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安倍政権が「反社会的勢力の定義は困難」閣議決定のトンデモ! 「桜を見る会」ごまかすため2007年の政府指針を覆し“反社”野放しへ
首相官邸Twitterより
おいおい、この国は正気なのか──。「桜を見る会」に反社会的勢力が招待されていた問題で、本日、政府は、反社会的勢力の定義について「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」とする答弁書を閣議決定したのだ。
反社会的勢力の定義は困難って、そんな馬鹿な。実際、2007年に政府がまとめた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」では、〈暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団または個人〉とはっきり定義しているからだ。そして、この定義をもとに金融庁は各金融機関や業界団体に「反社データベース」の充実などを求め、民間企業でも反社会的勢力との関係遮断に取り組んできた。しかも言っておくが、この指針を出したのは第一次安倍政権だ。つまり、安倍首相は自ら定義したものを、いまになって政府は「定義は困難」だと言い出したのだ。
無論、この答弁書を閣議決定したのは、「桜を見る会」で反社会的勢力と思われる人物が招待されていた問題が取り沙汰されていた際、11月27日の定例記者会見で菅義偉官房長官が「反社会的勢力についてさまざまな場面で使われることがあり、定義は一義的に定まっているわけではない」と述べた結果だろう。
これはとんでもない話だ。「反社会的勢力の定義は困難」というのが政府見解になってしまえば、今後、都道府県など地方自治体で施行されている暴力団排除条例も骨抜きになってしまう。さらに、今年は吉本芸人による反社会的勢力の闇営業が大きな問題となったが、これからは「政府の見解では定義は困難なので反社とは言えない」などと責任逃れすることもできるだろう。いや、もっと言えば、これほど定義が曖昧になってしまえば、政府に都合の悪い人物や団体が「反社会的勢力」に仕立て上げられることだって十分可能になってしまうのではないか。
ようするに、これまで政府は反社会的勢力との関係を遮断するよう訴えてきたのに、「桜を見る会」をめぐって反社との関係が非難の対象となった途端、定義を曖昧にして有耶無耶にしてしまったのである。これは、都合の悪い文書を破棄して「復元は不可能」「バックアップデータは行政文書ではない」などと強弁したり、一流ホテルが明細書を発行しないという常識外れの主張をしたりという一連の「疑惑隠し」とまったく同じで、今度は疑惑を隠すために、ついに政府指針まで捻じ曲げてみせたのである。
もはや「ぶっ壊れている」としか言いようがないが、“元凶”である菅官房長官も相当ぶっ壊れている。
本日午後におこなわれた会見で菅官房長官は、記者からこの閣議決定の問題を突っ込まれると、上記した答弁書の内容を繰り返した。さらに記者から「政府の指針は何だったのかという話になると思うが」と質問されると、こう答えた。
「(政府の指針は)暴力団の不透明化や資金獲得活動の巧妙化、こうしたものが進むなかで民間企業が暴力団をはじめとする反社会的勢力との関係を遮断し、これらによる被害防止する観点からこのための基本的な理念や具体的な対応についてとりまとめたものだと承知している。現在、民間企業においてはこの指針を踏まえた上で暴力団をはじめとする反社会的勢力との関係の遮断のための取り組み、これを着実に進めていると思う」
菅官房長官が「桜を見る会」で握手を交わした相手は「準暴力団の企業舎弟」と新潮報道
いやいや、だからその指針に書かれた定義をひっくり返して「社会情勢によって変化するから定義は困難」と言い出したせいで、今後、何をもって反社だと認定すればいいかが不透明になってしまったのではないか。それなのに「民間企業は指針を踏まえてやっている」って、まったく答えになっていない。
その上、「もともと定義は困難な用語だったのか」と問われると、菅官房長官は一言も発さず、黙ってこくこくと頷いたのだった。
答えになっていない答えを繰り返し、ついには頷くことしかできない菅官房長官──。それも当然だろう。というのも、実際に「桜を見る会」には、反社会的勢力が招待されていたことははっきりしているからだ。
たとえば、「桜を見る会」の反社招待問題を取り上げた12月5日発売の「週刊新潮」(新潮社)の記事では、SNSにアップされていた「桜を見る会」招待者の写真に写っているA 氏という人物について、大阪府警関係者が経歴を証言。A氏は大阪で地下格闘技の団体をやり、その一方で「組合費などと称して飲食店などからみかじめ料を巻き上げるように」なったといい、2010年には金融機関から約4600万円をだまし取った詐欺容疑で、2014年には傷害容疑で逮捕されるなどしているという。このA氏について、沖縄県警では「半グレの『Aグループ』のリーダー」であり、同グループは「準暴力団」という位置付けで認識されていると語られている。
そして、菅官房長官が「桜を見る会」でニコニコと笑顔をたたえながらがっちりと握手を交わしてツーショット写真を撮った人物は、「A氏の企業舎弟と言われている人物」(暴力団に詳しいジャーナリスト)だというのである。
「予算が増加しているのはセキュリティ対策のため」などと言いながら、実際には政府が関係遮断を訴える反社会的勢力までが招待されて税金でもてなし、その関係者と官房長官が笑顔でツーショット写真の撮影に応じていたとは──。あまりに杜撰極まりないが、こうした事実を認めるわけにはいかないため、ついに政府は「反社会的勢力を定義するのは困難」などと言い出したわけだ。
望月衣塑子記者が新潮報道を質問するも、菅は「週刊誌報道に答える場ではない」と打ち切り
実際、本日午後の会見では、この「週刊新潮」の報道について、東京新聞の望月衣塑子記者が追及すると、それまでは記者の質問攻めにヘラヘラしていた菅官房長官が豹変。「反社や半グレと指摘される方々があの場にいたのか。なぜ参加できたのか。これは確認できたのか」と質問されたのに、菅官房長官は「認識はしていない。私は暴力団がいたとは一切言っていない」と話をずらし、追加質問しようとする望月記者をいつものように司会が遮ろうとする始末。さらに望月記者が「来年はオリンピックなのに警察の情報収集能力は大丈夫なのか」と問うと、こう断言した。
「警察の情報収集能力は、絶対に間違いない。週刊誌の報道にひとつひとつ答える場ではない」
「週刊誌の報道」って、まさに菅官房長官自身にかかわる問題なのだが。しかし、ここで望月記者がさらに何かを問いかけようとしたのだが、菅官房長官は司会のほうを見て「ちょっと」と指示を出す。すると、司会は「ありがとうございました」と言い、会見を終わらせたのだった。
最近は朝日や毎日、北海道新聞などの記者が連携して質問を重ね、官房長官会見にも変化が見られていたが、望月記者の質問はいつものとおりシャットアウトする……。男性記者には追加質問を許しているのに、この対応の差は「追及する女性記者」に対する露骨な差別なのではないのかと思わざるを得ないが、ともかく、反社会的勢力が招待されていた問題について、調べる気はまったくないということらしい。
だが、これをこのまま看過することは到底できない。自分たちに都合が悪くなると、これまで政府が示した定義さえ覆す。こんなことが許されてしまえば、安倍政権は思うまま、何だってできてしまうからだ。民主主義ならぬ「ご都合主義」国家に変えようとするこの動きに、黙っているわけにはいかないだろう。
(編集部)
最終更新:2019.12.10 10:39
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