ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第19号 

竹中平蔵だけじゃない!「残業代請求は、権利の乱用」とトンデモ主張する経営者たち…必要なのは高プロでなく使用者教育だ!

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 これまでも、ビックリな会社の主張が掲載されてきたが、私からは、いわば「高度プロフェッショナル制度」の先取りともいうべき仰天な会社の主張や社長の弁などを取り上げたいと思う。

 それは某残業代請求事件で起きた事件であった。会社側の主張の第1は、「そんな大変な労働じゃないんだぜ」(手待時間的な主張)というものだ。まあ、これは想定されなくもない反論だろう。

ふむふむ。と読み進めると、第2の主張は、「業界的に歩合給には割増賃金も含まれてるんだぜ。歩合給に残業代を含むという契約上の根拠は全くないし、会社から説明もしていないけど、長くこの業界で仕事をしてきた原告なら分かるだろ」(みなし残業代的な主張)というものだ。これも「説明すらしていないのに残業代含むんだ」という主張は初めだったが、まあ国際自動車事件のような裁判例もあることから(結論は不当と考えているが)、苦しい主張ではあるけども主張としては、あり得るのかなあと思った。

 そして、第3の主張……目を疑った。「権利の濫用」と書いてあるではないか。それによると、基本給として最低保証給を払い、かつ、歩合手当も含めると、それはそれは、大層な金額を支払っているのだから、原告の残業代請求は「権利の濫用」に当たるというものだった。「給料が高ければ、一切の残業代・休日手当を支払う必要はない。労働者が請求したとしても、それは権利の濫用で許されない」のだそうだ。正に「高度プロフェッショナル制度」ではないか! ちなみに、原告の方の収入は、年間1075万円もなかった。まだ国会での議論すらされていなかった「高度プロフェッショナル制度」を先取りし、その要件以上の主張をしてくるとは、非常に先進的な主張だと思えないだろうか?

 労働基準法は労働時間を定め、原則として刑事罰をもって残業を禁止している。36協定の締結によって、例外的に適法化されているが、それでも割増賃金を支払わなければならない。その趣旨は、労働者にとって、長時間に渡る労働は、大きな肉体的・精神的な負担を課すことから、割増賃金の支払い義務という「ペナルティ」を課すことによって、これを抑止しようとするところにこそある。当然のことながら、残業代を払えば働かせていいというものではない。「高度プロフェッショナル制度」に関しても同じことがいえるが、「高い賃金を払っていれば、労働者をいくらでも残業させていい、深夜・早朝・休日に働かせてもいい、その場合にも、高い賃金をもらっているんだから残業代なんか支払わない」ということが許されてしまえば、労働者の安全・健康を守るためのはずの労働基準法や労働安全衛生法が、かえって労働者の安全・健康を損なうことになってしまう。到底許されるものではない。

 なお、この他にも突っ込みどころのある主張をしてくる例は、特に残業代請求の事件で後を絶たない。

ある事件の会社代表者の弁では、定年まで全うせず、働いていたときは残業代請求をせず、自分から辞めていったくせに残業代を請求するような労働者は(それをサポートする代理人弁護士も含めて)、精神的におかしいのだそうである。本来労働者が残業代の支払いを会社に請求しなければならないこと自体おかしいが、きっとこの会社は、働いていたときであれば、残業代請求すれば、直ちに支払ってくれる「ホワイト企業」なのだろう。

 また、ある事件では、こちらから残業代請求をしたら、もともと支払った残業代が多すぎたのだから、不当利得に当たるから逆に返還しろといってきた。給与明細上も残業時間等が記載されていたが、それは会社の計算の誤りだったという主張である。賃金請求権の時効は2年、不当利得返還請求権の時効は10年であるから、これを意図的に会社がやっていたのであれば、法の網をかいくぐった、頭脳的な主張といえるかもしれない。

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