騙されるな! 小池百合子は“女性の敵”だ! 待機児童を狭い部屋に詰め込み、女性だけに育児押しつけ、性差別丸出しの少子化論も…

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小池百合子オフィシャルサイトより


 本サイトでは先日、東京都知事候補者である小池百合子氏がいかに国際都市の首長にふさわしくないヘイト体質の持ち主であるかをお伝えしたが、今回は彼女のもうひとつの一面にスポットを当てたい。

 それは、小池氏の大きなアピールポイントになっている「初の女性都知事」という面だ。

 現に、小池氏は出馬表明会見においても、「女性が輝くということで進めておられますけども、それを体現できるのが東京の『女性知事』ではないかと思っています」と強調した。

 くわえて、“自民党のオッサンどもにパージされそうになっても、都民のためにひとりすっくと立ち上がったジャンヌ・ダルク”という笑止千万なイメージ(なぜこれがお笑いなのかというのは後述する)も手伝い、小池氏=初の女性都知事誕生に期待を寄せる声が高まりはじめた。その一例が、現代美術家スプツニ子のツイートだろう。

〈私は小池百合子さんに都知事になってほしいな、パワフルな女性として素直に尊敬する〉
〈小池百合子さんが都知事になったら、女性をはじめ多様な声を東京の未来にガンガン反映してほしいな〉

 もちろん、女性都知事の誕生を願う声があがるのは、男性支配的な政治の世界において、女性の地位や生活向上の意見を都政に反映してほしいという願望ゆえで、唯一の女性候補である小池氏に期待したい気持ちは理解できる。

 だが、はっきりと断言しよう。小池氏には、女性の声を政治に反映させようというような意志はおろか、女性がいま置かれている立場や生活不安を理解しようという気は、まったくない。むしろ、石頭な男性議員なんかよりももっとゴリゴリのマッチョ思考をもった女性だ。

 たとえばそれは、小池氏が今回の都知事選で掲げている「ダイバーシティ」(多様性)政策を見てもあきらかだ。

 まず、選挙公約には、〈「待機児童ゼロ」を目標に保育園受け入れ年齢、広さ制限などの規制を見直す〉とあり、小池氏は保育園の規制緩和策を打ち出している。だが、現状でも保育園設置の面積最低基準は狭く、小池氏の政策は“子どもをさらに狭い場所に詰め込めることができる”ようにするだけだ。当然、こうした規制緩和策には、保育関係者や保護者のあいだから安全面や健康面の観点が抜け落ちていると批判が上がっている。

 しかも、小池氏は街頭演説で、保育園問題の根本になっている保育士の待遇改善について、“お給料を上乗せするという平面的ではない小池式の考え方”があると主張。「空き家ですよ! 空き家はたーくさんあります」と前置きして、こんなことを話している。

「(保育士に)その空き家でもって生活をしていただくことが、真の意味の待遇改善に繋がると、このように思うんですがいかがでしょうか! 家を使うんです!」

 つまり、保育士の給料は増やさないが、「ただ空いているアパート、ちょっと古びた一軒家」(小池氏)に住まわせてやる、と言うのである。

 規制緩和で無人になっているアパートが保育園になり、狭い部屋に子どもたちがぎゅうぎゅう詰めにされ、ついでに保育士たちもそうした場所に押し込められる。──小池氏の話からは地獄絵図のような状況しか目に浮かばないが、こんな政策をドヤ顔で「真の待遇改善だ!」と言える神経がさっぱり理解できない。

 さらに、育児支援の策として、小池氏は〈保育ママ、保育オバ、子供食堂などを活用〉と謳っている。

 これにはもう、「厚顔無恥もいいかげんにしろ」と言いたい。そもそも子供食堂というのは、政府および行政に共働きやシングルの家族へのフォローがないため、地域に住む人びとが自発的かつボランティアとして行ってきた活動だ。これを育児支援として“利用”することは、行政の責任をまったく自覚していない証拠だろう。

 また、小池氏は「保育ママ、保育オバを活用する」というが(「保育オバ」という謎ワードへのツッコミはとりあえず置いておく)、どうして子育てにかかわる人間を女性に限定させるのか。小池氏は“女性の活躍を体現できるのは女性知事の私しかいない”と胸を張るが、結局は保育を女性にだけ押し付け、男性が子育てに参加する機会を奪っているに過ぎない。

 つまり、小池氏に“女性ならではの提言”などなく、保育問題にかんしてはむしろ現状より悪化させそうな策しか打ち出していないのである。もし、いま東京で暮らす女性たちや子どもが置かれた環境について真剣に考えているのであれば、こんなあほらしい政策は恥ずかしくて出せるはずがない。

 しかし、女性を小馬鹿にしているとしか思えない小池氏のこうした政策は、ある意味、本人の思想を見れば深く納得できるものだ。

 実際、小池氏は、自身のオフィシャルサイトで、少子高齢化の原因について、このような論考を披露している。

〈(少子高齢化の問題は)今時の女性が結婚に価値を見いださず、結婚したいと思わなくなったことにある。「この人の子供を生みたい」という気にならないことにある〉
〈社会心理学的には、女性はどんなに社会的、経済的に強くなったとしても、どこかで、誰かに守ってもらいたいという「シンデレラ・コンプレックス」を持つものである〉

 小池氏はどんな女性も庇護されたいと思うものだと断言しているが、「シンデレラ・コンプレックス」という概念の生みの親である作家のコレット・ダウリングは、女性は自立しようとしても内面に成功への恐怖が生まれるために自立を邪魔していると指摘し、それは幻想だと看破したのだ。当然、「女はこうあるべき」という規範が社会に根強いために女性たちは“成功してはいけない”と葛藤するのであって、女性が生まれもって「誰かに守ってもらいたい」と考える生き物だというわけではない。小池氏のように「女ってこういうもの」と押し付ける人間こそが、女性の経済的自立を妨げてきたのだ。

 こうした性別による差別を助長させてきた古い価値観を、小池氏は「伝統的」などと呼んで守ろうと言うのだが、もちろん、規範を押し付ける相手は女だけではない。小池氏は果たして、男性にも“強さ”を強制する。

〈ところが、最近の男性は女性化する一方で、むしろ自分が守ってもらいたいような母性愛を求める傾向が強いようだ。このすれ違いこそが女性に結婚や出産を思いとどまらせる原因となっているのではないか。つまり、頼もしい男性が決定的に減っていることこそが、少子化の最大の原因というのが小池説である〉

 男はもっと強く頼もしく、女はそれに守られる存在であれば少子化にはならない。……って、これ、たんなる昭和のオッサンの説教とまったく同じ。小池氏の他の政策のトチ狂いっぷりを見ていると、都知事になったら“草食系男子版戸塚ヨットスクール”でも開く気なのではないか、と心配になってくるほどだ。無論、こうした性別による規範を強いる人間なのだから、LGBTの権利向上など語れるはずがない。ダイバーシティの意味なんて、いまだに理解できていないんじゃないだろうか。

 いや、ダイバーシティを理解しないだけではなく、小池氏はきっとどれだけ自身の“マッチョイズム”を批判されようと、その考えをあらためることはないだろう。というのも、それは彼女の処世術であり、“生き方”そのものだからだ。

 思えば小池百合子氏は、“政界の渡り鳥”と呼ばれるように、つねに時の権力者にぴったり寄り添ってキャリアをアップさせてきた人物だ。

 留学経験を活かして通訳やコーディネート業に就いていた小池氏がメディアの脚光を浴びたのは、『竹村健一の世相講談』(日本テレビ)のアシスタントを経て、1989年に『ワールド・ビジネス・サテライト』のキャスターに抜擢されたときだろう。この番組で財政界との人脈を広げた彼女は、92年に日本新党から参院選に出馬。このとき小池を口説いたのは細川護煕氏だが、対する小池氏も〈細川に似合うネクタイを贈ったり、そのネクタイが曲がっていると見れば辺り構わず直したり〉(伊藤惇夫「文藝春秋」2007年10月号掲載レポートより)と、甲斐甲斐しく細川氏に寄り添った。

 だが、細川氏が求心力を失うと、「あの人はダメなのよ」「殿様の限界を知らなかったのよ」と批判。3年後、細川氏が離党した際には、「もっと早く出ていってほしかった」「(ゴルフに喩えると)結局、池ポチャかOBになる人です」(「週刊朝日」97年7月4日号/朝日新聞出版)と手のひらを返してみせた。他方、同時に小池氏は、今度は小沢一郎氏と距離を縮めていく。事実、小沢氏の元側近である平野貞夫氏は「ほんの少し前までは細川のネクタイを選んでいた小池が、今度は小沢さんのネクタイや洋服を選び、マスコミへの対応について細かく教えているんですからね」(前出「文藝春秋」)と、小池氏の当時の無節操ぶりを証言している。

 しかし、小沢氏が自民党との連立を解消すると、またもあっさり小沢をポイ。そして“小泉フィーバー”の到来に合わせて小泉純一郎氏にすり寄り自民党に鞍替えすると、入党からたったの9カ月で環境相に抜擢されたのだ。このとき、ふたりは結婚説までもが流れる親密ぶりで、ときには小池氏が小泉首相に手づくり弁当を届けるほどだった。

 ネクタイを選び、弁当をこしらえ、覚えめでたく大臣にのぼり詰める。──結局、男性支配の政界でのしあがるのはそんな方法なのかと絶望的な気持ちになるが、そうした人生すごろくも、人事問題で防衛相を辞任して以降、そりの合わない安倍晋三氏が首相となったことによって頭打ちとなってしまった。

 前出「文藝春秋」の記事では、小池氏と交流のある議員が、小池氏が初当選したころ、こんな言葉を口にしていたことを証言している。

「政治家なら、誰だって権力が欲しいわよ。頂点に立たないと」

 議員になって間もないのに、すでにそのときから総理大臣の椅子を目指していた小池氏。しかし、自民党内はいまや安倍一強体制が築きあげられてしまった。完全に行き詰まった小池氏に残された道……それこそが「都知事」の座を手にすることだったのだ。

 その軌跡を踏まえれば、“自民党から圧力を受けても立ち上がった勇敢な女性”という小池評は、ちゃんちゃら可笑しい。あえて言うなら、小池氏は“寄生する権力者が国政にいなくなったから都知事に乗り換えた”だけで、ゆえに掲げる政策も、自民党イズムを継承した市民に責任を押し付けるゴリマッチョなシロモノばかりになってしまうのだ。

 だからこそ、最後にもう一度言っておきたい。小池氏は“自民党にパージされても腐敗した都政に挑むジャンヌ・ダルク”などでは決してない。ヘイト体質も、政治資金の使い方も、保育園問題など社会福祉に対する姿勢も、そして女性や性的マイノリティへの視線も、安倍自民党のそれとまったく同じであり、「反自民」というポーズはとんだ“茶番”でしかないのだ。

 清楚な山の手セレブマダムふうの見た目に騙されてはいけない。あれは仮面だ。内面はたんなる上昇志向と権力欲で膨れあがった昭和ジジイなのだということを、どうかくれぐれも忘れないでほしい。
(田岡 尼)

最終更新:2016.07.22 05:17

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