ハーフ差別で炎上の社会学者・古市憲寿が自民党の「歴史修正主義」運動に参加! 背後に稲田朋美との近すぎる関係

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左・稲田朋美HPより/右・『だから日本はズレている』(新潮新書)


 社会学者の古市憲寿がまた炎上している。1月1日の『ワイドナショー』(フジテレビ)でウェンツ瑛士の小さい頃の写真が紹介されたことを受け、「ハーフってなんで劣化するの早いんでしょうね」と発言したのだ。

 これは、特定の属性の人たちを何の根拠もないまま乱暴にひとくくりにする明らかな差別発言だが、古市はウェンツに怒りのツッコミを受けると、さらに「ウェンツさんのことじゃなく、一般的に劣化が早くないですか」とだめ押しをした。

 この発言に対して、ネットユーザーから「なんだ、このひどい差別発言は」「ルッキズムとレイシズムの盛り合わせだろ。最低だな」といった批判が殺到。同じ社会学者の北田暁大からは、そもそも人間に対して「劣化」という言葉を使うことの問題点も指摘された。

 だが、古市のこうした差別発言は今回に始まったことではない。一昨年には「テレビで中学生くらいの子たちが合唱してるんだけど、顔の造形がありありとわかって辛いから、子どもたちももっとみんなメイクしたり、髪型や髪の色をばらばらにしたほうがよいと思う」とツイート。やはり容姿差別だという批判の声が巻き起こり、当該ツイートを削除する事態に発展した。

 この少し後、古市は「新潮45」(新潮社)2015年4月号で発言を歪曲されたと弁明したが、その際も「日本には、人を容姿で差別することを禁じる法律はない。」と、差別の上塗りのようなことを書いて、読者を呆れさせている。

 古市のテレビやSNSでの発言に関しては、自覚的に挑発的な言葉を口にしているもので、炎上は織り込み済みという見方もあるが、発言が飛び出した状況と事後の慌てぶりを見たら、そんな上等なものではないのは明らかだろう。この若手学者の根っこには、隠しようのない外見至上主義と差別感情があり、炎上発言はそれが無自覚なままダダ漏れになっているにすぎない。

 さて、そんな古市くんだが、最近、意外な役職に抜擢されたことをご存知だろうか。そう。自民党が立ち上げた「歴史を学び未来を考える本部」にオブザーバーとして起用されたのだ。

 先日も本サイトで取り上げたが、この「歴史を学び未来を考える本部」は安倍首相が肝いりでつくらせた総裁直属の組織。しかも、実質的な仕切り役はあの稲田朋美政調会長だ。稲田は弁護士時代、戦時中の南京大虐殺で「百人斬り」で処刑された元少尉2人の名誉毀損訴訟を担当。初当選翌年の06年に議員連盟「伝統と創造の会」 を結成すると、みずから会長に就任する。野党時代のいまから5年前には、竹島に近い韓国領の「鬱陵島」を視察しようとして入国拒否された。安倍の肝いりで閣僚に就任したのちも、毎年靖国参拝を欠かさない。

 そんな人物が本部長代理として仕切っているのだから、この組織が狙っているものは明らかだ。事実、「歴史を学び未来を考える本部」発足に先立つ11月28日、安倍首相は「憲法改正をはじめ占領時代につくられた仕組みを変えることが(自民党)立党の原点だ」との演説をぶち、同本部長である谷垣禎一幹事長は、先の大戦後のGHQによる占領政策や現行憲法の制定過程、慰安婦問題や南京事件を検証するという方針を明かした。

 しかし、だとしたら不可解なのは、偏向した議論がおこなわれるのが明らかなこんな会のなかに、古市のような若手学者が入っている理由、だろう。古市は前述のように、無自覚な差別意識がだだ漏れすることはあっても、頭の悪い歴史修正主義に与するという印象はなかったはずだが……。

 この一見、ミスマッチに見える取り合わせの背景には、同本部の仕切役・稲田朋美と古市の最近の急接近ぶりがある。古市は14年4月から開催された「第2期クールジャパン推進会議」の委員に選ばれているのだが、この時、担当大臣を務めていたのが、特命担当大臣の稲田だった。

 そして、二人は会議を通じて、どんどん親しくなり、関係は稲田が政調会長に転出してからも続いた。最近は、古市が自分の人脈を積極的に稲田に紹介するといったこともしているようだ。たとえば、NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表が、自身のブログでこう書いている。

〈日本初の女性総理候補の一人として注目が集まる、稲田朋美議員とお話ししました。「ひとり親を救えプロジェクト」の呼びかけ人でもある、気鋭の社会学者、古市憲寿さんからご紹介を頂きました。〉
〈(稲田氏は)ひとり親だけにとどまらず、マイノリティの人々への共感と、環境改善への意志を示されました。〉

 ひとり親を支援しているというこの人物は、稲田氏がシングルマザーや婚外子の救済策をことごとく潰し、離婚の大きな原因となっているDV被害を訴える女性たちを攻撃していることを知らないのだろうか、と疑問を感じてしまうが、それはともかく、古市はこのように、知人を気軽に紹介できるほど稲田と関係を深めているようなのだ。

 そして、この密接な関係の延長線上で、冒頭の「歴史を学び未来を考える本部」オブザーバーのオファーもきたということらしい。

 なんとも気色の悪いいきさつだが、まあそれでも、あの“空気を読まない”キャラクターで、安倍チルドレンと右翼論客が行う歴史修正主義の議論を引っ掻き回してくれるなら、古市くんが同本部にコミットする価値はあるかも、と思わなくもない。

 ただ、残念ながらその可能性も極めて低いだろう。というのも、弱者に対しては空気を読まない古市くんだが、強い相手には、過剰なくらいに「空気を読む」からだ。

 その典型例が、「第2期クールジャパン推進会議」の委員に選ばれた時の自己検閲事件だ。実は、古市はその1年ほど前、「新潮45」13年11月号で政府のクールジャパン政策を批判。担当大臣の稲田がロリータファッションを披露したことを取り上げ、「世間の生暖かい視線を浴びた」と皮肉たっぷりに書いていた。

 ところが、この文章の発表後、古市は「クールジャパン推進会議」の第2期メンバーに選ばれてしまう。その後、『だから日本はズレている』(新潮新書)という本を出版、同書に「新潮45」のクールジャパン批判も収録されることになったのだが、その際に古市は「生暖かい視線」という表現を「暖かい視線」に改竄してしまったのだ。たかが一文字だがエラい違いである。稲田に気を使ったのは明白だ。

 しかも古市くん、この“自己検閲事件”について、「an・an」(マガジンハウス)14年4月16日号での朝井リョウとの連載対談のなかで、こんな開き直り発言をしていた。

「(稲田のコスプレいじりは)別に悪意はないよ。ただ、もっと似合うコスプレがあったんじゃないかなって。それに雑誌ではそう書いたけど、本にまとめた時『生』は消したから大丈夫」

「大丈夫」って……この一言を読めば古市が向いている相手が読者でなく、稲田であることがよくわかるだろう。

 こんな調子で、自民党の組織で歴史修正主義に異を唱えることなど、できるはずはないだろう。

 いや、古市はすで歴史認識についても「転向」の兆しが見えている。

 たとえば古市は、13年に『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社)という著書を刊行しているが、今年7月にそれが文庫版として再刊されるにあたり、タイトルを『誰も戦争を教えられない』と変えている。

 過去形から断定的な現在形へ。些細に見えるが、この変化は象徴的だ。

 そもそも、同書のなかで古市は、戦争そのものではなくその記憶の伝達に焦点をあて、各国の戦争博物館を訪れていく。そこから導きだされる結論は、生きた個別的な体験を戦争一般という「大きな記憶」に還元することはできないというものだった。

〈僕たちは、戦争を知らない。
 そこから始めていくしかない。
 背伸びして国防の意義を語るのでもなく、安直な想像力を働かせて戦死者たちと自分を同一化するのでもなく、
 戦争を自分に都合よく解釈し直すのでもない。〉(同書より)

 戦争の「大きな記憶」を並列してみせることで手にされたこうした相対主義的な見解はあきらかに、歴史修正主義に対するひとつの批判として書かれたものだろう。そして、こうした批判はあくまで、古市自身がまがりなりにも同書を通じてそうしていたように、「大きな記憶」をたえず批判的に検討していく作業と切り離すことのできないものであったはずだ。そこには「大きな記憶」を否定しながら、なおも歴史に向き合うという姿勢が感じられた。

 しかしメディアの寵児として脚光をあび、稲田とも接近したそれから2年後、古市は確実にそのスタンスを変えている。文庫になった本の文庫版あとがきで、古市は、どこか開きなおるように「歴史の全貌を間違いなく後世に伝えるなんてことは原理的に不可能だ」と断じたうえで、むしろそこから生まれる「忘却は希望」だと書いているのだ。

「忘却は希望」−−−。だとしたら、それは、安倍や稲田、自民党にとっての「希望」なのではないか。歴史修正主義という徒花は、無知を温床にして咲く。つまり古市がいまあらためて、不徹底なままに肯定的にとりだしてしまう忘却=無知は、稲田にとって格好のチャンス以外のなにものでもない。

「歴史を学び未来を考える本部」は同本部としての報告書を発表するものではなく、あくまで歴史の学習のための集いだという。あからさまに同本部の見解を発表すれば、中韓だけでなく米国からも批判がまきおこるだろうことは、さすがに稲田たちも自覚している。

 安倍や稲田が見据えているのは、それこそ「未来」だ。ここで話し合われた歴史修正主義をさまざまな層に浸透させ、さまざまなチャンネルを通じてそれとは知られぬままに広めていくこと。明らかにメディア戦略として位置づけられている。

 だからこそ、自民党と稲田は脇の甘い売れっ子社会学者をこの組織に引き込んだのだろう。古市はこのまま、極右政権の御用学者になってしまうのだろうか。いずれにせよ、当面のあいだわれわれは、「気鋭の社会学者」の動きに注意しておかなければならないだろう。
(小杉みすず)

最終更新:2016.01.06 07:49

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