菅官房長官と全面対決した沖縄・翁長知事に保守メディアがバッシング! 背後に官邸か

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翁長雄志沖縄県知事(「オナガ雄志オフィシャルWEBサイト」より)


 官邸の沖縄イジメに批判が高まったことで、急遽、開催された翁長雄志沖縄県知事と菅義偉官房長官の会談。だが、この会談以降、今度は保守メディアの翁長知事バッシングが高まっている。

 読売新聞は会談について「疑問なのは、翁長知事が激しい政府批判に終始したことだ」と、真っ向から翁長知事を批判。産経新聞にいたっては会談での翁長知事の態度を「敵意むき出し」と書き、「何を得ようとしているのか」とネトウヨ的発想丸出しのタカリ批判を展開している。

また、産経と「週刊文春」(文藝春秋)4月16日号は、翁長知事がこの4月中旬に観光誘致目的で日本国際貿易促進協会の訪中ツアーに参加することをとらえ、あたかも基地問題で中国と連携しているかのような印象を与える記事まで流した。

 こうしたバッシング報道の中で必ず出てくるのが、「翁長はもともと辺野古推進派なのに、知事になるために転向した」という話だ。たとえば、先の「週刊文春」では「翁長氏が辺野古移設反対へと傾くようになったのはなぜか」との前ふりで、昨年11月の知事選に「勝つために“転向”したのでは」と、元沖縄県議のこんなコメントを紹介している。

「ただ、知事選の公約としたことで、振り上げた拳を降ろすことができなくなっているのではないか」

 また、「週刊新潮」(新潮社)4月16日号も強硬な反対姿勢は、知事選で支持を受けた「共産党のプレッシャー」によるものだとし、「もともと那覇市長時代に辺野古移設を推進していた」と指摘している。

 だが、これらは明らかなデタラメである。たしかに翁長知事は自民党県議時代、辺野古基地移転を容認していたが、転向したのはもっと前、2009年の鳩山政権時代に、はっきりと基地反対の姿勢を打ち出している。

 知事選より2年も前、民主党政権下の2012年、朝日新聞(11月24日)のインタビューで、翁長氏(当時は那覇市長)は自らの“転向”についてこう述べている。

「ぼくは自民党県連の幹事長もやった人間です。沖縄問題の責任は一義的には自民党にある。しかし社会党や共産党に国を任せるわけにもいかない。困ったもんだと、ずっと思ってきた。ただ、自民党でない国民は、沖縄の基地問題に理解があると思っていたんですよ。ところが政権交代して民主党になったら、何のことはない、民主党も全く同じことをする」
「僕らはね、もう折れてしまったんです。何だ、本土の人はみんな一緒じゃないの、と。沖縄の声と合わせるように、鳩山さんが『県外』と言っても一顧だにしない。沖縄で自民党とか民主党とか言っている場合じゃないなという区切りが、鳩山内閣でつきました」

 その覚悟は相当のようで、振興策による利益誘導ではないか、という批判にも、こう切り返している。

「振興策を利益誘導だというなら、お互い覚悟を決めましょうよ。沖縄に経済援助なんかいらない。税制の優遇措置もなくしてください。そのかわり、基地は返してください。国土の面積0.6%の沖縄で在日米軍基地の74%を引き受ける必要は、さらさらない。いったい沖縄が日本に甘えているんですか。それとも日本が沖縄に甘えているんですか」

 そして、今は民主党政権だから反対をしているだけで、自民党政権になったら賛成に回るのではないか、という疑問にもこう言いきっている。 

「よく聞かれるよ。自民党政権になっても辺野古移設に反対ですかって。反対に決まっている。オール日本が示す基地政策に、オール沖縄が最大公約数の部分でまとまり、対抗していく。これは自民政権だろうが何だろうが変わりませんね」
「沖縄の民主議員も、普天間の県外移設を主張したから、党本部とねじれて居づらくなった。もし自民政権になればああなるんだよと、仲間に言っています。自民の拘束力の強さは民主とは違いますよ。『県外移設』『オスプレイ配備撤回』などと議員が言えば、党は容赦ない。でもそれに従った議員は、その次の選挙で必ず落ちます。県民は許さない」

 ようするに、翁長知事は知事選のずっと前、那覇市長時代から民主党などよりもはっきりとした基地反対の姿勢を明らかにしてきたし、今の事態を予見していたのだ。にもかかわらず、保守系メディアが一斉にデマを報じている裏には、どうも、お得意の官邸によるリークがあるようだ。

 とくに会談でメンツをつぶされた形になった菅官房長官は自ら会見で「県内移設は、翁長さんは自民党沖縄県連幹事長、那覇市長でしたから、承知しているはず」と語り、オフレコでも翁長のマイナス情報をガンガン流しているという。

「実は官邸は今、内閣情報調査室や公安に命じて、翁長スキャンダルを必死で探しているらしいですよ」(官邸担当記者)

 しかし、翁長知事は官邸や保守メディアが考えているほど、簡単には潰せないかもしれない。知事は前述の朝日新聞インタビューでこう語っている。

「オスプレイ反対で県民が10万人集まったって、本土は一顧だにしないんですよ。基地は、目に見えない遠いところに置けばいい。自分のところに来るのは嫌だ。アメリカには何も言わない。いつも通りだ。沖縄は困難な闘いを戦っているんです」
「本土は、日米安保が大切、日米同盟が大切。それで『尖閣を中国から守るのに、沖縄がオスプレイを配備させない』と言う。沖縄にすべて押しつけておいて、一人前の顔をするなと言いたい。これはもうイデオロギーではなく、民族の問題じゃないかな。元知事の西銘順治さんが、沖縄の心はと問われ、『ヤマトンチュ(本土の人)になりたくて、なり切れない心』と言ったんだけれど、ぼくは分かった。ヤマトンチュになろうとしても、本土が寄せ付けないんだ」
「寄せ付けないのに、自分たちの枠から外れると『中国のスパイだ』とかレッテルを貼る。民主党の前原誠司さんに聞かれたよ。『独立する気持ちはあるんですか』と。ぼくは、なでしこジャパンが優勝した時、あなたよりよっぽど涙を流したと話しました。戦後67年間、いじめられながらも『本家』を思ってきた。なのに基地はいやだといっても、能面みたいな顔で押しつけてくる。他ではありえないでしょう。日本の47分の1として認めないんだったら、日本というくびきから外してちょうだいという気持ちだよね」

 我々はこの翁長知事の思いをもう一度、真剣に受け止める必要があるだろう。
(田部祥太)

最終更新:2017.12.23 07:01

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