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古市憲寿が安倍首相との会食に失笑言い訳!“焼肉屋セレクトは韓国文化を理解している証拠、リベラルは評価せよ”
古市憲寿『だから日本はズレている』(新潮社)
芸人の松本人志が『ワイドナショー』(フジテレビ)メンバーを引き連れて、安倍首相と仲良く焼肉を頬張ったのは昨年12月15日夜のこと。本サイトでは繰り返し、ジャーナリストや情報番組のMCコメンテーターが取材でもないのに政治権力者と会食するというのは倫理的にありえず、それは公権力とメディアの癒着に繋がるからだと厳しく追及してきた。
しかし、連中は反省するどころか何が悪いと言わんばかりに開きなおり、12月24日放送の『ワイドナショー』では松本が、焼肉後、安倍首相と楽屋が隣になって「ヨッ!」と挨拶を交わし合うオトモダチになったことを自慢げに語る始末だった。
そんななか、“ワイドナ安倍焼肉メンバー”のひとりである古市憲寿が、先週発売の「週刊新潮」(新潮社)1月18日号での連載で、この件についてトンデモな主張を展開した。
古市はまず、“官邸御用評論家”の田崎史郎・時事通信社特別解説委員が首相との会食によって世間から批判されていると紹介した上で、〈なぜこんなことを書いたかというと、僕も権力の犬呼ばわりされたから〉といきなり被害者ヅラ。続けて、〈しかし実はこの焼肉会、安倍さんが「ワイドナショー」という番組にゲスト出演したときに約束したものが、延び延びになっていただけ〉と大したことじゃないとアピールした。
古市は焼肉会の2日後にもTwitterに「単純に安倍さん出演回の番組出演者で打ち上げに行きましょうという話」と投稿していたが、これは言い訳にすらなっていないだろう。言っておくが、『ワイドナショー』は選挙期間中に安倍首相を番組に呼んだり、安倍政権のPRに積極的に協力している番組。安倍首相はこうしたヨイショの状況を知って会食の誘いをかけたはずで、その意味でも、古市の言う「打ち上げ」というのは“仲間意識”のあらわれであり、それに嬉々として応じる時点でなんの免罪符にもならないのだ。
焼肉=韓国文化だからリベラルは評価すべき? 古市のトンデモ屁理屈
にもかかわらず古市は「週刊新潮」でも、〈話の内容も、他愛のないことばかりだった〉として〈それにしても、誰かと食事をしただけで批判されるなんて〉と嘯き、〈だけど「権力者とは会うな、話をするな」はいただけない。気に食わない政治家を悪魔のように扱い、対話を拒絶する人がリベラルを名乗るのはおかしい。暴力革命でもしたいのかな〉と書きなぐる。
まったく「暴力革命でもしたいのか」とは、古市クンもついにネトウヨの語彙を使うようになってしまったらしいが、唖然とするのは続けてこう述べていることだ。
〈せめて、首相動静にも店名が出ている焼肉屋のことをきちんと調べて欲しかった。龍月苑は韓国人もたくさん働くお店。韓国との国交断絶を主張するネット右翼が怒るならわかるが、リベラルなら首相がきちんと韓国文化を受けいれていることを評価すべきだろう。〉
……バカもほどほどにしてほしい。じゃあ聞くが、古市は安倍首相側から会食に誘われたとき、場所が焼肉屋だったから問題ないとでも考えたのか。そんなわけないだろう。寿司屋でも料亭でも“最高権力者と仲良く食事をする”ことの本質的な問題は何も変わらない。
だいたい、「安倍首相が韓国文化に敬意を払って焼肉にした」みたいな話自体、失笑モノである。たとえば、安保法案で揺れていた2015年の6月1日、安倍首相は内閣記者クラブのキャップたちと赤坂でオフレコ懇談会を開いた。「週刊現代」(講談社)15年7月4日号がオフレコ発言をスクープした記事によれば、安倍首相は集団的自衛権に話が及ぶと「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの。だから、やる(法案を通す)と言ったらやる」と言い放ったという。
つまり、安倍首相は記者の目前で“中国との戦争を想定している”と明言したわけだが、ところで、このオフ懇の舞台はどこだったか。高級中華料理店の「赤坂飯店」である。会食場所と外国への敬意は完全に無関係としか言いようがないだろう。
それにしても、おバカぶっているのか、それとも本当にバカなのかはともかく、古市クンは全然わかっていないようだから何度でも繰り返すが、総理大臣とメディア関係者の会食が問題なのは、本人が自覚しているか否かにかかわらず公権力に取り込まれる危険性が非常に高いからにほかならない。その結果、政治権力がメディアを完全に操ることはできなくても、少なくとも批判のトーンを抑えることができ、うまくやれば擁護や絶賛してくれる。安倍首相がテレビや新聞の幹部や政治記者らと頻繁に会食を繰り返すのは、まさにそうした目論見があるからだ。
古市クンは〈寿司をおごるくらいでみんなが味方になってくれるなら、マスコミは政権批判なんてしていないはずだ(自分が権力者なら、国民に寿司を配給する制度を作りたい)〉などと軽口を叩いているが、実際、政治家からアプローチをかけられて乗った結果、あからさまに“配慮”をするようになった言論人は数知れない。というか、古市も間違いなくそうして籠絡された言論人のひとりだ。
古市憲寿が焼肉屋で「安倍首相に確かめたこと」とは
たとえば、2014年4月に「第2期クールジャパン推進会議」の委員に選ばれた古市は、就任前に雑誌で書いていた稲田朋美・クールジャパン戦略担当大臣(当時)のロリータファッションを皮肉った記述を、のちの書籍化では褒める表現にコッソリ変更していた。その後も15年には稲田が仕切る安倍首相肝いりの党の勉強会「歴史を学び未来を考える本部」にオブザーバーとして起用されるなど政権と急接近。そうして古市クンは、弱者や野党に対しては「空気を読まない」冷笑的な芸風を貫いている一方、政権に対しては明らかにヘコヘコと「空気を読む」動きをするようになっていったのである。
安倍首相との焼肉会は明らかにこうした古市の姿勢の延長で起きたことだ。「飯を食ったぐらいで政権を擁護するわけがない」というのは、権力者と仲良くなって籠絡されたジャーナリストや評論家の定番の言い訳だが、まさに古市クンは今回の「新潮」連載での言い訳で御用の典型を完全に踏襲したといってもいいかもしれない。
いや、それだけではない。安倍首相と会食をしたメディア関係者の言い訳には、もうひとつ「会食は取材のためで、ちゃんと深い話を聞き出しているではないか」というものがあるが、古市クンはこの言い訳もきっちり踏襲していた。「新潮」の連載の最後に〈僕はこの食事で、一つ安倍さんに確かめたいことがあった〉という文言が出てきたのだ。一体何を確かめたのかと思って、先を読んだら、こんなことが書いてあった。
〈政治記者から聞いた話だ。森友騒動で安倍昭恵さんが批判の矢面に立っていた時。首相はぼそっと「愛しているんだから仕方ないじゃないか」とこぼしていたらしい。答弁でもなく、本当に独り言のようだったと目撃者は語っていた。
この話は果たして真実なのか。「いい話なので、ぜひ昭恵に伝えておいて下ださい」と言われて煙に巻かれてしまった。権力の犬だという意識はないが、僕にはやはり池上彰力が足りない。〉
そう、古市が「安倍首相に確かめたい話があった」「この話は果たして本当なのか」などと大仰に語った「話」というのは、なんと安倍首相が昭恵夫人を愛してると口にしたかどうかということだったのだ。
実は、古市は以前にもテレビでこれに近い話をしていた。昨年3月2日の『とくダネ!』(フジテレビ)で、森友問題で安倍夫妻をかばう文脈で「昭恵さんがたぶんショックを受けていて、それに対して妻を犯罪者扱いしてほしくないというのが(安倍首相の)一番のメッセージだったのかな」というコメントだ。もともと、古市が昭恵夫人と親密なのは有名で、たとえば14年に昭恵夫人が校長として開校した「UZUの学校」の開校式にパネリストとして駆けつけている。安倍首相から「いい話なので、ぜひ昭恵に伝えておいて下さい」と言われたというのも、古市と昭恵夫人の個人的親交を知っているからだろう。
「池上彰力が足りない」などというのもおこがましい。古市はようするに安倍首相の株をあげるような「いい話」、言い換えればヨイショするエピソードを拡散しただけではないか。なんともトホホだが、無邪気を装っているぶん、余計にタチが悪い。
いずれにせよ、本人は「権力の犬だという意識はない」と嘯くが、意識があろうがなかろうが、実際に古市がネオ御用学者となっているのは間違いない。この論客を「どっちもどっち」的な“今風の若者”だと考えるのはもはや誤りだ。逆に言えば、古市だけでなく、最高権力者と仲良く飯を食うことに忌避感を覚えず、あまつさえシレッと政権の宣伝までしてしまうような人物がマスコミの方々にいることに、私たちはもっと危機感を持つべきだろう。
(編集部)
最終更新:2018.01.21 11:56
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