林真理子が百田尚樹『殉愛』をタブーにする週刊誌を批判!「朝日を叩く資格なし」

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「週刊文春」12月11日号(文藝春秋)

 ネットではこれだけ盛り上がっているのに、マスコミではテレビ、新聞、雑誌ほぼ全てが沈黙を続けている百田尚樹『殉愛』騒動。今更ながら、作家タブー、バーニングタブーにひれふすマスコミのだらしなさを思いしらされたかたちだが、しかし、この状況に意外なところから批判の声が上がった。

「このまま知らん顔していようかと思ったが、やはり書かずにはいられない」

 本日12月4日発売の「週刊文春」(12月11月号/文藝春秋)でこう切り出したのは、あの大御所作家・林真理子。林は同誌の連載コラム「夜ふけのなわとび」で、メディアがこの問題を報道しないことに違和感を表明し、「週刊文春」も含めた週刊誌を「これで朝日新聞のことを叩く資格があるのか」と徹底批判したのだ。

 もともと林は『殉愛』を発売後すぐに読んで、「とても面白かった」と評価していたらしい。ところが、編集者にこの献身妻が実はイタリア人と重婚の疑いがあると教えられ、調べてみたらネットで大騒ぎになっている。ちょうど、未亡人が夫の闘病記を出した事をきっかけに事件が起きるという新聞小説を連載中だったこともあり、林は真相を知りたいと思った。そして、きっと週刊誌が解決してくれるだろうと信じた。

 しかし1カ月近く経っても、どの週刊誌も一行も報じない。たかじんの娘が名誉を傷つけられたと出版差し止めの提訴をしたが、テレビも週刊誌も報じない。こうした事態に林は思う。

「ものすごい不気味さを感じるのである。この言論統制は何なんだ!」

 そして林の批判の矛先は週刊誌に向っていく。

「大手の芸能事務所に言われたとおりのことしかしない、テレビのワイドショーなんかとっくに見限っている。けれど週刊誌の使命は、こうしたものをきちんと報道することでしょう」

 それができないていたらくに林はこう嘆く。

「意地悪が売りものの週刊新潮もワイドの記事にすらしない(百田氏の連載が終わったばかり)。週刊文春も一行も書かない(近いうちに百田氏の連載が始まるらしい)」
「あと講談社が版元の週刊現代は言わずもがなである。週刊ポストも知らん顔。こういうネタが大好きな女性週刊誌もなぜか全く無視。大きな力が働いているのかと思う異様さだ」

 とくに、林は自分が連載している「週刊文春」にかなり落胆しているようだ。

 もともとこの問題を最初に報道したのは「週刊文春」だったが、林は明らかにそのことを意識して「『やしきたかじんの新妻は遺産めあてでは』と最初に書きたてたのは週刊誌ではなかったか」と指摘し、ある新聞社の人のこんな言葉を紹介している。

「週刊誌が自分の主張する記事と真逆なことについて、反論しないのは初めてのケースではないですかね」

 たしかに、いくら百田の連載が始まるとはいえ、「文春」は『殉愛』に「真っ赤な嘘」とまで書かれているのだ。それでも一切の反論をしない。いやそれどころか、『殉愛』が出る少し前に、「文春」はたかじんの娘の手記を掲載しようとして百田の圧力で記事を潰されたという情報もある。

 林はこんな状態におちいってしまった週刊誌にこう苦言を呈している。

「もうジャーナリズムなんて名乗らない方がいい。自分のところに都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるのであろうか」

 まさにおっしゃる通り。いわれたほうはグウの音も出ない正論だ。

 もっとも、林のこの連載コラムがボツにされることなく、掲載されたのも「週刊文春」の強固な作家タブーゆえではある。もしこの林のコラムを掲載拒否などしようものなら、「週刊文春」が口汚く罵った朝日新聞の池上コラム不掲載問題と同様になってしまう。よって「週刊文春」はこの“都合の悪い”コラムを掲載せざるを得なかった。

 だが、聡明な林のこと。今回の批判がブーメランとなって自分に返ってくることなどとっくに織り込み済みだろう。少なくとも、自らが属するムラの、自らを守ってくれているタブーの存在を暴露した林真理子の発言は立派というしかない。
(伊勢崎馨)


【リテラが追う!百田尚樹『殉愛』騒動シリーズはこちらから→(リンク)】

最終更新:2014.12.17 07:17

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