほど大規模な運動が繰り広げられたであろうか。つまり、この運動の盛り上がりは、「ウォー・ギルト・プログラム」による「戦争の有罪性」が、国民に理解されず浸透しなかったことを意味している〉と記している。

 一方で、「戦争の有罪性」が全体的には受け入れらなかったとしても、プログラムが完全に失敗に終わったわけではないという。賀茂氏は〈東京裁判の意義の一つとして、これまで隠されていた真実が明らかになったことが挙げられるが、「ウォー・ギルト・プログラム」もまた、一貫して真実の提示をモットーとし、隠された事実を日本国民に開示した〉とも指摘している。

結論は〈憲法改正と防衛力の増強は急務である〉とのプロパガンダ

 百田センセイは『日本国紀』において、WGIPが占領下で効果があがらなかったことについては〈戦前に教育を受けてきた国民の多くには、心の深いところまで自虐思想が浸透しなかった〉〈ところが、昭和一〇年代の終わり(戦中)以降に生まれた人たちは、小学校に上がった頃から、自虐思想を植え付けられた人たちである。何も知らない白紙の状態の柔らかい頭と心に一つの思想を注入された時の効果は絶大である。〔略〕不幸なことに、この世代は戦前の日本すべてを否定する日本人として育てられたのだ〉と御都合主義的に展開し、〈彼らの自虐思想は、親の世代が生きた戦前の日本を全否定するまでに膨張し、さらに「反日」という思想が生み出されていく〉などと畳み掛けているが、あまりにも議論が雑すぎるだろう。

 たしかに戦中と戦後で価値観の転換はあったが、それは第一に日本が敗戦したという事実に基づき、第二に戦争の非人道性という事実に基づく。どうしてその事実を知らされることが「洗脳」になるのか。逆に言えば、天皇は事実としては人間であるにもかかわらず「現人神」と教えることこそ「洗脳」ではないのか。加えると、百田は戦後のGHQによる検閲やプロパガンダは「洗脳」の装置として評価するが、戦前・戦中の日本政府と軍部による言論弾圧や思想統制には一切触れない。どうしてか? もうバラすまでもなかろう。

 『日本国紀』は、日本と日本人は太古から素晴らしかったと喧伝する。だが、私たちはその「素晴らしい日本」が侵略戦争を起こし、未曾有の加害と被害をもたらしたことを知っている。だから百田センセイは「日本は侵略戦争をしていない」などと真逆のこと言うために、「国民は戦後に洗脳されて続けている」とうってでる。そして結論、〈日本にとって憲法改正と防衛力の増強は急務である〉とちゃっかり安倍首相の改憲のPRしながら、こんなポエムで締めくくるのである。

〈「敗戦」と、「GHQの政策」と、「WGIP洗脳者」と、「戦後利得者」たちによって、「日本人の精神」は、七十年にわたって踏み潰され、歪められ、刈り取られ、ほとんど絶滅状態に追い込まれたかのように見えたが、決して死に絶えてはいなかったのだ。二千年の歴史を誇る日本人のDNAは、私たちの中に脈々と生き続けてきたのだ。それが今、復活の時を迎えている──。〉

「もう好きに言ってろ」と吐き捨てたくもなるのだが、これが百田尚樹というベストセラー作家の名前で出されただけで、売れに売れてしまうのだから驚く。何度でも言うが、『日本国紀』はこうやって真面目に解説するのも辟易するぐらい退屈な本だ。しかし、この状況はいささかも退屈ではない。むしろ、筆者としては、すでに中身ではなく、「どうやったらこんな本が売れるのか」のほうに興味が移っている。

 ちなみに、ネット上の指摘によって知ったのだが、この本は実際のタイトル通り「日本国紀」でツイッター検索をかけると、検索結果は批判的意見がほとんどを占めるが、「日本国記」とタイトルの漢字を1文字間違えて検索すると、絶賛、称賛だらけの結果になる。

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