横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」22

米軍トモダチ作戦を追ったドキュメントで番組改変が! 担当者も「日テレ報道の魂は『安倍に忖度』という事」と報告

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『「放射能とトモダチ作戦」米空母ロナルドレーガンで何が?』(日本テレビ)


 日本テレビのNNNドキュメント『「放射能とトモダチ作戦」米空母ロナルドレーガンで何が?』(10月9日放送)で、安倍政権に忖度する番組改変が行われた。

 放送10日前に突如削除されたのは、9月25日に小池百合子都知事(希望の党代表)と面談をした小泉純一郎元首相。去年5月に訪米、「福島第一原発事故による放射能被曝で健康被害が出た」と訴える米軍兵士にヒアリングをした小泉元首相は、被曝兵士救済に動かない安倍政権の姿勢に呆れて支援基金を設立。訪米時の涙の記者会見が全国放送されるなど、トモダチ作戦被曝兵士の存在を広めるのに貢献したキーマンだったのに、番組から消し去られてしまったのだ。

 日本テレビのホームページには、こう紹介されていた。

〈東日本大震災でトモダチ作戦として支援活動した米空母ロナルドレーガン。乗員ら4百人超が放射能による健康被害を受けたと訴訟中だ。死者計9人に…空母で何があった?〉
〈福島第一原発の事故。汚染されたのは東日本の陸上だけではなかった。実は、放射性物質の約8割は太平洋上に流れ込んでいたともいう。そして東北沖で“トモダチ作戦”として支援活動していたのが米空母ロナルドレーガン。当時、艦内では放射能アラームが鳴り響いていた。乗組員の兵士らは次々と放射能による健康被害を訴え死者は計9人に。そして米兵ら400人以上が訴訟を起こしている。空母で一体何があったのか?〉

 東京電力などを相手取った被曝兵士の損害賠償訴訟を当初から支援、小泉元首相に訪米を勧めたジャーナリストのエイミー辻元氏(日系四世で被爆二世)は、こう振り返る。

「番組制作に全面的に協力してきましたが、9月29日、日本テレビの担当プロデューサーから『今回放送の番組の中の小泉氏の登場シーンは全てカット』というメールが届いたのです」

 日本テレビの担当者が9月29日3時23分に送信したメールには、番組改変の経過が次のように綴られていた。

日テレ担当者も「日テレ報道の魂は『AB(安倍)に忖度』という事」と吐露

〈本日二度目のチーフプロデューサー、プロデューサー原発班をいれてのプレビュー(著者注:放送前視聴)が行われました。そこで日本テレビ報道局の総意として以下の業務命令が出ました。
「今回放送の番組の中の小泉氏の登場シーンは全てカット」というものです。(中略)8日放送(著者注:9日未明放送)ギリギリで小池氏が政権交代を目指し衆院選立候補になったりした場合、脱原発で小泉氏が小池氏を応援コメントなどをする可能性が高く、そうなった場合、対応不可となる場合があるからとの説明でした。
放送法では『告示期間中』に限定されているのですが、小池=小泉は影響が大きすぎて期間直前でもだめだという局の判断との事。結局、日テレ報道の魂は『AB(著者注:安倍政権)に忖度』という事なのです〉

 小泉元首相の登場シーンがすべてカットされた理由も、次のように列挙されていた。

〈■選挙が目前である事
 ■選挙期間中は出馬する人、選挙に影響する人を一方的にOAしないという放送法の決まり事がある事
 ■希望の党が脱原発を公約、選挙の争点にした事
 ■希望の党設立の会見後に小池・小泉が会って協力を臭わせた事
 ■さらに政権政党奪取のために都知事を辞して小池氏が衆院選に出る可能性が出てきている事
 ■それが放送ギリギリにわかって、小泉氏が応援する事にでもなると放送直前の直しが間に合わなくなり、放送に穴が空くから
との理由からです。守りきれませんでした。申し訳ありません〉

 安倍政権に異常なまでの配慮をした日本テレビの姿勢が浮き彫りになるようだ。選挙中の公平報道原則を拡大解釈することによって、被曝兵士救済に動こうとしなかった安倍政権の冷たい姿勢(職務怠慢)と、「政府が動かないのなら民間が動いて支援する」という小泉元首相の思いを隠蔽したのだ。

 メールに列挙された理由も根拠薄弱としか言いようがない。小泉元首相は「原発ゼロ社会実現」やトモダチ作戦被曝兵士の実情を訴える全国講演行脚を続けていたが、そのときの囲み取材や会見で「選挙で特定の政党や候補者を応援をすることはしない」と繰り返し述べていた。25日の小池都知事との面談後も、選挙応援を否定したのはこのためで、「(小池氏を)小泉氏が応援すること」は起こりえない事態だった。妄想的想定を根拠の一つにして日テレは、被曝兵士救済に動かなかった事実(安倍政権の職務怠慢)を隠蔽したといえるのだ。

安倍一強状態がつくり出した、テレビの政権忖度

 これまでNNNドキュメントは、2015年10月4日に『南京事件 兵士たちの遺言』を放送するなど、硬派な番組制作を続けてきた。しかし今回は、第二次安倍政権の一強多弱状態が4年半以上も続くなか、安倍政権に忖度する日本テレビ上層部の強い意向に逆らえず、軍門に下ったようにみえるのだ。

 先のエイミー辻元氏は、こう話す。

「被曝兵士が今回の番組を見たら『なぜ小泉元首相が出て来ないのか』と全員が首を傾げるでしょう。是非、小泉元首相が登場した場面を入れた続編を放送して欲しい」

 総選挙の投票材料となる事実を隠蔽、国民の知る権利を侵害した今回の番組改変事件は徹底的に検証されるべきだろう。

最終更新:2017.10.19 12:34

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