安倍の代理で朝日記者が圧力をかけたインタビュー記事で安倍が「核共有」問題発言!一方、朝日記者には過去の誤報問題が浮上

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自民党HPより


 安倍晋三・元首相に依頼され、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)がおこなった安倍氏インタビューの記事を発売前に見せるよう要求していたことが発覚した、朝日新聞記者の峯村健司氏。峯村氏は『ひるおび』(TBS)木曜レギュラーを務めているが、問題が発覚した7日放送回に続き、14日放送回も出演しなかった。

 ところが、番組HPでは木曜レギュラーとして名前は残ったままのため、TBS社内では「自民党応援団の『ひるおび』が、安倍氏とベタベタの峯村氏を切れるわけがない。朝日を正式に退社して、ほとぼりが冷めたころに番組に復活させて売り出すつもりなのだろう」という声も上がっている。

 また、峯村氏の問題を取り上げた14日発売の「週刊新潮」(新潮社)は、峯村氏に「政界転身の意向」があったとして、「安倍さんに忠勤を励んだのも、自民党からの出馬を狙っていたからという見方がある」という朝日社内の声を紹介していた。

 政界進出なのかテレビのコメンテーターなのかは知らないが、どちらにせよ朝日退社後は公然と“安倍氏の代理人”活動を繰り広げそうな気配がぷんぷん漂っている峯村氏。しかし、この安倍御用ニューカマーに、「ブーメラン」ともいうべきトホホな「過去」が発覚した。

 本サイトでも既報の通り(https://lite-ra.com/2022/04/post-6181.html)、峯村氏は、「note」で、インタビューを担当した「週刊ダイヤモンド」A記者に「ゲラを見せろ」と要求した理由について、誤報を止めるためだ、と説明していた。

 安倍氏から「酷い事実誤認に基づく質問があり、誤報になることを心配している」と言われ、峯村氏は「とんでもない記事が出てしまっては、国民に対する重大な誤報となる」と危惧し、「現実に誤報を食い止めることができるのは自分しかいない」という使命感からおこなったと主張。しかも、朝日の慰安婦報道まで引き合いに出し、自身が要求した検閲行為を正当化していた。

 だが、まだ読んでもいない無関係の他社の記事を「誤報」呼ばわりした峯村氏自身が「過去、誤報、ガセと疑わしい記事を大々的に報じ、いまも語り草になっている」(全国紙外信部記者)というのだ。

 峯村氏の「誤報」というのは、峯村氏が北京特派員だった2009年6月16日に朝日新聞朝刊に掲載された「「後継」正雲氏が訪中 北朝鮮の金正日総書記の名代、中国の胡主席らと会談」という記事。

 本サイトでも確認したところ、この記事は峯村氏の署名入りで、〈金総書記に近い北朝鮮筋と、北京の北朝鮮関係者〉から得た情報として、北朝鮮の金正日総書記の三男・正雲(正恩)氏が金総書記の特使として中国を極秘に訪問していたとし、〈胡錦濤国家主席らと初めて会談、後継者に内定したことが直接伝えられた〉と報道。2日後の18日には、やはり峯村氏の署名入りで〈正男氏は胡主席と面識があり、紹介者として側近とともに列席〉と報じている。

安倍の依頼で「誤報を止める」と圧力をかけた朝日記者が過去にやらかした北朝鮮めぐる“虚報騒動”

 たしかに、この峯村氏の書いた記事、いまとなっては、読んだだけでもマユツバ感が伝わってくる。

 そもそも「金正恩が後継者に内定した」というニュースはこの朝日記事の数カ月前に韓国の聯合ニュースが報道。その後も複数の韓国メディアが同様の記事を断続的に出していた。峯村氏は、それを追いかけるかたちでこの記事を書いたのだが、よりにもよって、正恩氏がこんな早い段階で極秘裏に訪中し、胡錦濤に「自分が後継者になる」と報告、しかも、長男の金正男氏が仲介するかたちで同席していたとは……。正男氏といえば、正恩氏に殺されるのを恐れてずっと国外を逃げ回っていると報じられ、2017年には旅行中の空港で暗殺されている。そんな人物が、胡錦濤との会談を仲介するなんてありえないだろう。

 実際、この記事については、報道直後から「誤報だ」「ガセだ」という声が上がっていた。中国外務省の報道官が「報道された事実は存在しない」「まるで(スパイ小説の)『007』を読んでいるようだ」と全否定すると、毎日新聞など複数のメディアが疑問視、「週刊新潮」(新潮社)が「中国報道官が『007の小説』と小馬鹿にした朝日新聞『金正雲・胡錦濤会談』大虚報のケジメの付け方」という見出しで報道したのだ。

 ちなみに、朝日新聞側はこの「週刊新潮」の記事に対して抗議文を送付したが、その朝日新聞も後になって、峯村氏の“スクープ”を打ち消すような記事を掲載している。峯村氏が正恩氏と胡錦濤との会談の「紹介者」と書いた金正男氏が殺害された2017年、当時ソウル支局長だった牧野愛博氏が署名記事で〈正男氏と正恩氏は別々の場所で育てられ、面識もなかったという〉と書いたのだ。

 両者に「面識がなかった」のなら、「正男氏が胡錦濤を正恩氏に紹介し、胡錦濤との会談に同席した」と書いた峯村氏の記事はどうなるのか。

 この矛盾は、当時、朝日の粗探しが大好きな産経新聞にも突っ込まれていたが、しかし、朝日も峯村氏もこの「誤報疑惑」について説明することはなく、そのままうやむやになっている。

 ようするに、こんな人物が、今回、政治家に頼まれて他社の雑誌に介入した挙げ句、「誤報を回避した」などと言い訳をまくし立てていたのである。「誤報でもない他社の誤報を心配する前に、まず、自分の誤報疑惑をきちんと説明しろ」というツッコミの声が上がるのは当然だろう。

 実際、この“誤報疑惑の過去”はさっそく「週刊文春」(文藝春秋)が取り上げた。ところが、直撃を受けた峯村氏の回答は、「今は朝日新聞の社員なので、会社を通して頂けますか」というもの。峯村氏といえば、前述のnoteで自分を処分した朝日を批判、従軍慰安婦報道まで持ち出して攻撃を繰り出していたのに、「朝日を通せ」と会社を盾にするとは、なんともトホホな対応というしかない。

安倍元首相はなぜ無関係な朝日記者まで使って、インタビュー記事に介入しようとしたのか

 もっとも、今回の「週刊ダイヤモンド」への圧力は、峯村氏個人だけにその責任を負わせるような話ではない。峯村氏を動かしたのは安倍元首相であり、最大の問題は、その言論介入体質にある。

 しかも、この介入事件にはいまも、大きな謎が残っている。それは、なぜ安倍元首相は自分のインタビュー記事をめぐって、別の新聞社の記者である峯村氏にわざわざ圧力をかけさせたのか、という点だ。

 ゲラをチェックしたり、発言部分の修正を要求するなら、安倍元首相がやればいいだけだろう。峯村氏がnoteに投稿した反論文によると、安倍氏から、「ニュークリアシェアリング(核兵器の共有)についてのインタビューを受けたのだが、酷い事実誤認に基づく質問があり、誤報になることを心配している」「明日朝から海外出張するので、ニュークリアシェアリングの部分のファクトチェックをしてもらえるとありがたい」と言われた、ということだが、ファクトチェックをするなら、安倍事務所が「週刊ダイヤモンド」編集部からゲラを入手し、峯村氏に渡してチェックしてもらえば済む話だ(新聞記者が特定の政治家の代わりに記事チェックをするというのは、もちろん大問題だが)。

 ところが、安倍事務所は峯村氏に直接、「週刊ダイヤモンド」との交渉を依頼。峯村氏は自ら「週刊ダイヤモンド」のA記者(副編集長)に電話し、「私が全ての顧問を引き受けている」「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」(朝日新聞社の調査結果より)などと迫った。

 そんなところから、政治部記者の間では、「安倍元首相サイドがやろうとしたのはファクトチェックではなく、実際にあったやりとりを削除しようとしたのではないか。ところが、一旦、編集部に断られたため、『ダイヤモンド』にパイプのある峯村氏に頼んだのだろう」という推測が広がっている。

 周知のように、この「核共有」論は、安倍氏がウクライナ問題に乗じてぶちあげたのだが、発言後、各方面から批判が殺到。「ウクライナ危機では逆に核抑止が有効でないことが露わになったのに何を言っているのか」という原則論はもちろん、保守的な外交や軍事専門家からも「いまさらやってもリスクが高まるだけで効果はない」「核共有は自国にオペレーションの権利がないことをわかっているのか」と一蹴され、自民党内でも支持が広がるどころかほとんど相手にされない状態になっていた。

 ところが、安倍元首相は今回のインタビューでも、明らかな核シェアリングに対する無知をさらけだすような主張をしてしまい、後でそのことに気づいた、それで必死になって削除させようとしたのではないか、というのだ。

 実際、峯村氏のnote反論文によれは、「週刊ダイヤモンド」は〈その後安倍氏側と事実関係の確認し、誤認を正したうえ、3月26日付けの同誌に無事に掲載されました〉としている。

 つまり、最終的には「週刊ダイヤモンド」側が部分的に修正に応じたということらしいのだが、しかし、「週刊ダイヤモンド」の安倍氏インタビュー記事をみると、安倍氏がここを削除修正要求したのではないかと思えるような問題発言が残っている。

「週刊ダイヤモンド」の記事に残っていた安倍氏の問題発言。それは、安倍氏が、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバー参加しているドイツが実際にはアメリカの核を配備していると強調するくだり。そのなかで、安倍はこう断言しているのだ。

「実際に使用されるとなれば、核兵器を航空機で運んで投下するのはドイツ軍」

 この発言は必ずしも間違いではないが、明らかにフレームアップがある。というのも、ドイツが自軍の航空機で核兵器を投下することはありうるが、それはあくまでアメリカとの間で合意があったときの場合に限られる。仮にドイツ軍の飛行機を使うとしても、最終的な権限はアメリカにあり、いわば運ばされているようなものだ。それをあたかも自由に落としに行けるかのように語るとは。

 実際、「週刊ダイヤモンド」はこの安倍氏のインタビューを1ページ半掲載したあと、1ページを費やして「核共有」を解説するコラムを掲載。そのなかで〈核共有された核爆弾は、米大統領と同盟国首脳との間で合意が成立すれば、同盟国の航空機に搭載して目標に投下される〉としながら、続けて〈だが同盟国側が希望しても米国が拒否すれば、核は使用されない。逆に米国が核使用を決めても同盟国が希望しない場合は、米国の航空機を使って投下される。同盟国側には単独での使用権も拒否権もない〉と、安倍氏の発言が不十分であることを強調するかのように解説をおこなっている。

「安倍さんは実際のインタビューでは、核シェアリングのオペレーションをめぐる権限についてやりとりがあって、その部分を削除させようとしたのではないか。しかし、最終的には両者の話し合いで、一部を残し、こういう解説記事をつけることで、決着したのではないか」(出版関係者)

 この記事には、ほかにも引っかかる部分がある。インタビュー中、「核共有と非核三原則の間にはコンフリクトがあるのでは」と問われた安倍元首相が“「持ち込ませず」との間にコンフリクトがある”と認めながら、「議論することをタブー視してはならない」と主張するのだが、そのあと、安倍元首相は突然、とってつけたように「私は核共有すべきだなどとは言っていません」「質問するのであれば、正確に私の発言を知ってください」などとまくし立てているのだ。

 安倍元首相は今回、明らかに核共有を推し進める方向で「議論しろ」と言い出しており、「共有すべきだとは言ってない」などというのは“子どもの言い訳”に過ぎないのだが、これももしかしたら、という気がしなくもない。

 もちろん、今回の言論介入については、朝日新聞の調査と峯村氏の反論文で明らかになっておらず、「週刊ダイヤモンド」側が経緯を明らかにしていないため、詳細はわからない。

 しかし、安倍元首相が後になってメディアに圧力をかけて、記事をコントロールし、修正をしようとしていたことは明白な事実だ。そして、マスコミの世界には、こうした「報道の自由」を平気で侵害するような政治家の手足となって動く新聞記者やコメンテーターが山ほどいるということを忘れてはならないだろう。

最終更新:2022.04.16 07:33

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