釈放されてもやまない「高畑裕太=発達障害」説にひそむ偏見…発達障害は犯罪予備軍などではない!

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YouTube「ANNnewsCH」より


 強姦致傷容疑で逮捕された高畑裕太が、昨日、不起訴処分となり釈放された。裕太の弁護士は書面によるコメントで〈違法性の顕著な事件ではない〉〈裁判になっていれば、無罪主張をした〉と発表しているが、検察は不起訴の理由を公表していないため、釈放にいたった詳細は不明なままだ。

 弁護士側の書面が事実なら逮捕そのものが冤罪だった可能性もあるし、一方では、その「合意だと考えていた」という高畑サイドの主張がセカンドレイプではないのか、という指摘もある。

 しかし、今回の報道については、事件の真相とは別に気になることがあった。それはあたかも高畑裕太の今回の事件が、彼が「発達障害」だったため起きたかのような報道がなされていることだ。

 事実、釈放された際も、裕太が報道陣に対して謝罪した際の様子が「異様」だったとして、ネット上ではこんな声があがっている。

〈空気を読まないで叫んだり、長く頭を下げたり、思わず記者を睨み付けるような表情になったりしてたが、これらも発達障害の特徴だろう〉
〈この顔つき、発達障害児のそれですよ〉

 こうした「高畑裕太=発達障害」という見方は、逮捕後にワイドショーやスポーツ紙がこぞって「空気が読めなかった」「子どものころから問題児だった」「他人との距離感がつかめていなかった」などと騒ぎ立てるなかで広がっていた。

 そんななかでも、今週発売の「女性セブン」(小学館)は「高畑淳子 アトピー ぜんそく 発達障害 息子の呪縛22年の落とし穴」と題し、発達障害と今回の事件をつなげて記事にしていた。

 この記事では、裕太が幼いころからアトピーやぜんそくもちで母の淳子が苦労していたことにくわえ、裕太が言葉を覚えるのが遅かったことや教室の机のまわりがゴミだらけだったことなどを記述。その流れで、過去のインタビューにおいて淳子が「明らかに発達障害だと言われたこともあった」と明かしていたと強調。〈高畑は息子に絶えず胸騒ぎを覚えていた。発達障害と言われたことも、高畑の脳裏から消えたことはなかったという〉と述べ、そこからは発達障害の説明がつづくのだ。

 記事中では、〈裕太容疑者が発達障害であるかどうかはわからず、ましてや発達障害と犯罪が結びつくということは断じてない〉と断ってはいるが、これはほとんどアリバイづくりのようなもので、まるで裕太が発達障害であるがゆえに淳子が周囲の子との違いを気にしすぎて過保護に育ててしまった、と誘導するかのような記事となっている。

 だが、「女性セブン」の記事のように安易に犯罪事件と発達障害を結びつけたり、ネット上における「彼は発達障害」と断定する行為は、“発達障害は犯罪者予備軍だ”という偏見を生み出す、とても危険なものだ。

 こうした傾向は、2014年に長崎県佐世保市で起こった15歳の少女による同級生殺害事件の影響もあるだろう。この加害者の少女は自閉症スペクトラム障害であったというが、このような事例が発達障害と犯罪を結びつけるきっかけになっているはずだ。

 そもそも、発達障害と犯罪に何らかの因果関係はあるのか。今年5月に放送された『NNNドキュメント 障害プラスα〜自閉症スペクトラムと少年事件の間に〜』(日本テレビ)では、浜松医科大学教授で医師の杉山登志郎氏が、不良行為やそのおそれがある児童などが入所する児童自立支援施設で調査を行い、その結果、入所していた102人中75%以上が自閉症スペクトラム障害であることが判明したという。

 しかし、杉山医師は、自閉症スペクトラム障害であることが犯罪に結びつくのではけっしてなく、犯罪にいたる可能性が高まるのには「+αの要因」があると解説する。その「+α」とは、過剰な叱責や虐待、学校でのいじめといった「追害体験」だ。実際、杉山医師の調査では、自閉症スペクトラム障害を抱える人が虐待を受けることで非行に走る確率は3.7倍、ネグレクトだと6.3倍にも増えるという。

 もちろん、こうした虐待経験と非行の関係は、障害をもつ人だけの話ではない。だが、障害をもっていることで、親から虐待を受けたり、学校でいじめられる可能性もまた高くなるという現実がある。

 つまり、「発達障害=犯罪予備軍」などではまったくなく、むしろ虐待やいじめといった追害に目を向けるべきなのだ。自閉症スペクトラム障害に限らず、発達障害を抱える人たちは、同調圧力の強い社会のなかで「ほかの人と同じようにできない」「空気を読めない」などと批判やいじめの対象となりやすく、そんななかで居場所を失い、社会から孤立してしまうことも多い。その問題を、まずは見つめなくてはならないのではないか。

 昨年、『あさイチ』(NHK)で、自身が発達障害のひとつである注意欠陥障害だと告白したモデルの栗原類は、公表後、ブログでこんな想いを綴っていた。

〈皆と合わせるのが当然かもしれないと言うのは学校や集団の中に属していたらそれは避けられない事かもしれません。だけど、その中に理解してくれる人、調整役となってくれる人、そんな人がいたらそれだけで過ごしやすい環境が少しずつ出来ていくのではないのか〉

 現在の社会は「みんなと合わせられない」ことをとかく責め立て、栗原氏の思いとは逆に理解のための思考をシャットアウトし、今回の事件で明らかになったように犯罪と結びつけて障害を語り、「異端」として社会から排除しようとする。そうした無根拠な言説こそが社会悪なのだということが、もっと議論の俎上に載せられるべきなのではないだろうか。
(田岡尼)

最終更新:2017.11.24 06:46

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