追悼・赤瀬川原平 40年前に遺したマッピング作品「論壇地図」のタブーとは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
akasegawa_01_141029.jpg
『文藝別冊 赤瀬川原平 現代赤瀬川考』 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

 美術家・作家の赤瀬川原平が10月26日に死去した。赤瀬川といえば、千円札を模した美術作品が通貨及証券模造取締法違反に問われた「千円札裁判」や、パロディイラスト「櫻画報」の掲載誌回収騒動、あるいは街なかにある無用物に着目した路上観察、ベストセラーとなった著書『老人力』(筑摩書房)など、1960年代から近年にいたるまで、とにかく話題には事欠かなかった。

 それだけに今回、追悼記事を依頼されて、何をとりあげようか非常に迷ったのだが、ここでは赤瀬川が70年代に仲間たちとともに手がけた「論壇地図」という一連の作品を紹介したい。これは、その時々の言論状況をイラストによって表現したものだ。

 70年末に発表されたその最初の作品「現代論壇考」では、海に浮かぶ島などに著名人や組織が配置された。そのなかではたとえば、夫婦岩のごとく大しめ縄で結ばれた大小2つの国会議事堂が並び、それぞれの頂点に時の首相・佐藤栄作と共産党委員長・宮本顕治が座す。その周辺には各政党の関係者(池田大作が小島のうえで法華経を唱えていたりする)、さらには新左翼の活動家たちや各セクトのヘルメットが浮かべられ、当時の物騒で混沌とした政治状況を一つの画面のなかに描き出している。それは地図とも大パノラマともいえ、俯瞰したり細部を追ったりと見方を変えるたびに新たな発見がある。この時代について知識を持っていれば、もっと楽しめるはずだ。

 思えば、キュレーションの時代などと呼ばれ、ウェブ上にあふれる厖大な情報を取捨選択し、あるテーマのもと編集して提示することが注目されているいま、赤瀬川たちの論壇地図はさまざまな示唆を与えてくれるような気がする。

 論壇地図が掲載されたのは、「現代の眼」という月刊誌(現代評論社/休刊)である。同誌は「総会屋雑誌」と呼ばれた雑誌の一つで、反体制色が濃く、大手新聞や雑誌には載せにくいような事柄も積極的にとりあげていた。論壇地図は毎年1月号(発売は12月)に付録としてつけられていたもので、赤瀬川は同誌で連載していたこともあって依頼を受けたという。その第1弾は71年1月号に掲載され、以後、赤瀬川は72年、73年、75年、77年と計5年分を担当することになる。

 もともとは編集部のつくった関係図をもとにマンガ家が描いていたこの企画では、あくまで政治と文学が中心だった。しかし赤瀬川たちは政界・論壇・文壇だけでなく、美術・演劇・舞踏・映画・マンガなどにまで対象を広げる。時代状況的にも、アートやサブカルチャーの勢力が見逃せなくなってきた時期だった。

 このとき赤瀬川に協力したのが、筑摩書房の駆け出しの編集者だった松田哲夫である。松田は学生時代に大学新聞で原稿を依頼して以来、赤瀬川と親交があった。大学在学中はちょうど学生運動が盛んだったころで、新左翼のセクトに属する学生に、その組織がどういう位置づけにあるのか、系統図を描いて説明することもよくあったという(ほぼ日刊イトイ新聞「編集者という仕事を知ってるかい? 第1回」)。情報の整理を得意とした松田にとって、論壇地図はうってつけの仕事だった。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

赤瀬川原平: 現代赤瀬川考 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

追悼・赤瀬川原平 40年前に遺したマッピング作品「論壇地図」のタブーとは?のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。タブー政治家皇室近藤正高の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 安倍政権が乱発するトンデモ閣議決定
2 国連が安倍政権のメディア圧力に勧告へ
3 義家前文科副大臣が加計疑惑に茶番質問
4 オリラジ中田が日馬富士事件で松本批判?
5 鶴保前沖縄担当相に辺野古利権疑惑
6 『ラ・ラ・ランド』に論争勃発
7 マツコがいじめ、弱者叩きの構造を喝破
8 星野源が考える“新しい家族”とは
9 安倍首相のFacebookのヘイトがひどい
10 「朝日、死ね」足立議員のトンデモぶり
11 加計学園で設置審委員が内情暴露!
12 『シン・ゴジラ』の3・11暗喩に園子温が
13 JASRACが坂本龍一を騙しうち!
14 鶴田真由と昭恵夫人は日ユ同祖論の同志
15 日本大使館が「民進党は米国が分裂させた」
16 萩生田が前川前次官にシンゴジラを観ろ
17 希望に翻弄された!? 嘉田氏に直撃!
18 高校生平和大使の演説中止と安倍政権
19 能年玲奈は独立できるか?飼い殺しも
20 欧米で安倍と訪日トランプに嘲笑の嵐
1佐野元春がトランプ批判の楽曲を発表!
2加計が留学生募集!四国の獣医不足は?
3加計学園で設置審委員が内情暴露!
4トランプ来日の目的は武器売りつけ
6直撃!前川前次官が加計認可の動きを批判
7日本大使館が「民進党は米国が分裂させた」
8テレビが封印した安倍とトランプの映像
9横田さんはトランプに戦争しないでと伝えたいのに安倍が
10義家前文科副大臣が加計疑惑に茶番質問
11萩生田が前川前次官にシンゴジラを観ろ
12国連が安倍政権のメディア圧力に勧告へ
13欧米で安倍と訪日トランプに嘲笑の嵐
14沖縄タイムス記者が官邸と百田に反撃
15トランプ来日を歓迎するマスコミの異常
16マツコがいじめ、弱者叩きの構造を喝破
17安倍が「文化の日」を「明治の日」に
18山口敬之めぐり文春vs新潮がバトル
19「朝日、死ね」足立議員のトンデモぶり
20トランプの精神障害を疑うのは当然だ! 

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

連載一覧へ!

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」