国際問題・戦争に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
米軍ヘリ墜落事故でわかった安保法制もうひとつのリスク…自衛隊員が戦死しても真相は隠蔽される!
シルコスキー・エアクラフト社HPより
紛糾する安保法制の国会審議の裏で、日本とアメリカの武力一体化が顕著になった事件がある。8月12日、沖縄県うるま市沖の海域に、米軍のヘリが墜落した事故だ。
事故を起こしたのは米陸軍所属のヘリMH60、通称「ブラックホーク」。移動中の大型貨物輸送艦「レッドクラウド」に着艦しようとして失敗、甲板に墜落した。現在まで、アメリカ側は事故の原因などについて一切公表をしていないが、18日にも同型ヘリの飛行が米軍嘉手納基地で再開された。沖縄県側への再開報告はなかったという。
「ブラックホーク」は、アメリカ陸軍特殊部隊「グリーンベレー」を乗せ、特殊作戦に使われるものだ。この事故で、ブラックホークに搭乗していた17名のうち、7名が怪我をしたが、驚くべきは、負傷者のなかに陸上自衛隊員2名がいたことだ。
この陸上自衛隊員2名は防衛相直属の中央即応集団所属の2等陸曹で、さらに、同集団のなかでもテロリストの攻撃などに対応する特殊作戦群の隊員。日米政府関係者によると、訓練はテロリストなどに不法に占拠された艦船からの乗組員の救出などを想定したもので、ヘリはその訓練中に米軍輸送艦に墜落したとみられているという。
ようするに、アメリカ陸軍の特殊部隊と日本の陸自の特殊部隊とが、共同で対テロリスト訓練を行っていたわけである。
言うまでもないが、現行の自衛隊法では、海外での自衛隊の活動は限定されており、これは安保法制後の自衛隊の活動の先取り訓練とも言える。法案成立の暁には、現実にこうしたシチュエーションで、自衛隊員がアメリカ兵と共に死亡するケースも起こるだろう。
しかも恐ろしいのは、そうした場合でも、今回のうるま市沖でのヘリ墜落事故と同じように、その原因解明や詳細にいたる報道がシャットアウトされてしまう可能性が極めて高いことだ。なぜならば、安保法制のもとで実現するアメリカとの軍事一体化は、同時に機密の一体化を意味するからだ。
沖縄県内での米軍のヘリ墜落事故は、1972年の本土復帰後だけでも46件にのぼるが、たとえば、2004年には、米海兵隊の大型ヘリが宜野湾市普天間基地周辺に位置する沖縄国際大学に墜落、爆破炎上した大事故があった。ヘリの破片が大学周辺に飛散し、ガラスを破って部屋のなかまで到達したマンションもあった。奇跡的に民間人の死傷者はいなかったが、米軍基地の危険性がむき出しになる事件だった。
しかし、事件発生直後、駆け付けた米軍によって現場はすぐに強制封鎖された。取材中の報道陣はカメラを取り上げられるなど、日本側からアクセスできたのは米兵の許可を得たごく一部の者のみ。未だに全容は解明されていない。
事故が発生した場所は、明白に日本の領土、民間地であり、生命の危機にさらされたのは日本で暮らす民間人だ。にもかかわらず、日本側は、自立した調査も自由な報道も、アメリカの許可なしには遂行することができなかったのである。
なぜこのような状況となったのか。それは日米安保条約のもと、日本とアメリカの関係を法的に定めた日米地位協定があるからだ。この協定の効力のひとつとして、アメリカの財産のある場所は、日本の当局は捜索や差し押さえ、または検証を行う権利を有しない、あるいは著しく制限されることが知られている。
今回のうるま市沖での事故も、日米地位協定を理由に、アメリカ側の意向もあってその詳細は公開されないだろうが、こうした問題は、安保法制で一体化する米軍と自衛隊の問題に直結する。
04年の沖縄国際大学での事故では、米軍側はヘリの破片を「財産」だと主張して、日本側の現場立ち入りや捜索、検証などを一切受け付けなかった。実は、これと同じ論理で日本全土が事実上の治外法権化する可能性があり、今後自衛隊の海外活動でも同じようなことが起こるかもしれない。すなわち、米軍の活動を支援していた自衛隊が、なんらかの理由で被害を被っても、米軍と行動を共にしているという理由で、原因などその真相が隠される可能性があるということだ。
日米地位協定の背景にあるのは、日米安保の不平等性である。これは、表向きにはアメリカが日本を守る代わりに、日本側は米軍の権利や基地の設置などを認めるというものだが、実際には長年にわたるこの米軍偏重の姿勢が、アメリカへ逆らえない日本政府の体制を生んだ。アメリカの強い要請に応えた安保法制もまた、その流れをくむものである(安倍首相の個人的願望でもあるが)。
つまり、安保法制による集団的自衛権、後方支援は、この米軍と自衛隊との不平等な関係が実際の戦場へと広がっていくことを意味するのだ。
こういうシナリオが考えられる。南シナ海や中東で自衛隊が米軍に弾薬提供や給油を行なった際、米軍側のトラブルにより事故が起こり、自衛隊員が巻き込まれて死亡したとしよう。日本国民は事故の原因究明を望むが、アメリカ側は軍事機密を理由に開示をこばむ。このとき、安倍政権は米軍に対し、情報公開を求めるだろうか。
表面上は求めるかもしれない。だが、アメリカの国防上の理由を盾に断られることは目に見えている。そして、日本政府は何かしら言い訳をしながら曖昧化し、自衛隊員が死んだという情報しか国民にもたらさない。日米地位協定が何度も見せてきた問題をそのまま繰り返すだけだ。
もっと極端なケースも考えられる。たとえば、米軍が自ら敵艦を攻撃しながら、攻撃を受けたという誤情報を流し、自衛隊が集団的自衛権を発動して戦闘行為に参加してしまった場合。米軍はこの情報を開示するだろうか。これまで中東でやってきた誤爆を見ても分かるように、米軍がそれを認めるというのは考えられない。そして、日本政府も米軍の言いなりになって口をつぐむだろう。
これは妄想で言っているわけではない。その証拠に、安倍首相はあれだけ安保法制の必要性と片務性の解消を謳っているのに、日米地位協定の不平等性については一言たりとも言及していない。これで「戦後レジーム」からの脱却などとのたまうのだから呆れるが、おそらく安保法制下での自衛隊の活動も、いままでと同じく、アメリカ様の言うことに反射的に首を縦にふるだろう。連中はアメリカに従うことが「国益」になると言ってはばからないのだから。
本サイトでも何度も指摘してきたとおり、安保法制は自衛隊員が戦闘行為に巻き込まれ、戦死するリスクを飛躍的に高める。だが、それだけなく、彼らがなぜ死んだのか、という情報すら、国民には知らされないということが起こりうるのだ。
日本と同じように米軍と地位協定のあるイタリアやドイツでは、改定のたびに主権を回復しつつある。他方の日本は、いまだに軍事領域ではアメリカの“飛び地”のままだ。
こんな状況を無視したまま、集団的自衛権の行使を認め、アメリカの戦争に加担しようとする安倍政権に「国益」を語る資格はない。
(宮島みつや)
最終更新:2015.08.20 07:16
関連記事
新着 | 芸能・エンタメ | スキャンダル | ビジネス | 社会 | カルチャー | くらし |
政倫審でも「法令遵守体制」を自慢して顰蹙! 世耕弘成の法令遵守とはかけ離れた「政治と金」疑惑の数々
世界的建築家の「カジノありきの万博」「あり得ない」の批判に、維新・大阪市長が「万博とカジノ関連ない」と失笑の大ウソ反論
政倫審 安倍派4人の嘘と矛盾を徹底検証! 萩生田も含め証人喚問は絶対必要だが、マスコミ報道は大谷の結婚一色
2700万円裏金でも萩生田に反省なし! 月刊誌で被害者気取り発言、「裏金はメディアとの会食に使った」とマスコミを恫喝
森喜朗、安倍晋三、菅義偉は東京五輪不正にどう関わっていたのか? “キーマン”高橋治之が保釈後初インタビューで証言
裏金に反省なし、岸田首相と自民党が死守する「企業団体献金」は事実上の賄賂だ! トヨタ、電通、経団連の大口献金と優遇政策
“インチキ派閥解消”の陰で自民党と岸田政権が温存する裏金づくりのシステム! 企業団体の献金、パー券購入も不透明なまま
検察の安倍派幹部“立件見送り”の不可解! 西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長、森喜朗元首相にくすぶる疑惑
『仰天ニュース』“赤木ファイル”特集で安倍政権・公文書改ざん事件の卑劣があらためて注目! 中居正広も「あってはならない」と
松本人志と並んで万博PRの吉村洋文知事 能登半島地震で救助や支援を自分の指揮のように演出して大顰蹙
『仰天ニュース』“赤木ファイル”特集で安倍政権・公文書改ざん事件の卑劣があらためて注目! 中居正広も「あってはならない」と
ジャニーズ会見で井ノ原の「ルール守って」発言賞賛と記者批判はありえない! 性加害企業が一方的に作ったルールに従うマスコミの醜悪
ジャニーズ性加害でジュリー社長辞任もテレビ局は検証放棄! 局内での行為が疑われるテレ朝とNHKの無責任な姿勢
ジャニーズ性加害問題で露わになったテレビ局の共犯性! ジュニアの練習場を提供したテレビ朝日はジュリーの謝罪後も批判なし
坂本龍一が最後まで中止を訴えた「神宮外苑森林伐採・再開発」の元凶は森喜朗! 萩生田光一も暗躍、五輪利権にもつながる疑惑
れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性! 維新・松井だけでなく自民党も批判封じ込めで訴訟乱発
自公維新が提出「国民投票法改正案」にネットで批判の声広がる! 小泉今日子も〈#国民投票法改正案に反対します〉と投稿
三浦瑠麗が「医者はワイドショー見てコロナ怖がりすぎ」と医療従事者を嘲笑! 専門家から反論されると半笑いで「私、医者じゃないんで」
Netflix版『新聞記者』の踏み込みがすごい! 綾野剛が森友問題キーマン官僚に、安倍御用ジャーナリストはあの人が…
NHK捏造・虚偽放送問題で河瀬直美監督のコメントが無責任すぎる!ドラマの デモ描写に異議唱えた『相棒』脚本家と大違い
2700万円裏金でも萩生田に反省なし! 月刊誌で被害者気取り発言、「裏金はメディアとの会食に使った」とマスコミを恫喝
森喜朗、安倍晋三、菅義偉は東京五輪不正にどう関わっていたのか? “キーマン”高橋治之が保釈後初インタビューで証言
“インチキ派閥解消”の陰で自民党と岸田政権が温存する裏金づくりのシステム! 企業団体の献金、パー券購入も不透明なまま
検察の安倍派幹部“立件見送り”の不可解! 西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長、森喜朗元首相にくすぶる疑惑
松本人志と並んで万博PRの吉村洋文知事 能登半島地震で救助や支援を自分の指揮のように演出して大顰蹙
裏金問題捜査で田崎史郎が「安倍政権時代なら法務省と官邸で内々に」とポロリ! 実際にあった安倍官邸の検察捜査ツブシ総まくり
関西万博で十数億円のパビリオン建設キャンセル料の支払が発生! 支払先は吉村知事のパー券購入の大和ハウス 他にも巨額受注が
“裏金”安倍派幹部・萩生田光一をヨイショしてPRに手を貸す田崎史郎!「僕は日曜日も月曜日も萩生田さんと」と癒着も隠さず
大阪で府立学校に「阪神優勝パレードへの寄付」周知通達! 府職員の”タダ働き動員”に続きパレードを万博宣伝に利用する吉村維新の横暴
「大阪万博」建設費が倍増2350億円で批判殺到も吉村知事は逆に被害者ヅラ!「空飛ぶクルマ」難航もマスコミ批判でゴマカシ
維新ゴリ押し 万博&カジノにかかる金はインフラ整備を含めると8000億円以上だった! 大半が国と大阪市の負担、巨額の税金も投入
防衛費増額の財源で「法人税」を削除し「国民全体の負担」だけにした政府有識者会議は読売社長、日経元会長、朝日元主筆がメンバー
菅首相の追加経済対策の内訳に唖然! 医療支援や感染対策おざなりでGoToに追加1兆円以上、マイナンバー普及に1300億円
菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰! ブレーンの「中小は消えてもらうしかない」発言を現実化
菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、大半が新自由主義経済政策に…坂上忍も「バランスおかしい」
悪評「マイナポイント」事業の広報費は54億円、1カ月で半分を浪費! 事務局事業も電通がトンネル法人通じて140億円
三浦瑠麗のアマプラCMは削除されたが…amazonもうひとつの気になるCM! 物流センター潜入取材ルポが暴いた実態とは大違い
安倍首相“健康不安”説に乗じて側近と応援団が「147日休んでない」「首相は働きすぎ」…ならば「147日」の中身を検証、これが働きすぎか
正気か? 安倍首相の諮問機関「政府税調」がコロナ対策の財源確保と称し「消費税増税」を検討! 世界各国は減税に舵を切っているのに
東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望! コロナで病院経営悪化も安倍政権は対策打たず加藤厚労相は “融資でしのげ”
政倫審でも「法令遵守体制」を自慢して顰蹙! 世耕弘成の法令遵守とはかけ離れた「政治と金」疑惑の数々
世界的建築家の「カジノありきの万博」「あり得ない」の批判に、維新・大阪市長が「万博とカジノ関連ない」と失笑の大ウソ反論
政倫審 安倍派4人の嘘と矛盾を徹底検証! 萩生田も含め証人喚問は絶対必要だが、マスコミ報道は大谷の結婚一色
裏金に反省なし、岸田首相と自民党が死守する「企業団体献金」は事実上の賄賂だ! トヨタ、電通、経団連の大口献金と優遇政策
検察が動くまで裏金疑惑を1年放置したマスコミの弱腰 報道されなかった自民党の“政治と金”疑惑を総まくり
橋下徹の「政治と金」めぐる“維新アゲ”発言の「デマ」に抗議殺到、『めざまし8』が謝罪! 語られなかった維新の金まみれ実態
安倍首相が「官房機密費あるから、いくらでも出す」…馳浩の五輪招致買収工作発言で改めて注目される「官房機密費」の不正な使われ方
原発廃液飛散で東電が飛散量を数十分の1に矮小化も、東電の隠蔽・無責任体質を批判しないマスコミ 一方、復活する電力広告
岸田内閣改造で統一教会癒着政治家が入閣! 文科大臣は統一教会との関係隠し、教科書問題で灘校に圧力の盛山正仁
ジャニーズ謝罪会見で御用マスコミが変わらぬ忖度! スポニチは社名継続を前打ち、テレ朝と日テレの唖然とする会見報道
瀬戸内寂聴が生前、語っていた護憲と反戦…「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」と語り、ネトウヨから攻撃も
「BTSグラミー賞逃す」報道に「韓国人のニュースいらない」「日本人の受賞を報じろ」と炎上攻撃が! 日本スゴイの精神的鎖国
ぼうごなつこ『100日で崩壊する政権』を読めば、安倍首相が病気で辞任ししたのでなく国民が声をあげ追い詰めたことがよくわかる
百田尚樹が「安倍総理にお疲れ様とメールしても返信なし、知人には返信があったのに」とすねると、2日後に「安倍総理から電話きた」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
村上春樹がエッセイ『猫を棄てる』を書いたのは歴史修正主義と対決するためだった! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
安倍首相に利用された星野源がエッセイに書いていた“音楽が政治に利用される危険性” 「X JAPANを使った小泉純一郎のように」
“宇予くん”で改憲煽動のJCと手を組んだTwitter Japanはやっぱり右が大好きだった! 代表は自民党で講演、役員はケントに“いいね”
ウィーン芸術展公認取り消しを会田誠、Chim↑Pomらが批判! あいトリ以降相次ぐ“検閲”はネトウヨ・極右政治家の共犯だ
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ
雨宮塔子が「子ども捨てた」バッシングに反論! 日本の異常な母性神話とフランスの自立した親子関係の差が
『NEWS23』に抜擢された雨宮塔子に「離婚した元夫に子供押しつけ」と理不尽バッシング! なぜ母親だけが責任を問われるのか
小島慶子が専業主夫の夫に「あなたは仕事してないから」と口にした過去を懺悔!“男は仕事すべき”価値観の呪縛の強さ
人気記事ランキング
カテゴリ別ランキング
社会
ビジネス
人気連載
アベを倒したい!
ブラ弁は見た!
ニッポン抑圧と腐敗の現場
メディア定点観測
ネット右翼の15年
左巻き書店の「いまこそ左翼入門」
政治からテレビを守れ!
「売れてる本」の取扱説明書
話題のキーワード