年末特別企画 リテラの2017年振り返り

来年も安倍政権は明治=大日本帝国美化に邁進!慰安婦像に逆ギレ、アパホテル炎上、高須ナチ礼賛…2017歴史修正事件簿

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首相官邸ホームページより
 

 2017年も歴史修正主義の嵐が吹き荒れた。本サイトではこれまで、戦中日本軍の犯罪行為の事実を抹消し、大日本帝国を美化する歴史修正の動きをくり返し批判してきた。そこで、今年一年を振り返りながら、安倍首相をはじめとする日本のリビジョニストの動向を新ためてチェックしてみたい。名付けて“2017年歴史修正事件簿”である。

●安倍首相、大阪市長が“慰安婦像”問題で、自らの歴史修正主義思想を世界にさらす

 日本の歴史修正主義者たちが、血眼になって攻撃している“慰安婦像”問題。今年も慰安婦像をめぐって、歴史修正主義者たちが世界各地で醜態をさらした。
 安倍政権は、昨年末に韓国で慰安婦問題を象徴する少女像が新たに設置されたことをうけ、駐韓大使と釜山総領事の一時引き揚げや日韓通貨スワップ協議の中断などの対抗措置を強行した。しかも当時、釜山総領事だった森本康敬氏はのちに異例の短期間での退任となったが、これは少女像をめぐる政権の対応に批判を漏らしていたことを安倍官邸の知り激怒、粛清的に事実上の更迭を指示したとされている。
 また、米サンフランシスコ市が慰安婦像の設置を承認したことを受けて、大阪市の吉村洋文市長が姉妹都市関係の解消を宣言するなど、異常な状況にある。
 しかし、本サイトで何度も詳しく伝えているように、戦中に日本軍が慰安所をつくり、現地の女性を慰安婦にしていたことは、多くの公文書や証言が残っている歴史的事実だ。にもかかわらず、過去を直視せず、大使引き上げなどの圧力行為に出て、さらに文在寅大統領が「日韓合意では慰安婦問題が解決されない」と表明したのに対抗し、平昌五輪欠席をちらつかせ恫喝する安倍政権こそ、日本の「名誉と信頼」を毀損していると言うほかないだろう。

●アパホテルが元谷代表の「南京事件はなかった」本で国際的炎上

 安倍首相の支援者としても知られるアパホテル代表の元谷外志雄氏。その極右・歴史修正主義が、世界中に知れ渡ることとなった。アパホテルの客室には〈南京事件も慰安婦強制連行もなかった〉などと歴史修正を記述した元谷代表の著作が、まるで聖書のように設置されている。
 1月、海外からの宿泊客がこの歴史修正本の存在に気づき、その内容をSNSに投稿したことから、国際的な問題に発展。当然ながら海外メディアは批判的に報じた。元谷代表はほかにも、歴史学者からトンデモ論として総スカンを食らっているコミンテルン・ユダヤ陰謀史観をこれでもかと展開している。
 アパはユダヤ陰謀論の一部こそ、ユダヤ系コミュニティからの抗議を受けて問題箇所を削除修正、釈明コメントを出したが、「南京事件はなかった」という歴史修正言辞については「言論の自由」だと強弁し、撤去しないと断言。あろうことか、海外からの宿泊客増加が予想される2020年東京五輪開催時でも、客室の歴史修正本を撤去しない考えを示したのである。
 言っておくが、海外とりわけ欧州では、ホロコースト否定論がナチスの戦争犯罪を肯定するものとして厳しく批判、制限されるほど、歴史修正の問題に敏感だ。当然、五輪開催時にアパの本が目にとまれば、ホスト国である日本全体が歴史修正主義を容認していると受け取られ、信頼をなくす。連中の言葉を借りれば、それこそ「反日」である。

●アパホテルの歴史修正主義を批判した宇野常寛が『スッキリ!!』をクビ!!

 アパ歴史修正問題が海外で大きな批判を浴びた一方、国内メディアとりわけテレビは腰砕けで、あろうことかアパの肩をもつ番組まであった。
 たとえば1月19日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、司会の宮根誠司が「イヤだったら泊まらなきゃいいわけですよ」などと、まるでアパの回し者のようにまくし立てた。他にも、同月22日の『ワイドナショー』(フジテレビ)で、安倍ヨイショ芸人と化した松本人志が「中国が国をあげてアパホテルを叩いている行為は異常」などとコメントした。
 そんなか、アパの歴史修正主義を正面切ってテレビで批判したのが、評論家の宇野常寛だった。宇野氏はレギュラーコメンテーターを務めていた『スッキリ!!』(日本テレビ)1月19のなかで、「この人(元谷代表)の歴史観ってのは、もう話になんないと思いますよ」「歴史修正主義だし、陰謀史観だし。何やってんだともう呆れるしかない」「こういったトンデモ歴史観を、妄想を垂れ流して対抗するんではなくて、やはり地道な外交努力だったりとか文化交流だったりとか、そういったことによって信頼関係を築き上げていくことだけが唯一の解決法」と、至極まっとうな指摘をしたのである。
 ところが、そんな宇野氏が、このアパ批判発言が発端となり、リニューアルを名目に9月いっぱいで『スッキリ!!』をクビにされてしまったのだ。
 その内幕を宇野が暴露したところによれば、宇野のアパ批判放送の後、日本テレビに右翼団体の街宣車が来て大問題になり、「その結果、日本テレビの小林景一プロデューサーは、ぼくに対して『右翼批判はおこなわないように』という要求をおこないました」という。宇野氏の歴史修正主義への批判は国際社会ではごく常識的なもので、批判されるようなものではまったくない。にもかかわらず「ただ面倒を起こしてほしくないからこいつを黙らせよう」(宇野氏)という日本テレビの言論封殺姿勢は、歴史修正主義に加担しているのと同じだ。恥を知れと言いたい。

●高須クリニック院長のナチ礼賛発言が国際問題になるも、訴訟ちらつかせて弾圧

 医師であり大病院経営者である高須クリニックの高須克弥院長の発言も国際問題になった。
 高須院長は〈南京もアウシュビッツも捏造だと思う〉〈ヒトラーは私心のない 本物の愛国者だ〉〈ドイツのキール大学で僕にナチスの偉大さを教えて下さった黒木名誉教授にお会いした。励まして下さった!嬉しい なう〉などといったナチ肯定のツイートを繰り返していた。
 8月、これらのツイートを問題視したエストニア共和国在住の男性や、差別問題に取り組んでいる有田芳生参院議員が批判。国際社会も黙って見ているわけがなく、ユダヤ系人権団体が高須院長の発言を問題視し、アメリカの美容外科学会に高須院長を会員から追放するよう要請、イスラエルのマスコミも大々的に報じた。
 だが、高須院長は、ナチ礼賛発言を指摘した男性と有田氏に対して訴訟をチラつかせて恫喝。有田氏については〈提訴するよう、指示しました。なう〉などとツイートし、実際に提訴する構えまで見せたのである。
 批判者を恫喝する一方で高須院長は、〈僕の学んだドイツ医学の素晴らしさを伝えてます。ナチスのイデオロギーは好きではありません。〉〈ナチスの庇護を受けた優秀な科学者は尊敬に価する。しかし人種差別のナチズムは僕の八紘一宇のイデオロギーの対極である。〉などとツイート。ナチスのイデオロギー肯定発言をごまかしつつ、ナチス下のドイツ医学や科学への評価を明言したのだ。
 しかしナチス下のドイツ医学の業績じたい、非人道的な人体実験などによってもたらされた部分が大きく、その業績だけをナチスのイデオロギーや罪と切り離して評価できるものではない。それを医師である高須院長が「素晴らしい」「尊敬に値する」などと称賛することは、重大な問題だ。
 さらに問題なのは、こうした高須院長のナチ礼賛発言をめぐる騒動を、テレビはやはりネグってしまったことだ。高須クリニックが大量のCMを出稿するスポンサーであること、そして提訴をちらつかせた恫喝行為が影響を与えているのは想像に難くない。またしても、メディアの弱腰が歴史修正の蔓延に加担した格好だ。

●アトランタ総領事が「慰安婦は売春婦だった」と発言

 6月には、米アトランタ日本総領事・篠塚隆氏が、「慰安婦は売春婦だった」という趣旨の発言をして、国際的に大問題となった。発端は、米ジョージア州の地方紙のインタビュー。同州ブルックヘブン市内の公園での設置を同市議会が決定したことに関して〈篠塚総領事は慰安婦の女性らは金で雇われた売春婦だったと言った〉(23日付電子版)などと地の文で伝えた。
 この「金で雇われた売春婦だった」という発言は、国際的に大きな問題となった。しかし、日本国内メディアは対照的に沈黙。ほぼ唯一、東京新聞の名物特報欄「こちら特報部」が問題の経緯と事実を詳細に伝える報道をした。記事によれば、実際に録音テープのなかでは、篠塚氏は英語でこのように発言していた。
「歴史的事実として、女性は性奴隷ではなく、強制されていない。アジアの文化として、いくつかの国々で、家族を養うためにこの仕事を選ぶ女の子がいる」
「ブルックヘブン市での慰安婦像は多くの論争を巻き起こす政治的なツール。日本に対する憎悪と憤りの象徴でもある」(「こちら特報部」訳)
 一目瞭然、批判されて当然の発言である。しかし、安倍政権は少女像設置に対して一時引き上げの対応を批判したとされる釜山総領事は更迭したにもかかわらず、篠塚総領事にはなんのお咎めもなしだった。

●灘中学など全国私学への教科書採択に対する右派の組織的圧力が発覚

 夏頃には、中学・高校での歴史教科書をめぐる、歴史修正主義者からの圧力問題が話題を呼んだ。発端は、受験最難関クラスである私立灘中学校・灘高等学校の校長が2016年に発表した手記。灘校長の手記には、「学び舎」という出版社がつくる歴史教科書の採択をめぐり、右派勢力が学校のOBを名乗るなどして「反日極左の教科書」「採択を即刻中止にすることを望みます」などという“抗議ハガキ”が大量に送りつけるという、組織的な“圧力”があったことが明かされていた。灘校長によれば自民党の県議や国会議員からも「なぜあの教科書を採用したのか」と詰問を受けたという。
 この圧力問題は、灘中学だけでなく、全国の有名私学で行われていた。この問題を調査報道したNHKの『クローズアップ現代+』(9月6日放送)では、学校へのアンケートの結果が紹介され、「多様な思考力を育む教育を否定する動きに恐ろしさと悲しさを感じた」(東京の私立)、「全体像が分からないことに得体のしれぬものを感じる。学校現場が萎縮しないことを切に願う」(埼玉の私立)など、自由な教育の抑制を懸念する声が報じられた。
 本サイトでも追及したように、こうした運動の背景には、日本最大の右派組織「日本会議」や、首相のブレーンのひとりである八木秀次氏が率いる「日本教育再生機構」の影が見え隠れする。実際、『クロ現』では抗議ハガキの送り主のひとりとして自民党所属の広島県議にインタビューしているのだが、この県議は、日本会議広島が主催する講演会や日本会議と深く関わる地方議員だ。
 安倍首相と日本会議や日本教育再生機構の緊密な関係についてはいまさら言うまでもないが、歴史修正の運動は教育現場の侵食から始まるのである。今後も注視していかねばならない。

●ケント・ギルバートのヘイト本が大ヒット、講談社の担当編集者は

 歴史修正と差別主義は表裏一体の関係にある。数年前から問題になってきた“歴史修正・ヘイト本”ブームがようやく下火になりつつあるかに思えたが、今年は安倍応援団の元外国人タレント、ケント・ギルバート氏によるヘイト本『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)が約50万部の大ヒットを記録した。
 一見、他国の歴史的文化を論評するように見せかけ、実のところ事実を捏造しながら罵倒し、「それに比べて日本はなんて素晴らしいんだ」と持ち上げることで、国籍・民族差別を煽動する。あまりにお粗末だ。そもそも、タイトルに「儒教」と出てくるが、同書をいくら読んでもの儒教思想に対する深い分析などまったく出てこず、引用文献も一次資料はもちろん学術書も皆無で、あるのはネトウヨ系のタネ本ばかり。
 しかしケント氏は、なんの根拠も示さないまま「儒教に呪われた中韓の人間」「儒教の陰謀」などと言いっぱなしにして、〈「禽獣以下」の社会道徳や公共心しか持たないほどに落ちぶれた〉〈自尊心を保つためには、平気で嘘をつくのが韓国人です〉〈その病的なレベルについていえば、韓国人が世界一だと思います〉などというヘイトスピーチを連ねるのである。
 こんな悪質な差別本を大手の講談社が出版したこと自体クラクラしてくるが、しかも恐ろしいのは、同書の担当編集者が業界紙のインタビューで、「欧米人の書いた反中国・反韓国本だからこそ、特定の人たちだけでなく、多くの日本人に受け入れられたんでしょうね」などと、一切悪びれることなく、“読者ニーズがあったから売れたのだ”と開き直っていたことだ。 本来、出版文化の担い手であるはずの大手編集者が、“売れるから”という理由で歴史修正やヘイト本に手を出す。末期状態としか言いようがない。

●百田センセイのトンデモ歴史修正主義は健在

 ケント氏の『儒教に支配された〜』ほどではないが、ネトウヨ作家こと百田尚樹センセイの『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)もベストセラーになった。
 同書は、朝鮮半島の紀行文から恣意的に引用したうえで、“未分化の朝鮮半島に文化を持ち込んでやったのは大日本帝国だ”などの虚説をもって歴史の歪曲を行うヘイト本。百田氏は〈(朝鮮)総督府は実質的に文字を持たなかった民衆に、ハングルを教育し、普及させました。つまり日本は朝鮮の国語を「奪う」ことはせず、むしろ「与えた」のです〉などと上から目線で主張しているが、これは完全なデマである。
 実際、朝鮮近現代教育・文化史や言語社会論を専門とする三ツ井崇・東京大学大学院総合文化研究科准教授も「総督府が初めてハングルを普及させた」というのは〈明らかな事実誤認〉と断じているように、ハングル小説の嚆矢と言われる許筠の『洪吉童伝』は17世紀初頭に成立しており、近代学校における朝鮮語教育も19世紀の終わり頃には始まっている(『朝鮮植民地支配と言語』明石書店)。
 余談だが、百田氏といえば今年、「中国を偉大な国と勘違いさせる「漢文」の授業は廃止せよ」なる文を「SAPIO」(小学館)5月号に寄稿した。言うまでもなく、漢文なくしては日本の文字文化もありえなかったわけで、この男の無知蒙昧ぶりにはほとほと嫌気がさすが、こうして他国の文化を罵って差別を煽動するのも歴史修正主義のバリエーションなのである。

●小池都知事が式典への追悼文を取りやめ!増長する朝鮮人虐殺否定論

 関東大震災時の混乱に乗じて「朝鮮人が井戸に毒をもっている」などのデマが飛び出し、日本人自警団が多くの朝鮮人や中国人を殺害した、いわゆる「朝鮮人虐殺」。これは、当時を生きた著名人を含む多くの証言が残っている歴史的事実だが、それを否定しようという動きが加速している。
 象徴的だったのは、9月1日の朝鮮人犠牲者の追悼式典をめぐって、都知事が例年送っていた追悼文の送付を小池氏が拒否したことだ。小池都知事は会見でも、「様々な被害で亡くなられた」「様々な歴史的認識がある」などと述べ、朝鮮人虐殺という歴史事実への言及を避けた。
 波紋を広げるなか、本サイトでは式典当日、“虐殺否定論”に立つ在特会系の極右団体が催した集会を取材したが、そこには現役の区議会議員までが参加していた。集会後、区議に直撃すると「朝鮮人暴動は流言飛語ではなく事実」「意図的に殺したとかじゃない」との主張。こうした歴史事実を否定する動きは、都政トップの小池都知事の言動と同調して、これからどんどん増長していくだろう。
 事実、昨年の熊本大地震では「熊本の井戸に朝鮮人が毒を入れている」という悪質なヘイトデマツイートが出回った。歴史修正主義は決して学問上の対立ではなく、ときに人を殺すヘイトクライムと地続きなのだ。

●安倍首相の側近が歴史修正発言を連発、杉田水脈を安倍がスカウト

 安倍首相の側近議員からも、歴史修正主義発言が次々飛び出した。たとえば、安倍首相の寵愛を受ける稲田朋美元防衛相。最近も懲りずに「外務省 目覚めよ!南京事件はなかった」なるタイトルの講演会に登壇し、「日本の名誉を守るとは、いわれなき非難や事実と違うことに断固として反論することだ」などと語った。
 8月には、麻生太郎副総理兼財務相が、麻生派の研修会で「(政治家は)結果が大事なんですよ。いくら動機が正しくても何百万人殺しちゃったヒトラーは、やっぱりいくら動機が正しくてもダメなんですよ、それじゃあ」と述べた。何の弁解の余地もない、ヒトラーを肯定する大問題発言だが、いまでも麻生はのうのうと副総理の座に収まっている。
 もうひとつ、唖然とさせられたのは、先の衆院選で自民党があの杉田水脈氏を公認候補に擁立、当選させたことだ。杉田氏は、男尊女卑や外国人・マイノリティ差別、さらには反日工作員なる妄想や「左翼」への並々ならぬ憎悪をごっちゃ混ぜにしたトンデモ極右で、ヘイト系の関連団体や人物と一緒になって慰安婦の否定などがなりたててきた人物。昨年出した作家・河添恵子氏との共著『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)では、「慰安婦像を何個建ててもそこが爆破されるとなったら、もうそれ以上、建てようとは思わない。建つたびに、一つひとつ爆破すればいい」と爆破テロまで煽動していた。
 驚くのは、実に杉田氏を自民党にスカウトしたのが、他ならぬ安倍首相だったことだ。櫻井よしこ氏が出馬の裏側を明かしたところによれば、安倍首相は「杉田さんは素晴らしい!」とほめたたえ、最側近の萩生田光一氏が熱心に誘ったのだという。第二次政権では表だった歴史修正発言を控えるようになった安倍首相だが、その本質が極右のリビジョニストそのものであることを忘れてはいけない。

●フランスのル・モンド紙が、安倍首相を歴史修正主義者と喝破

 歴史修正主義と戦う言論は徹底して潰されてしまうのが安倍政権下の日本。
 だが、そうして国内は封殺できても、国際社会までは騙すことはできない。たとえばフランスのル・モンド紙は、選挙直後の10月20日の電子版に「安倍晋三、受け継がれし歴史修正主義」と題した特集記事を掲載、こう喝破した。
〈安倍氏は歴史修正主義者(révisionniste)である。たとえば、彼の礼賛する憲法改正は、日本の帝国主義の復興を目指し、1930年代初頭から第二次世界大戦終戦までの日本軍が犯した残虐行為の数々を過小評価ないしは否定しようとする広大な企てのなかの一つだ〉
 ル・モンドが言うように、安倍首相はまごうことなき歴史修正主義者であり、その欲望は、確実に日本を戦争へと近づけていく。2018年は、改憲への動きと連動して、歴史修正主義もさらなる加速を見せるだろう。
 歴史修正主義は基本的に内向きの性質を持つが、決して過去のみを標的にしているわけではない。ましてや、単なる学問上の対立ではありえない。実態は、過去を歪曲することで現在を都合よく解釈し直そうとする企み、そのいく末は、安部政権が喧伝する“輝いていた在りし日の日本”ではなく、正真正銘の“戦争ができる国”なのである。

●明治礼賛の国策映画、明治150年事業…安倍政権による明治日本=大日本帝国礼賛ムーブメント

 安倍首相が日本軍の戦争犯罪を否定する一方で推し進めるのが、明治時代の礼賛だ。昨年10月、安倍政権は2018年に明治維新150年の記念事業を実施することを発表。今年7月の中間とりまとめでは、「明治150年」関連施策として実に100を超える事業がラインナップされた。スポーツ庁からの求めで、来年秋に開催される福井国体に「明治150年」という冠称をつけようという動きが出ているのも、その明治礼賛=大日本帝国の美化政策の一環だろう。
 ほかにも150年記念事業として、明治期の国づくりなどを題材とした映画やテレビ番組の制作を政府が支援することを検討していると報じられた。完全に、ナチスを彷彿とさせる“国策プロパガンダ映画”事業である。大日本帝国の植民地主義を正当化、アピールしようという意図があるのは明らかだ。
 実際、安倍政権は、この明治日本=大日本帝国への憧憬を隠さず、ことあるごとに、明治日本=大日本帝国の正当化を喧伝してきた。
 たとえば、2015年7月「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録へのゴリ押しに安倍政権の強い意向があったことが明らかになっている。また安倍首相は戦後70年談話のなかでも、明治日本の植民地主義を正当化し日露戦争を良い戦争だったと語った。さらに安倍政権や極右団体・日本会議による「明治の日」復活の動きもある。
 さらに安倍首相は来年の年頭所感でも、明治150年を打ち出しているという話もある。2018年、安倍政権による明治礼賛=大日本帝国美化という歴史修正主義ムーブメントに、これまで以上に要注意だ。

最終更新:2017.12.30 08:43

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