参院選直前企画⚫極右候補者ガイド(前編)

徴兵制、生存権否定、ヘイトデマまで…参院選・極右候補者リスト「ウヨミシュラン」発表! 星3つの政治家は誰だ?

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左・片山さつき 公式ホームページより/右・山谷えり子ホームページより


 いよいよ投開票日を迎えた参議院選挙。本サイトは昨日、自民党がホームページで「子供たちを戦場に送るな」と言う教員を取り締まる“密告フォーム”を設置していたことを伝えたが、安倍政権からしてみれば、こんなものは常識の範囲内なのだろう。というのも、今回、自民党が立てた参院選候補者といえば、憲法否定や歴史修正はもちろん、明らかに戦前回帰をスローガンにする“極右”政治家ばかりだからだ。

 侵略戦争の歴史を修正し、子どもたちに報国を押し付け、国民の自由を剥奪しようと考え、はては核武装、徴兵制まで企んでいる人たちが大量にいる。そこで本サイトは、こうした極右候補者たちを北は北海道から南は沖縄、比例代表までズラリとリストアップ。さらに、そのファナティック加減を3段階で評価してみた。

 名付けて“2016年参院選「ウヨミシュラン」ガイド”である。それでは、最高(?)評価の星3つの御仁たちから張り切って紹介していくので、ぜひ、参考にしていただきたい。


■ネトウヨの女王は生活保護だけじゃなく憲法の「生存権」まで否定!
☆☆☆ 片山さつき(自民党/比例)

 ネット右翼から絶大な支持を受け、ヘイト団体のデモに嬉々として飛び入り参加し、ネットのデマを懲りずに繰り返し発信することで定評のある“リアルネトウヨ”こと片山さつき氏だが、彼女はあの2012年自民党憲法改正草案の起草メンバーの一員でもある。そんな片山氏の憲法観は前近代的というよりも、ただただ恐怖の一言だ。

〈国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です。国があなたに何をしてくれるか、ではなくて国を維持するには自分に何ができるか、を皆が考えるような前文にしました!〉(片山氏のツイッターより)

 ようするに、すべての人間に生まれつき備わっているはずの人権を剥奪し、国民を徹底的に国へ隷属させる憲法にしよう、というわけである。さらに生活保護をバッシングした著書のなかでは、「不正受給」の原因は〈「最低限度」に加えて「健康的で文化的な生活」というものを規定した憲法にある〉として、このように書いている。

〈現在の日本国憲法が作られるまで、わが国には「生存権」の保障という考え方はありませんでした。〉
〈私は自民党憲法改正案の23人の起草委員のひとりとして、本来勤勉である日本の伝統を壊してしまったこのような憲法の改正に向けても活動しています。〉(『正直者にやる気をなくさせる!? 福祉依存のインモラル』オークラ出版)

 人間が人間らしく生きる、そんなあたり前のことですら、片山氏や自民党にとってはナンセンスなもの、ということらしい。今回の参院選で与党は改憲という争点をひた隠しにするが、連中がそうする理由も、こういうイカれた本音を見れば納得できるというものである。

■意味不明な「八紘一宇」発言…出世欲丸出し“スカ極”政治家の罪
☆☆☆ 三原じゅん子(自民党/神奈川)

 この金八女優がいきなり自民党から国政に出馬してから6年、どうしてこんなにウヨってしまったのか。とくに2015年3月16日、参院予算委での質問の中で、「ご紹介したいのが、日本が建国以来、大切にしてきた価値観、八紘一宇であります」と言い出したのには耳を疑った人も多かっただろう。

 念のため確認しておくと「八紘一宇」とは、戦中日本のアジア侵略戦争、大東亜共栄圏を正当化するために用いられたスローガンだ。日蓮主義者の宗教家・田中智学が日本書紀をもとにして造った言葉で、平たく言えば、皇国史観のもと世界を一つに束ねるという意味である。

 当然、この「八紘一宇」発言は物議を醸したわけだが、これについて三原氏は「正論」(産経新聞社)15年6月号でこう正当化している。〈「八紘一宇」は、今まさに我々が直面する課題、つまりグローバル資本主義の暴走、利己的個人主義の行き過ぎといった問題に対処するときの指針になるということを、広く知って欲しかった〉。意味不明だ。そもそも、新自由主義政策を次々と打ち出して「グローバル資本主義」に邁進しているのは当の自民党ではないか。

 しかし、三原氏の中身のスカスカな極右発言は「八紘一宇」だけではない。2011年、当時ノリに乗っていた田母神俊雄サンと対談した際、三原氏は日本の防衛についてこのように語っていた。

〈国防とか経済って全部丸い円でつながっているんです。国防が強ければ経済も強くなれる。国防はボディで、経済が顔ってところですかね。私風に言えば、「顔も大事だけどボディを鍛えな」(笑)〉(「FRIDAY」11年1月21日号/講談社)

 これまた極右オヤジやネトウヨにこそウケそうだが、中身はトンチンカン。もしかしてこの人は、軍備増強の結果、経済を悪化させてしまったかの国のことを知らないのだろうか? 同じく自民入りしてから急に右旋回した“ヤンキー先生”こと義家弘介衆議院議員にも通じるものがあるが、ようするに、いまの自民党には、こうした異様に底が浅い極右発言を繰り返さなければのし上がれない空気が蔓延している。そういうことだろう。

 その意味では、こういうスカスカ極右政治家(略してスカ極)の罪は非常に重い。ゆえに星3つである。


■教育完全無償化で子どもを戦地へ 卑劣な“徴兵制”を企む極右政治家
☆☆☆ 大家敏志(自民党/福岡)

 先に紹介した片山さつき氏にしろ三原じゅん子氏にしろ、その知名度もウヨっぷりも全国区だが、しかし、地方の候補者には彼女たちほど有名ではないにせよ筋金入りの極右がたっぷりといる。そのひとりが福岡の自民現職・大家敏志氏だ。

 ルックスが岩明均の名作マンガ『寄生獣』の広川市長に似ていると一部でささやかれる大家氏だが、その極右思想はホンモノ。もともと、同じ福岡県出身の“参院のドン”村上正邦氏の秘書を務めていた大家氏は、日本最大の右派組織「日本会議」や神道政治連盟の議連に所属。そのホームページの政策の項目で目を引くのが〈青少年健全育成の追求〉だ。

〈将来を担い、次代に活躍する若者たち。この若者たちを国家や地域・家族を愛する心をみなぎらせる者たちに育て、日本を将来の倫理大国へと導いていきます。〉(公式HPより)

 この「健全育成」「倫理大国」とはなにか? 自民党の機関紙「自由民主」10年4月20日号で、大家氏はこう書いているのだ。

〈新生児から義務教育を通じて、皇室を敬い、地球を愛し、国を愛することを教え、危険が迫ったときは立ち上がる心をもった国民になるよう子供たちを育てていかなければならない。このことが、将来の倫理大国建設につながる大きな柱になるものと考えている。〉

 いや、この“危険が迫ったときは立ち上がる国民になるよう育てる”って、完全に“自発的に兵士にさせる”ってことだろう。つまり、義務教育を通して子どもたちに“愛国教育”を強制し、いざとなれば「お国のために!」と進んで戦場へ向かうよう洗脳しましょう!と言っているのだ。文句なしに☆3つである。

 わが子を戦地へ送りたくないと思うお母さん、お父さんたちには、本当にこういう政治家に投票していいのか、よくよく考えてみてもらいたい。


■安倍首相直々に出馬要請した“極右改憲イデオローグ”の歴史修正主義
☆☆☆ 山田宏(自民党/比例)
 
 元杉並区長で前衆議院議員の山田宏氏だが、区長時代から「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書採択に尽力し、南京大虐殺の否定、外務省のHPから従軍慰安婦に関する記述を削除させるなどなど、歴史修正運動を展開。日本の戦争に対しても雑誌の対談でこんな持論を展開している。

「日本は蒋介石の中華民国とは戦ったが、ほかのアジアの国々とは戦っていなない。アジアの諸地域を植民地にしていた欧米と戦ったのである。『あの戦争が侵略だと規定することは自虐でしかない』と言った石原慎太郎(当時・日本維新の会)共同代表の指摘こそ正論であると、私は思っている」(「正論」2013年8月号)

 また、民族差別の意識も相当根深く、先の衆院選ではツイッターで〈今年最高裁は「生活保護費を外国人に支給することは違憲」との判決を出した〉というデマツイートを行った。最近も例の「保育園落ちた」ブログに対して、「まあ落書きですね」「『生んだのはあなたでしょう』『親の責任でしょ、まずは』と言いたいところだ」などと述べたことでも問題となったのは記憶に新しい(さらに直後、不倫隠し子が発覚するというオチつき)。

 そんな極右丸出しの山田氏だが、先の衆院選では極右政党・次世代の党から出馬して落選。すると落選が決まってすぐに、安倍首相が直々に電話してきて、自民党からの出馬を要請されたという。夕刊フジ15年10月23日付によれば、このとき安倍首相は「これからぜひ国をよくするために力を貸してほしい」と山田氏に語り、その後、菅義偉官房長官からも「首相は、(山田氏は)国にとって惜しい人物なので自民党として救いたい、と言っている」とベタ褒めされたらしい。

 安倍首相が山田氏を自民党に迎え入れた理由はなにか。それは、山田氏を改憲の“鉄砲玉”として使うためだろう。今年3月、都内で開催された日本会議の集会に出席した際、山田氏は「現行憲法は占領時代にGHQが1週間で作ったのだから無効。とくに9条2項に絞っては発議をかけるべきだ」と熱弁を振るったという。

 今回の参院選で、自民党は改憲発議に必要な3分の2議席の獲得という争点を徹底的に隠しているが、山田氏を“極右改憲イデオローグ”として引き入れたことこそが、安倍首相の本音を物語っている。

■ヘイト御三家もバラバラに…ネトウヨに頼った極右政党の最期
☆☆☆ 西村眞悟&中山成彬(日本のこころを大切にする党/比例)

 2014年の衆院選で大敗を喫した次世代の党が、日本のこころを大切にする党と名前を変えてリニューアルしたはいいものの、比例でかろうじて1議席を取れるかどうかという極めてキビシイ状況。まあ、ネトウヨ頼りの選挙戦という時点でハッキリ言って終わっているのだが、しかし、やはり「ウヨミシュラン」ともなれば、この方々を無視するわけにはいかないだろう。

 中山成彬氏といえば、08年9月に麻生内閣の国土交通大臣に就任したと思ったらわずか4日で辞任したことで有名。原因は「(成田空港反対派の住民は)ごね得」「日本は単一民族」「日教組の強いところは学力が低い」というトリプル暴言。近年でも「自分の子や近所の娘が連行されるのを黙って見ていたのか。そんなに朝鮮人は弱虫だったのか」など、差別主義丸出しの発言を連発している。

 同じく“ネトウヨの神”こと西村眞悟センセイといえば、もう何度も繰り返すのもアレではあるが、小渕内閣での防衛政務次官時代に雑誌のインタビューで「集団的自衛権は『強姦されている女を男が助ける』という原理ですわ」「柔らかい乗り物(女)には乗れませんけど、カタイ乗り物には乗り放題ですわ」などと放言。ちなみに、去年の年末には『国家の覚醒 天壌無窮、君民一体の祖国日本』なるイカツイ表題の本を展転社から上梓したが、やはり内容はお察しのとおりだ。

 当然、この2人はあまりにもレベルが高すぎて「ウヨミシュラン」でも☆3つの殿堂入りである。しかし、本サイトとして気になるのは、やはり「日本のこころ」という党の行く末だ。かつての同志である平沼赳夫センセイは離党、石原慎太郎センセイは引退、そして田母神俊雄センセイは逮捕。“ヘイト御三家”と呼ばれた重鎮が次々いなくなり、今回の選挙でもかなりの苦戦が伝えられている。

 あれだけネトウヨのこころを熱くさせた、たちあがれ日本→次世代の党→日本のこころという極右政党の系譜は、完全に終焉に向かいつつあるということだろう。ここは大好きな武士道精神とやらで、とっとと潔い幕引きを願いたいところだ。


■日本会議ご推薦!自作のトンデモ憲法前文で「脳内お花畑ぶり」を発揮!
☆☆☆ 山谷えり子(自民党/比例)

 自民党のなみいる極右候補者のなかで、最も存在感を発揮しているのはやはりこの人、山谷えり子氏だ。在特会との蜜月写真も記憶に新しく、日本会議も組織として推薦することを明かしている(「週刊ポスト」6月24日号/小学館)。

 山谷氏と言えば、本サイトでも何度も指摘しているように、トンデモ教育理論「親学」の推進やジェンダーフリーバッシングが有名だ。とくに望まぬ妊娠を“自己チュー”の一言で済ます感覚はもはや常軌を逸している。

〈子どもは男女がご縁で結ばれて授かる、掛け替えのない存在でしょう。ところが教科書では中絶を女性の自己決定権、基本的人権という言葉で正当化するのです。何という浅はかなエゴイズムなのだろうか〉(「正論」14年8月号)

 もちろん、山谷氏は女性の人権だけをないがしろにしているのではない。人権そのものを敵視しているのだ。自民党憲法改正草案の起草委員会の一員だった山谷氏は、とくに、現憲法の平和主義を明確にした前文の《平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した》という文言を〈意味のよくわからない他力本願〉〈どうにもこうにも自信と誇りが持てません〉(『日本よ、永遠なれ』扶桑社)などと腐している。

 まったく、憲法前文や9条を“お花畑”と揶揄するネトウヨ並みのリテラシーだが、実は彼女は自前で“山谷版”憲法前文を書いており、同書に記している。ともあれ、見てみよう。

〈四季のめぐり、恵みあふれる大八洲、豊葦原瑞穂の国に生まれ育ったわたくしたち日本国民は、睦み和らぎ、徳を高め、勤め励んで、平和の国、文化の国、道義の国として歩んできました。
 美しい日本の国柄を誇り、喜びとして、これからも正直、親切、勤勉、節度、品位、調和(大和)、献身、進取の気性をもって、諸国民との協和の中で輝く自由と民主主義の国として歩みます。〉

 なんだろう、コレ。ことばが完全に上滑りしていて、まるでネトウヨの作文、それこそ蝶々が飛ぶような“脳内お花畑”そのものである。そもそも、憲法は為政者の権力を縛るためのものという大前提がこの「作文」にはまったくない。さらに「正直、親切、勤勉……」などという個々人の性格を憲法で規定しようとするのはなぜなのか。本当に、頭がクラクラしてくる。

 憲法学者の小林節慶應大学名誉教授は、雑誌の鼎談記事で、山谷氏や自民党の憲法観を一刀両断している。以下に引用するので、いったいどちらの考え方がまともか、読者諸賢に判断してもらいたい。

〈復古主義は、反知性主義の極みだと思います。「あの時代に戻ろう」、「明治時代の日本人は凛々しかった」、「民族が唯一自ら作った明治憲法に戻れ」と山谷えり子さんは言うわけですけど、ちょっと訳がわからない。統帥権が独立して軍隊が勝手に暴走したり、表現の自由も基本的人権もなくて、特高警察が跋扈して司法手続きもなしにしょっ引かれたり、そういう社会が素晴らしいというのでしょうか。挙げ句の果てに、愚かな戦争に突入して負けてしまったわけでしょう。戦後の日本は、自由で平和な国を築いてきたわけですから、大きな犠牲を払って良い憲法を手に入れたと私は思っていますよ。〉(「文藝春秋」15年5月号)

…………………………

 いかがだっただろうか。繰り返すが、参院選候補者のなかには、こうした国民の権利を剥ぎ取り、国家に尽くすことを強制させたいと考えている極右政治家がたんまりといるのだ。本記事ではとりわけファナティックな星3つの人たちを紹介したが、これはまだまだ氷山の一角。本サイトでは星2つ、星1つ候補者を選挙区別に紹介した記事を同時公開しているので、ぜひそちらも確かめてみてほしい。

 投票に行くのは、「ウヨミシュラン」を読んでから。あなたの「清き一票」が、あなたの自由や権利を踏みにじることになるなんて、決してあってはならないのだから。
(編集部)

最終更新:2016.07.11 11:22

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